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SUPER GT第2戦富士で1-2フィニッシュした日産チームの立役者! 新総監督は世界初のエンジンを生み出したエンジニアです【Key’s note】

日産が優勝したシーン

優勝してチームは喜びを爆発させた

新生ニスモチームは第2戦で強さを見せつけた!

レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之氏が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「モータースポーツのチーム監督」についてです。スーパーGTに参戦している日産のGT500クラス総監督に2024年シーズンから就任した木賀新一さん。日産自動車で長年エンジン開発をはじめとしたパワートレイン関係の仕事に従事されてきた方です。就任2戦目で完全勝利を成し遂げることができた、その理由とは?

監督はチームプレーをするうえでとても大事な存在

レースの主役はドライバーなのかマシンなのか。勝利するための要因で、道具が占める比率が高いモータースポーツにおいて、たびたび議論される課題ですね。

サーキットを疾走するマシンを操るのはドライバーですから、高度なドライビングスキルが求められます。ですが、巧みなドライビング技術があっても、マシンの性能が低ければ速くは走れません。神がかり的な人間の能力を持ってしても、物理的な限界を超えられないからです。

そんなモースーポーツの世界にあって昨今、存在感を高めているのはストラテジストです。レース中で使用するタイヤの選択や、ピットインのタイミングなどを高度な頭脳とコンピュータを駆使して最適解を導き出す。チームの戦略が勝敗に強い影響力を持つ時代になったように感じます。モータースポーツは長く個人スポーツのように理解されていましたが、最近ではチームスポーツ度を高めているのです。

では、チーム監督はどんな影響力を持つのでしょうか。一般的にはチームのプロデュースを担います。ドライバーやメカニック、あるいはチーム戦略を担うストラテジストや、チームを裏方として支えるマネージャーなどの布陣を揃え、適材適所に配置するのが仕事のようです。

2024年5月4日、ゴールデンウィークに開催されたスーパーGTで、そんな監督の存在をはっきり意識させられました。というのも、常勝集団であるニスモの総監督が変更になり、走らせる2台のGT500「フェアレディZ」が、1位と2位に輝いたのです。ライバルの追従を許さない完璧な勝利でした。

世界初の可変圧縮比エンジンを生み出したエンジニアでもある

新たに総監督に就任したのは、長く日産のエンジンを開発してきた技術畑の木賀新一氏です。最近では、「エクストレイル」に搭載された世界初の可変圧縮比VCターボエンジンの開発責任者として脚光を浴びました。そんな木賀氏が、世界に誇るエンジンの開発を終え、ニスモGT500の総監督に転身したのです。公式な肩書きは、日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社の専務執行役員です。

エンジン開発の責任者とレーシングチームの総監督は、ともすれば畑違いのようにも感じますが、開発責任者は自ら図面を引くだけではなく、開発に携わった数千人にもおよぶメンバーの取りまとめ役でもあります。その意味では、レーシングチームのスタッフを適材適所に配置し、勝利を目指すことと大きな違いはありません。

そもそも木賀氏の前任である松村基宏氏も、日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社の取締役であり工学博士でもあります。技術的ノウハウに長けているだけでなく統率力があります。ニスモは、技術で実績を残した人材を総監督に配置したのです。

さらにさかのぼれば、日産GTチームの総監督を長く務めてこられた柿元邦彦氏は、元東海大学工学部教授でした。伝統は受け継がれているのですね。

ちなみに木賀氏は日産名車再生クラブ代表として、かつて活躍した日産のモータースポーツマシンの再生にも尽力してきました。最近は1980年代にWRCで活躍した「パルサーGTI-R」の再生を手がけています。VCターボエンジンはモータースポーツ用パワーユニットとしては無縁のようですが、そもそもモータースポーツに対する洞察力があったということなのでしょう。

ともあれ、木賀氏は総監督に就任してすぐに1位-2位の完全勝利を成し遂げたのです。モータースポーツに欠かせない「何かを持っている」のでしょうね。

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