映画とは文化を描くもの
思えば1970〜1980年代の刑事ドラマは、今でいうところのコンプライアンスは無視されるような作品が多かった。だが、そこはエンタメとしての根幹があるがゆえのペーソスだったり、オーバーアクションだったりしたもの。いわば視聴者、観客へのサービス精神から生まれたものだ。『あぶ刑事』シリーズや松田優作の『探偵物語』、石原プロの『大都会』シリーズ、映画でも『あぶ刑事』『野獣死すべし』などを監督した村川 透氏はその代表といっていい。
現在では犯人を追跡する緊急時でも、やれ「刑事がシートベルトをしていない」とか「タバコを吸いながら張り込みをしている」とか、エンタメとは違う、もはやイチャモンとしか思えない指摘をする輩が後を絶たない。映画とは文化を描くもので、劇中に存在する登場人物たちはその物語の中にたしかに生きている人たちなのだ。そこを無視してコンプライアンスの名のもとにインターネット上で、しかも素性も明かさずに文句をつけてくる輩の多いこと。
「他者に何かいうならば最低限、まず自分の素性を明かせ」
といいたいものだ。
閑話休題。1980年代からじつに40年も続く『あぶ刑事』シリーズ。それはタカ&ユージやレギュラー陣たちの愛すべきキャラクターの人気だけではなく「観る人たちを楽しませたい!」という製作者たちの心意気あってのものだと思うのだ。それこそが『あぶ刑事』愛。懐メロでもありながら、現在の日本も感じさせてくれる娯楽作品に仕上がっている1本となっている。本作品の配給元は東映で、公開日は2024年5月24日(金)。ぜひ、劇場で楽しんでもらいたい。