車両開発にドライビングシミュレーターを導入
ベントレーは、クルー工場にドライビングシミュレーターを導入すると発表しました。このシミュレーターは主にこれまで実走行で検証されてきた快適性のテスト分野で活躍します。また、シミュレーターに替わることで大幅な環境負荷低減が見込めるとのこと。このシミュレーターの効果を見てみましょう。
ラグジュアリーな体験を定義するため
ベントレーはカーボンニュートラルなクルー工場に新たにVI-grade社製のコンパクトシュミレーターを導入すると発表した。このシミュレーターは車両運動性能の目標設定、シャシー制御、ADASシステム開発などの分野で、ヨーロッパを中心に多く使用されているものであるが、ベントレーが今後発売を予定しているバッテリー電気自動車の開発に大きな役割を果たすことを期待している。
ベントレーは主に、甌穴(おうけつ)や段差などさまざまにシミュレートされた路面上での乗り心地、キャビンの音響、振動のほか、シート開発のサポートなどの評価にこのシミュレーターを使用するが、実際のプロトタイプ車で実験するはるか前の段階で、車両レスポンスの情報を得ることができことが大きなメリットである。
また、シミュレーターの導入により、車両プロトタイプ1台につき約85tのCO2と、従来の路上テストにかかる最大350日を節約することができ、大きく環境負荷と時間を削減できることも導入の理由である。
ベントレーモーターズのエンジニアリング担当取締役であるマティアス・ラーベ博士はこうコメントしている。
「ダイナミックドライビングシミュレーターは、その技術的な能力だけでなく、物理的なプロトタイプや大規模な物理的テストの必要性を低減し、サステイナビリティの面でも大きなメリットをもたらします。お客様が期待されるように、このシステムはベントレーのすべてのクルマに関連するラグジュアリーな体験を定義するうえでも重要な役割を果たします」
ベントレーが進める環境負荷低減を含んだ「ビヨンド100戦略」をまた一歩前進させるシステムとなるであろう。
AMWノミカタ
ベントレーは電動化に大きく舵を切った。2030年までにBEVの車を5種類導入すると発表している。BEVで問題となるのは走りの差別化であろう。ガソリンエンジンがもたらす音と振動がなくなった中で、そのブランドらしい走りの個性を表現するのは難しい。エンジニアリング担当取締役であるマティアス・ラーベ博士は「ラグジュアリーな体験を定義する」と語っている。
今回のシミュレーターの導入は、ベントレーの目指すラグジュアリーな走り、つまり人間が心地よいと感じる感覚をデジタルで数値化し、これからのモデルに横断的に反映してゆこうとしているのではないだろうか。そう考えると、少し味気ない気もするが、バーチャルでクルマを開発しつつも、しなやかでありつつ芯があるベントレーのあの乗り心地を継承してもらいたい。