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ブリストル研究所主任研究員が解説! 3350万円で落札された「450ル・マン」はいかにして復刻されたのか?

ブリストル研究所主任研究員が解説! 3350万円で落札された「450ル・マン」はいかにして復刻されたのか?

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Bonhams

熱心なブリストル愛好家のアイデアから生まれ、総製作費用は5000万円オーバー

熱心なフランス人ブリストル愛好家で、ブリストル生産モデルの中でももっともスポーティで価値が高いとされる「404」のオーナーでもあるオリヴィエ・ボレ氏は、この並はずれたプロジェクトの首謀者。ル・マンで強烈な印象を残した「エアロダインクーペ」を再現するというアイデアが彼の心の中で芽生え、英国ウィルトシャーを拠点とするブリストルのスペシャリスト「ミッチェル・モーターズ」のアンドリュー・ミッチェル氏に復刻プロジェクトの検討を依頼したのがはじまりだった。

その依頼に応えたアンドリューは、1953年後半に製作された開発用「ミュール(初期試作車)」に近い「406」シャシーを発掘するとともに、ワークスチューンの希少な「12パイプ」6気筒ブリストルエンジンも発見。元のスペックに近いものにリビルドされた。

ただ、ル・マン・タイプのトランスアクスルギアボックスは見つからなかったことから、オーバードライブつきの4速ブリストル製ギアボックスを手に入れて、エンジンに組み合わされた。また、オリジナルのアルフィンドラムの代わりにディスクブレーキを採用し、先進の鋳造合金製ホイールは丹念に再製造された。

そしてこのマシンの肝である空力ボディワークは、独創的な研究と3Dデジタルイメージングを経て、2年かけて再現。再びアルミニウムで手作りされ、1954〜55年のオリジナルに近い「グラスグリーン」の色合いで仕上げられた。

また湾曲したプレキシガラスの窓はすべて新造されるとともに、フロントのウインドスクリーンは「MGB」用を再カットして使用することにした。しかしガラスの再カットはリスクが多く、2枚のスクリーンが粉々になってしまう。それでも3番目のスクリーンが生き残り、新しいボディシェルに取り付けられることになった。

さらにオリジナル450の完全再現は、周辺アイテムにまで細心の注意を払って行われた。オリヴィエ・ボレは、1954年のル・マンで獲得したトロフィーや刻印されたマグカップ、さらには当時のエースドライバーだったジャック・フェアマンが操縦したマシンのオリジナル・ステアリングホイールなど、ブリストルのレース遺物からさまざまな「アーティファクト」を発掘した。

ジャック・フェアマンからステアリングホイールを譲り受けたボレは、1954年ル・マンにフェアマンとトミー・ウィズダムがワークスエントリーした際のナンバー「33」を継承することに決めた。彼はまた、1973年にブランドを引き継いだブリストルのエージェントである著名なレーシングドライバー/ディーラーのトニー・クルックが所有していたという、オリジナル450のダッシュボードに固定されていた「セント・クリストファー」のメダルを追加した。

この「レクリエーション」ブリストル450ル・マンには、製作に要した請求書の原本を含むかなりのドキュメント類も添付されているとのこと。そして「ブリストル450のフルレストア」のために費やされた総額は、合計27万3635ポンド40ペンス(約5320万円)に上るとのことであった。

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