やはりヨーロッパのマーケットでは厳しい?
アルムキスト セイバーのクロスレー用ボディキットは、FRP製シェルと取り付け金具のみが基本とのこと。そこでこの個体では、ドライバー用の小型ウィンドスクリーンに2つのバックミラー、1958年型シボレー「インパラ」から流用した4連テールライトなどが独自に取りつけられている。
また、前縁がポリッシュ仕上げとされたビレット加工のアルミ製カスタムグリルが装着されるうえに、ヘッドライト用の開口部を備えたスペアグリルも付属するということであった。
いっぽうホイールについては、前輪はオリジナルのクロスレーの4穴パターンを残すものの、後輪側はデフとリアアクスル+ハブを流用したフォードと同じ5穴。前後とも「ムーンアイズ」社製のムーンディスクカバーを装着し、13インチのダンロップレーシングタイヤを履かされている。くわえて、ドライバー背後のロールフープには過去の車検ステッカーが貼られ、ドライバーを保護する5点式ハーネスを装着。アルミ製のカスタムダッシュパネルには、シンプルなコンペティションスタイルのスイッチ類と最新のタコメーターが装備されている。
そしてシャシーとサスペンションは、アメリカでは有名なスペシャリストの協力のもと、前オーナーの手で作業が行われたと伝えられており、ダットサン「B210」(日本名は日産3代目「サニー」)用フロントディスクを含む、ブレーキコンポーネントもリフレッシュされている。
最近のレースはすべて前オーナーが走ったもので、「ラグナ・セカ」サーキットのフロントストレートでは、最高時速110マイル(約176km/h)を記録したと伝えられている。
近年のクラシックカーレース専門誌に掲載されたこの個体の写真にくわえて、アルムキスト・エンジニアリング社のオリジナル販売資料、当時の広告や注文書、古い写真のコピー、各種ワッペン、「Goodyear-Hawley」油圧ディスクブレーキのサービスマニュアル付録、2009年5月1日から2013年8月18日まで記入された「Historic Motorsports Association」のログブック、2012年と2013年の2冊の「Vintage Motorsports」カタログ、2007年の「Coronado Speed Fest」カタログのコピーなどとともに添付ドキュメントに含まれている。
車両は公道登録済みで、V5Cログブックも添付。英国在住の現オーナーの弁によれば、エンジンは力強く、クリーンで、クール。シリンダーの圧縮も均一で、オイル圧も高温時で良好とのことである。
いっぽうグラスファイバー製ボディワークは、年式の割に全体的に良好なオリジナルコンディションであると申告されているものの、塗装にはさまざまなクラックやそのほかの傷があるとのことで、コンディションはまずまずといったところだったようだ。
アメリカンテイスト満載のヨーロッパ風バルケッタ、とも形容されそうな魔改造車ゆえに、一般的な需要の有無が読めないと考えたのか、ボナムズ・オークション社では1万~2万英ポンドという、かなり控えめなエスティメート(推定落札価格)を設定。そして2024年4月14日に行われた競売では、1万2650英ポンド、日本円に換算すると約250万円で落札されることになった。
このハンマープライスは、近年のアメリカにて量産版クロスレー・ホットショットが取り引きされた際の相場価格と大差ないもの。やはり、この種の改造車に対するマーケットの評価は、多くの場合において辛口となるのであろう。