1993年式サーブは子どもだった90年代を旅するタイムマシン
近年、若者世代にクラシックカーやヤングタイマーなど趣味性の高いクルマを楽しむオーナーが増えています。現在33歳の今野智文さんの愛車は1993年式のスウェーデン車、サーブ「900ターボS」。自分流のモディファイを加えながらファッションもクルマの雰囲気にマッチさせています。なぜ、日本では超マイナーなサーブを選んだのでしょうか。
サーブ9-3 SEから900ターボSへ乗り換え
初開催のイベント「YOKOHAMA CAR SESSION~若者たちのカーライフ~」で横浜赤レンガ倉庫に並んだ、若者たちの愛車105台を通り雨が濡らす。ふたたび青空が戻り、1993年式のサーブ「900ターボS」を丁寧に拭き上げていたのは今野智文さん。スタイリッシュなファッションも愛車とマッチしている。
物心ついた時からクルマが大好き、とくに1980年代~1990年代のヨーロッパ車にずっと憧れを抱いていたという今野さんの最初の愛車はフォルクスワーゲンの「トゥアレグ」。次に乗り換えを考えたとき、大学時代にスウェーデンに1年間留学していた経験もあることから、スウェーデン車にも一度乗ってみようとサーブを候補に入れたという。
「専門店でない店舗に激安のサーブ9-3 SEが転がっていて、それを買ってしまったのが泥沼の始まりでした」
さっそくサーブのオーナーズクラブへと入会し、サーブのイベントへ初参加した今野さん。
「そこで独特で異様な雰囲気を放っていた漆黒の900ターボを見た瞬間に完全に心を奪われてしまいました」
そのオーナーと専門店に協力してもらい、大阪の個人オーナーから個人売買で譲ってもらったのが、彼の現在の愛車なのだそうだ。
「見せてもらった時に試乗もさせてもらったのですが、実際に運転してみると、見切りも非常に良くて直進安定性も高く、初めての左ハンドル車に、初めての阪神高速という緊張もすぐになくなりました」
90年代らしさを醸し出す3色ストライプは半年前に貼ったばかり
6年前、27歳にしてサーブ900ターボSのオーナーとなった今野さんは、さらに自分の理想とするイメージを目指してモディファイを加えていった。
「ずっと憧れていたナルディのウッドステアリングを900のために海外から購入したのですが、クルマより1週間先に届いたのでベッドに座ってイメトレしました」
と懐かしい思い出を振り返る。
他にもヘッドライトと同じメーカーのHella製の補助灯「Comet 450」をチョイスしてフロントフェイスを引き締めているが、左右のレンズカットを左はフォグ、右はドライビングと変えていて、悪天候時にも路面の変化に気づきやすくしている。また、ドアの内張りやリアのトノカバーは、サーブと同じスウェーデン企業であるIKEAで購入した布でお洒落に張り替えている。
また、このサーブの魅力を際立たせている3色のボディデカールも、海外から専用品を購入し自身で半年前に貼ったものだという。
「派手なアクセントになりましたが、考えてみると幼少期に持っていたサーブ9000のミニカーが同じストライプデザインをまとっていました。無意識のうちに自分の中ではサーブはこの色だと思っていたのかもしれないですね」
マシントラブルも古いクルマとのお付き合いのうち
好みのスタイルへと変化していっている今野さんのサーブ900だが、あちこち巡りながら数日かけて行った北海道旅行も思い出深いそうだ。
「自分がサーブで知床にいるという事実が不思議でした。最後まで実感が湧かない旅でしたね。2日目に燃料計が壊れて残量が分からなくなりましたが、もし壊れたら壊れてから考えればいいという旅でしたので軽症ですね。その旅行とは別ですが、燃料ポンプの故障で2度ドナドナになったのも思い出になりますし、古いクルマとの付き合いかなと気楽に乗っています」
そんな今野さんにとって、車齢30年を超えたサーブとの暮らしとはどんなものなのだろうか。
「子どものころ、父親が運転するクルマでラジオから流れてきた曲を流すと、いつでもその時の自分に戻ることができます。クルマと同じ年代の音楽を流してドライブするだけで、当時はこんな感じで街を流していたんだろうなと思いを馳せることができます。その意味では、物理的な何かを見せるファッションとして乗るというより、時空を旅する乗り物としての存在がクルマであり、このサーブかもしれないですね」
そんな今野さんのサーブライフは、YouTubeの「SAAB 900 Japan」というチャンネルで発信中。ご興味ある方は、ぜひご視聴いただきたい。