官能的でパワフルなエンジンを背負って走る
そんな「Z06」を駆って往復1200km以上のテストドライブに出かけた。東京で車両を借りうけ、神戸まで走ってスーパーカー仲間たちと合流し、秋の大和路を堪能して東京まで戻るというドライブだった。
改めて感心したのがC8の体幹の素晴らしさだ。とくに実感したのが秋の奈良にしては珍しい大雪に山道で出くわした時だった。昼間でみぞれまじりだったため路面に雪が積もるほどではなかったけれども、シャーベット状に溜まっている箇所もあり、ハイパワーMRを走らせるにはとても面倒な状況だった。にもかかわらず、Z06は実にコントローラブルで、不安に襲われるということがない。前をいくフェラーリ「F40」の心配ばかりしていたほど。ボディ骨格とシャシーの関係性に加えて、重量バランスの良さも光る。とにかく車体サイズを感じさせない、まるでロータスを扱っているかのようだった。
C8の魅力はもちろんそのまま受け継ぐ。エンジンに余裕があるぶん、グランドツーリングカーとしてはさらに上出来だ。ドライバーの右足がウズウズしがちであることを除いて、じつに安楽なGTとして使うことができた。神戸までの深夜一気走りも難なくこなす。
そして、フラットプレーンの自然吸気5.5L DOHCエンジンを解放したときのドキドキといったら! 扱いやすさはそのままに、官能的でパワフルなエンジンを背負って走る感覚は、まさに現代のスーパーカー。イタリア製や英国製にまったく引けを取らない。アメリカの本気をついにスポーツカーシーンでも見せつけられたというわけだ。
ある意味、70年前に目指した理想にもっとも近づいた。この時代に大排気量マルチシリンダー自然吸気を積むという決断も、夢の実現であったと考えれば納得できる。そしてGMシボレーはすでに先を見据えていた。「E-RAY」をはじめ、今後、驚愕スペックを誇る電動コルベットが誕生することは間違いない。