ドイツの顔といえるベージュのタクシー
ドイツ在住で、モータースポーツ取材のために欧州を駆け回っている池ノ内みどりさん。遠方の取材は移動に愛車を使いますが、近場の移動でごくまれにタクシーを利用することがあるそう。今回は、ドイツのタクシー事情をリポート。メルセデス・ベンツ「Eクラス」が主流ですが、今後はメインの車種が変わっていくかもしれません。その理由や、ドイツの変わり種タクシーなど紹介します。
現在はメルセデス・ベンツEクラスが主流だが……
4月の終わりに雪が舞うなど季節外れの寒い日々だったのが一転、一気に夏日になったミュンヘンです。
ドイツのタクシーといえばメルセデス・ベンツ「Eクラス」が定番です。いつかドイツに行ったらベンツタクシーに乗ってみたい、と思っている方も多いのではないでしょうか? ですが、その様子が随分と変わってきました。というのも、2023年にEクラスがモデルチェンジをしてからは、メルセデス・ベンツがタクシー車両の供給をしないと発表したのです。
普段はママチャリで行動している私は、滅多にタクシーに乗る機会はありませんが、取材先でタクシーに乗ろうと思った際、先に他社モデルのタクシーが来たときにはEクラスに乗りたいため後ろの方に順番を譲ったことがあります。同じ料金を支払うなら、よりコンフォータブルな方に乗りたいと思う貧乏性です。セダンもステーションワゴンもEクラスはまだまだ多く走ってはいますが、新たに新車を購入する場合は在庫のみとなってしまっていることから、今後は徐々に減っていくのかと思うと、とても残念です。
ところで、ドイツでは一部の州以外はタクシーの色は法律で決められており、私の住むミュンヘン市も定番のベージュカラーです。決してステキとは言えない独特な渋めな感じの色ですよね。
ミュンヘン市もBEVのタクシーを普及させたい
現在、ミュンヘン市では約3100台のタクシーが登録されているのですが、その内、BEVはまだ50台と多くありません。ミュンヘン市では2025年度末までには400台のBEVタクシーの稼働を目標とし、3万ユーロ(約510万円)までのタクシー車両購入費用に関して最高1万ユーロ(約170万円)を補助金として用意し、BEVタクシーの普及を促したいようです。
ちなみに北ドイツのハンブルグ市では、タクシーの登録台数はミュンヘンとさほど差はないにもかかわらず、すでに650台ものBEVタクシーが稼働しているそうです。じつにミュンヘン市の13倍もの数でビックリしました。
深夜や早朝以外、ミュンヘン都市部の道路はかなり混みあっていて超ノロノロ運転になります。「Mittlerer Ring」というミュンヘン市内をぐるりと周る首都高速環状線のような道路があり、場所によっては通常40~60km/h規制なのですが、私の自宅近所の入り口では、朝夕は10~20km/hが精いっぱいなことも多いのです。ほかにも市内では30km/h規制の道路も増えましたので、BEVやハイブリッドカーにはいい環境なのかもしれませんね。急速充電設備が整っていればBEVのタクシーが増えてもまったく問題ないように思います。
じつは日本車のタクシーも活躍している
わが街ミュンヘンではトヨタ「プリウス プラス(日本名:プリウスα)」というハイブリッドのタクシーが大増殖しているのですが、ほかにも「カローラ」や「RAV4」のタクシーも見かける機会が増えました。日本では見ない日はないのでは? というプリウスですが、ドイツではほぼ見ません。むしろ、タクシー以外はほとんど走っていないという現状です。
今後メルセデス・ベンツのEクラスが減少していくと、さらにさまざまな車種が増える可能性はありますね。テスラがドイツで販売されたのが2014年なのですが、2014年後半、2015年位からチラホラとテスラのタクシーも見かけますし、ここ数年はジャガー「I-PACE」や「XF スポーツブレイク」のEVタクシーもよく見かけます。
ところで、タクシーのルーフに設置している営業灯? を外すと自家用車としても利用可能なので、個人タクシーの方は営業時以外には家族のアシとして使用している方もいるようです。
日本でも個人タクシーの場合、個性的な車種で営業されている方もいますが、ドイツでもマニアックなタクシーが走っており、それを見つけるのが楽しいです。ミュンヘン市のタクシーの基本料金(初乗り料金)は5.50ユーロ(約935円)、1kmあたりの料金は2.30ユーロ(約390円)。なかなかお高いので、今後もよっぽどのことがない限り、私はなかなか乗る機会がなさそうです。