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新車の慣らし運転は不要!? メーカーとエンジンチューナーとでどうして見解が食い違うのか。長く乗るならやっておいたほうが無難

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TEXT: 藤田竜太(FUJITA Ryuta)  PHOTO: AMW

  • エンジンやトランスミッション、デフなどの内部は、オイルでつねにフローティングしていて、非接触状態で作動している
  • 現代のクルマは驚くほど精度が高い設計・組み立てを行っているので、ナラシなど不要という説も
  • 自分と愛車の距離を徐々に近づけていきたいと思うのなら、ナラシ運転は大事な儀式だ
  • 新車登録より1カ月または走行1000kmの新車1カ月無料点検は実施している
  • ナラシ運転時はエンジンを高回転まで回さないのがコツだ

愛車との距離を縮めるなら必要な儀式

ひと昔前は、新車を購入したら「慣らし運転」を行っていました。いっぽうで最近のクルマは慣らしが不要というのが定説になっています。実際問題、エンジンやトランスミッションをなじませるために行われていた、慣らし運転はするべきなのでしょうか?

自動車メーカーは慣らし運転は不要の立場

クルマの部品はおよそ3万点。それぞれ生まれも育ちも違う(サプライヤーが違う)部品が、ある日、自動車メーカーの工場に集められて、あれよあれよという間に合体させられる。「ちょっと待ってくれよ。お互いもっとわかり合おう」と、時間をかけて摺り合わせる必要があると思うのは不思議ではない。

一方で、現代のクルマは驚くほど精度が高い設計・組み立てを行っているので、慣らしなど不要! という意見もある。第一、エンジンやトランスミッション、デフなどの内部は、オイルでつねにフローティングしていて、非接触状態で作動しているので、いわゆる「当たり」なんてつくわけがない。

9000回転も回るホンダ「S2000」のエンジン「F20C」のピストンの平均速度は25.2m/s(9000rpm時)もある。ピストンとシリンダーが直接接触していたら、あっという間に摩擦熱で焼き付いてしまうため、何千km、何万km走っても、摺り合わせなんて起きるわけがないわけで……。

だから、多くの自動車メーカーは「新車の慣らし運転なんてほとんど不要」という立場をとっているわけだ(各部の増し締めその他もあるので、新車登録より1カ月または走行1000kmの新車1カ月無料点検は実施している)。

それでも例外はある。

例えばBMWの「M」モデルは新車購入後、2000km走行時にディーラーにて点検を受けることが義務付けされており、これを受けないと「慣らし運転モード」(ECUの設定)が解除されない(2000km未満でも、納車後1年が経過すれば解除してもらえる)!

この2000km点検で、コンピュータの慣らし運転モードの解除になり、エンジンオイル&フィルターエレメント交換、ギアオイル交換を経て、晴れてナラシ終了。封印が解かれて元気に走り回ることが解禁される(それまでは、ローンチコントロールの禁止、回転数の制限ガソリン車4500rpm/ディーゼル車3500rpm、キックダウンの禁止などの御法度がある)。

つまるところ慣らし運転は大切な儀式だ

また、何人か有名なエンジンチューナーに話を聞くと次のようなコメントが返ってきた。

「新車やオーバーホールをしたエンジンは慣らしを行って欲しい」

「自分自身は新車が納入されたら必ず慣らしをやっている」

となると、正解ははたしてどちらなのか? 無理矢理まとめると、慣らしはほとんど必要ない。しかし、「ほとんど」ということは、少し差があり、まったく不要というわけではない。

愛車を長く大事に乗りたい。新車を買った高揚した気分に浸りたい、自分と愛車の距離を徐々に近づけていきたいと思うのなら、慣らし運転は大事な儀式。

カタログどおりの性能が出ていれば満足で、2~3年でもっといいクルマが出ればすぐに乗り換える、といった人には不要かもしれないが、少しでもスムーズで気持ちよく回るエンジン(クルマ)に乗りたいというのであれば、慣らし運転はやらないよりやっておいた方がいい。その結果、クルマとのよい付き合いができるはずだ。

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  • 藤田竜太(FUJITA Ryuta)
  • 藤田竜太(FUJITA Ryuta)
  • モータリング ライター。現在の愛車:日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)。物心が付いたときからクルマ好き。小・中学生時代はラジコンに夢中になり、大学3年生から自動車専門誌の編集部に出入りして、そのまま編集部に就職。20代半ばで、編集部を“卒業”し、モータリング ライターとして独立。90年代は積極的にレースに参戦し、入賞経験多数。特技は、少林寺拳法。
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