サイトアイコン AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

日産「フェアレディZ ニスモ」を長距離で試したら「サーキットで走らせたい」と初めて思った! 買えた人はラッキー、でもスタンダードでも十分

日産フェアレディZ ニスモ:2024年モデルで追加設定された、ニスモが仕立てた高性能モデル。シャシーやエンジンなどのチューニング、空力性能の向上などによりさらにGT性能を向上させている

みんなに愛される手頃なスポーツカー

新車のデリバリーが捗々しくない中で登場した注目の2024年モデル、日産「フェアレディZ ニスモ」を長距離試乗しました。「愛される手頃なスポーツカー」として注目度も抜群な、Zの“純正チューニングカー”の実力をお伝えします。

身近なスポーツカーの高性能バージョン

R35型「GT-R ニスモ」のみならずBCNR33型やBNR34型の「スカイラインGT-R ニスモ」コンプリートカーが異常なまでの高値で取引されている。ニスモがようやくAMGやBMW Mに並ぶ高性能ブランドとして、世界に認知されはじめたということだろう。

これまでに何度もニスモはそういうポジションを目指してきたのだから、いよいよ悲願達成というべきか。とはいえ、その価値を押し上げているのは、モータースポーツ活動はもちろんのこと、「GT-R」というニッポンの名車がベースとして存在するからだ。今後、ニスモがロードカーにおける高性能ブランドとして真に成立するか否かは他のモデルにおける展開如何にかかっているとも思う。GT-Rは夢のまた夢という存在であっていい。

けれども続く「フェアレディZ」にはそもそもアフォーダブルなスポーツカーという役割がある。そのニスモもまた然り。フェアレディZがBMW「M3」のようにさっさと買えるモデルになって初めて、そのブランド力は定着する。

現状はいささか心許ない。RZ34型「フェアレディZ」そのものは2022年デビューで早くも2年が経とうとしているというのに、街中では未だに珍しい存在だ。最近になって少しは改善されたらしいが、中古車相場はいまだに高値安定。つまり本来の役割を果たせないでいる。これじゃ日産にとってもブランドにとってもいいことじゃない。ましてやZに代わる存在が「アリア」、「リーフ」、「オーラ」というのだから、(いくらクルマそのものが良かったにせよ)ブランド性の確立には程遠いと言わざるを得ない。

ベースモデルのデリバリーも思うように進まない中でニスモが発表された。スポーツカー好きにとっては嬉しいニュースも、RZ34フェアレディZを注文し納車を待っていた客、もしくは最初からニスモ狙いで買わずに待っていた人にはちょっと腹立たしい出来事だったに違いない。販売方法などにも疑問が残る。

そういうことなので、フェアレディZ ニスモを駆っているととにかく目立った。スーパースポーツをテストしている時よりも声をたくさんかけられた。話しやすいのだろう。Zがみんなに愛されるアフォーダブルなスポーツカーであることの証拠だ。

念入りなチューンでGT性能に磨きをかけた

いつものように東京から京都までのロングドライブを敢行する。果たしてその乗り味はというと、例えばGT-R ニスモで感じたような異質さはまるでなく、あくまでもベースグレードの延長線上に存在するモデルだと思った。

パワートレインやエアロダイナミクスなど念入りに“ニスモチューン”されているとはいうものの、ひと言でその仕上がりについて評価すれば“スタンダードグレードの上質版”。スポーティさを強調しすぎず、つまりはGT-RのようにサーキットとGTという2極化には向かわず、よくできたグランドツーリングカーというZ本来のキャラクターに磨きをかけたという印象の方が優っている。見た目の印象はけっこう違う。スタンダードより長く、そして幅広い。フロントマスクのデザインがまるで違うこともあって、存在感の強さは格別だ。

3L V6ツインターボエンジンはスタンダードグレード用でもすでに最高出力405ps/最大トルク475Nmと十分にハイスペックだ。独自のチューンを施したとはいえニスモではそれぞれ420ps/520Nmで、正直にいうと公道では大差ないと感じてしまう。街中での乗り心地も拍子抜けするほど良好だ。サスペンションやブレーキのみならずボディ&フロアまで念入りに補強されているというのに、それらしき硬派さを感じることはない。

最近のニスモらしさをイージーに実感したければ、高速道路での長距離ドライブがオススメだ。新東名あたりの120km/hクルーズ領域を流れにのって走っていると、エアロダイナミクスの恩恵を少なからず感じることができる。空気を綺麗に裂き進む感覚や、路面との距離が近いフラットライド感、押し付けられたコーナーでの安定感など、ベースモデルのGT性能レベルがもう一段上げられていることが容易くわかる。

もちろん、フェアレディZ ニスモの真骨頂はスポーツドライビングだろう。高回転域まで引っ張ったときの精緻なフィールは流石に心地よく、サウンドの質もきめ細やか、回すことがそれなりに楽しいエンジンだ。ハンドリングは素直でかつ機敏で、意のまま感は相当に高いレベルにある。サーキットで走らせたいとZに乗って初めて思った。

けれども実はスタンダードグレードにも、サーキット走行への衝動以外は、十分に備わっている資質なのだ。だから、スタンダードモデルの納車の列に並んでいる間にニスモが出て、しかも買えなかったというオーナーには悲観することはないと言っておきたい。ドライビングファンとGT性能という点で言えばノーマルでも十分に高い。買えた人はたしかにラッキー。ニスモはもちろん、スタンダードモデルだってそうなのだから。

モバイルバージョンを終了