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三菱「トライトン」に何を積むかはあとから考えたっていいんじゃない? 普段使いしてライフスタイルや趣味を広げる超実用車です

三菱 トライトン:スタビリティ&トラクションコントロール(ASTC)や運転支援機能(e-Assist)なども備わる

オールマイティな実力派

13年ぶりに日本市場にも導入された三菱のピックアップトラック、新型「トライトン」。ラダーフレームを採用する本格オフローダーに、オフロードだけでなくオンロードでも試乗してきました。筆者ベタ褒めの、オールマイティな実力を探ります。

ピックアップだから……という言い訳は捨てた

2023年7月に、生産国であるタイで発表された三菱の1tサイズのピックアップトラック「トライトン」。その際、日本で発売されることもアナウンスされ、2024年2月に待望の日本上陸を果たしたばかりだ。そのオフロード性能については、2023年に三菱のオフロードテストコースにて先行試乗での様子をお伝えし、走破性はもちろんのこと、ラダーフレームを採用した実用モデルとは思えぬ、ハンドリング性能のよさ、さらには快適性を語れる乗り心地など、ポテンシャルの高さを強く感じた。今回は、オフロードだけでなく公道でもテストドライブを行うことになった。

結論を先に言ってしまうと、前回の北海道で感じていた「すごくいいクルマ」という印象は、「日常において難を感じさせずに使えてしまうし、ハンドリングに愉しさがあふれているし、もちろん、オフロード走破性はすこぶる高いし、まさにオールマイティなモデル」という、ベタ褒めにまで至っている。

新型トライトンは過去2世代を経てプラットフォームを一新したが、今回は完全なる新設計を行った。フレーム部は重量物ゆえに軽量化が優先される開発において、技術革新を伴うことで強固さを必要とするパートのフレーム断面を広げ、サスペンションやエンジン取り付け部を固めるなど、ピックアップトラックとしてだけではなく、クルマに求められる性能を実直に追求。そこに三菱流のチューニングをプラスすることでピックアップトラックだから……という言い訳を消し去っている。エンジンは2.4Lディーゼルターボユニットで、2ステージターボチャージャーの組み合わせにより全域での高トルクをフラットに発生する。

これまでのピックアップトラックは、重量物を積むことが多いグレード(仕向け地)のみに高出力ユニットを組み合わせる傾向があり、そういったユニットでは扱い難さが存在していた。しかし、新型は高出力に加えて、扱いやすさ、トルク変動の少なさなど、日常でも満足感を与えられるユニットを完成させ、それをあえて、日本向けに選んだという経緯がある。

安心感と愉しさのためにあえて曖昧さを残した

ベタ褒めゆえに、美点は数多い。リアタイヤの位置を強く意識せずにドライビングできること、ストレスなく発進させ、そのまま高回転域まで突入していくディーゼルユニットの頼もしさ、無駄のないどころか気持ちよさすら伝わってくるステアリングフィールなど、数え切れないほどにある。

オンロードでは、ピックアップトラックとしては意外と思われるかもしれないが、ワインディング路に愉しさがあふれていた。ステアリング操作どおりに向きを変えて駆け抜けていくし、マスが大きいと感じさせないし、ステアリング操作に対して、リアタイヤの動きにテンポ遅れは見当たらない。さらに、リーフスプリングであるのにタイヤのグリップ感が明確に伝わってくるところもすごくいい。

これらハンドリング性能については、ブレーキ制御をリンクさせたAYC(アクティブヨーコントロール)を新たに加えたこともプラスしているのだが、そもそも、クルマとしての素性がいいことを感じさせる仕上がりとなっている。

もちろん、あきらかにラダーフレームとボディを別体としたモデルであることを思い起こさせるフィーリングも残っている。たとえば、デザイン性を狙ったとはいえ、大径すぎる18インチホイールは路面が荒れたシーンではバタバタとした動きを見せ、その「揺れ」は、サスペンションからブッシュを介していなされているとはいえ、キャビンへ振動として伝わってくる。エンジンノイズもそう。

ブッシュによって遮断され遮音されているとはいえ、ノイズはキャビンへと飛び込んできているし、その振動はフロアを通じて乗員へ伝わってくる。ただ、乗り味にしても、ノイズにしても直接的なフィーリングは上手く消し去られており、かつてのピックアップトラックのような「仕方ない」と言い訳を並べるに至っておらず、新たに手に入れた乗用車的なフィーリングとなっている。

そういう観点からするといずれにも曖昧さはあるが、それは曖昧さをあえて少し残したという印象。もちろん、それらはいい加減さとは異なるもので、エンジンからサスペンションに至るまで「素直さ」が感じ取れる。そして、そこには安心感だけではなく、三菱流の操る愉しさもあふれていることに気づくと、トライトンへの信頼感は増し、対話性に酔いしれることができる。

オフロードにおける走破性はいうまでもなくハイレベル

駆動方式には、センターコンソールに備えられた大型のダイヤルによって、2WD、センターデフのオン/オフを可能とした4WDモード、さらには4WDローレンジ(センターデフロック)の4モードのセレクトを可能としたスーパーセレクト4WDを採用し、さらにリアデフロックモードを用意。

これだけでもオフローダーたる強靭さを見せつけているのだが、そこにスノー、ロックほか7つのドライブモードを組み合わせ、シーンに応じたパフォーマンスを見せる。個人的には、ドライブモードなんて不要、テクニックでオフロードは走るものさ、と言いたくなる世代だが、その使える制御に驚かされた。タイヤが多少浮いてしまうようなシーンでも、それこそテクニックを駆使して4WD(センターデフフリー)+ノーマルで走り切ってしまうが、そういったシーンに慣れていないユーザーでも、アクセルをじんわりと踏み続けているとやがてトラクションコントロールが介入して、ゆっくりとクルマを前進させてくれる。

そこにはクロスオーバーモデルの「脱出できればいい」というような制御に見られる唐突感はなく、まさにオフローダーが求めている、人が歩く速度でじんわりと進んでいくかのような制御が施されていた。言い方を変えると、安心感を与え、頼もしさを感じさせてくれるものだ。そもそもオフロードでの極低速を求めるようなアクセルワークがすこぶるしやすい。開発陣に訊ねたところ、あえてそういったセッティングにはしていないという。低回転域から過給がかかるユニットはトルク変動を感じさせ、扱い難さが出てしまうものだが、ロックセクションのようなアクセルを少し踏み込んで、トラクションが掛かったらアクセルを抜くといった操作でもコントローラブルだったことをお伝えしておきたい。

実用性だけではなく、日常域における快適性、爽快なハンドリングなど、クルマとしての愉しさにあふれている新型トライトン。これまでは、何かを積みたいからピックアップトラックを選んできた人が多いと思うが、これからは、何を積もうかを後から考えて、日常を愉しみ、そして、ライフスタイルや趣味を広げる相棒として、選んでみるのもいいかもしれない。

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