展示テーマは「モータースポーツへの挑戦の歴史」
2024年4月12日~14日に幕張メッセで行われた「オートモビルカウンシル2024」。三菱自動車のブースでは「モータースポーツへの挑戦の歴史」をテーマとするとともに、WRCやパリ・ダカール・ラリーで日本人初の優勝を果たした偉大なラリードライバーであり、2024年3月18日に逝去した篠塚建次郎氏を追悼する展示となっていました。三菱のモータースポーツの歩みを、数々の名車とともに振り返ります。
モータースポーツで多数の記録を残してきた
「パジェロ」や「RVR」、そして「シャリオ」や「デリカ」などで1980年代から「RV王国」として名を馳せてきた三菱自動車ですが、じつはモータースポーツを手がけたキャリアで言うなら国内メーカーでもトップレベルの長い歴史を持っています。
まだ鈴鹿サーキットが完成する前、1962年にはマカオGPに参戦しツーリングカーレース、750cc以下のクラスで表彰台を独占。1970年代に入ると国内外のサーキットレースに加え、海外ラリーにも本格参戦するようになり、1973年から始まった世界ラリー選手権(WRC)にもスポット参戦を始めて、1974年にはサファリ・ラリーで優勝するなど好成績を残してきました。
オイルショックで中断がありましたが1981年には「ランサー ターボ」でWRCに復帰し、1990年代には4WDを備えた「ランサー エボリューション」でトミ・マキネンがWRCのドライバータイトル4連覇を果たしています。
また1980年代からパジェロで参戦を続けてきたダカール・ラリーでは12回もの総合優勝を獲得。今回のオートモビルカウンシル2024では、そんな三菱の「モータースポーツへの挑戦の歴史」が展示テーマとなりロードモデルのランサー エボリューションからラリーマシンまで6台が登場していました。
ダカール・ラリーなどのラリーレイド/クロスカントリー・ラリー系では、そもそもの始まりとなった初代パジェロのロードモデルから増岡 浩選手のドライブで優勝を飾った2002年のダカール・ラリー参戦車両、そしてアジア・クロスカントリー・ラリー(ACCR)に参戦を開始した「トライトン」のロードモデルの3台が登場。
もともとパジェロは、三菱がジープの生産で得たノウハウを生かして登場させた本格的な4輪駆動車で、最初は貨物車登録のメタルトップ・バンとキャンバストップがラインアップされ、やがて乗用車登録のメタルトップ・ワゴンやロングボディなどが追加されラインアップが充実していきました。
パリ・ダカール・ラリー(後にはスタート地点やゴール地点も変更されダカール・ラリーと呼ばれるようになりました)にはメタルトップ・ワゴンで参戦を始め、最終的にはパジェロ エボリューションと呼ばれるロードモデルとは全く別物の純競技車両となります。今回、優勝した車両が展示されていた2002年のダカール・ラリーは、前年までの市販車改造クラス(T2)とプロトタイプクラス(T3)を併合したスーパープロダクション・クラスと、前年までの市販車無改造クラス(T1)から移行したプロダクション・クラスの2本立てとなり、T2クラスで参戦していた三菱はパジェロをスーパープロダクション・クラスに適合させるべく大幅に進化させていました。
またタイで製造されてきたピックアップトラックのトライトンは、2022年に2代目モデルが初めてACCRに参戦し見事優勝を飾っていますが、2023年にフルモデルチェンジで現行の3代目に移行して再度のチャレンジが期待されています。ただし今回展示されていたのはオプションパーツを装着したロードモデルです。
会場には懐かしいマシンも展示
一方、WRC系では1992年のアイボリーコースト・ラリーで、篠塚建次郎選手のドライブで総合優勝を飾った「ギャランVR-4」と、2001年のモンテカルロ・ラリーでトミ・マキネン選手のドライブで総合優勝を飾った「ランサー エボリューションVI」が展示されていました。
VR-4は、当時のWRCで「必須アイテム」とされていたツインカムエンジンをターボで武装したハイパワーとフルタイムの4輪駆動を標準装備していて、WRCのトップカテゴリーが、それまでのグループBから、よりベースモデルのポテンシャルが重視されるグループAに移行したことで、WRCへの復帰に足掛かりをつけることになりました。
そしてこの基本コンポーネントは後のランサー エボリューションへと継承され、進化を続けることになりました。その結果1996年にはランサー エボリューションIIIでマキネン選手がWRCにおいてシーズン5勝を挙げてドライバーズチャンピオンに輝きますが、さらに年々進化を遂げるランサー エボリューションでマキネン選手は1999年までWRC4連覇を果たすとともに、1998年には三菱にコンストラクターズチャンピオンの栄光ももたらしています。
2000年代に入るとWRCの主流は、グループAよりも改造範囲の大きいWRカーへと移行していきランサー エボリューション(の市販モデルをベースにしたグループA車両)の参戦は終焉を迎えることになりますが、その一方で市販モデルのランサー エボリューションはなおも進化を遂げていきました。そしてその集大成として2015年には「ランサー エボリューション ファイナルエディション」が登場することになりました。
「最後のランエボ」は1000万円オーバーで販売!
今回、オートモビルカウンシル2024の三菱ブースには、深紅のロードモデル、2015年に1000台限定で販売された特別仕様車、ランサー エボリューション ファイナルエディションが並べられていました。こちらは「ブース内展示販売車両」とされ1100万円のプライスタグも付けられていましたが、じつは初日には1025万円のプライスタグが付けられた個体が展示されていました。それが当日の午前中には成約され、最終日にはまた別の個体が展示されていたのです。
当時の新車価格=429万8400円(消費税込)から考えれば2倍以上の驚くべき価格なのですが、同車の人気の高さが感じられるエピソードでした。なお三菱では収益の一部は2024年1月に発生した能登半島地震の義援金に充てられるとしています。
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そんな三菱のモータースポーツへの挑戦の歴史を支えてきたドライバーのひとりである篠塚建次郎さんは、2024年3月18日に逝去されましたが、今回の三菱自動車ブースでは、彼がドライブして1992年のアイボリーコースト・ラリーで総合優勝を飾ったギャランVR-4を展示するとともに、「篠塚建次郎さん ありがとう」と題して、彼が三菱自動車に入社して以降(同社を退職後、プライベートとして挑んだ時期も含めて)の、パリ・ダカール・ラリーやラリー(WRC/APRC等)の戦績を示す年表を掲示し、追悼の意を表していました。