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ブリストル研究所主任研究員が解説! 3350万円で落札された「450ル・マン」はいかにして復刻されたのか?

ブリストル研究所主任研究員が解説! 3350万円で落札された「450ル・マン」はいかにして復刻されたのか?

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Bonhams

ファンにとってはバーゲンプライス

このユニークかつ魅力的なブリストル450エアロダインクーペ「レクリエーション」は、英国グッドウッド・サーキットにて2021年に開かれたベントレーのクラブミーティングで実走デビューを果たし、その強烈な存在感で会場のギャラリーを圧倒したという。

さらにムッシュ・ボレは、その年の8月にシルバーストーンで走らせ、「イギリスでもっとも美しい村」ことカッスル・クームでも展示したのち、翌2022年2月には彼の地元であるフランス、パリの「レトロモビル」にも出品。また同年にフランスのコンクール・デレガンス「アール・エ・エレガンス・ア・シャンティイ」の「ル・マン・レジェンド」クラスに出品され、審査員特別賞を受賞している。

また、ル・マン・サーキットを爆走したのち、モンレリーでは高名なフランス人作家セルジュ・コルディ氏がドライブし、次のようなレポートを残している。

「レース仕様のストレート6は、轟音とともにスタートし、68年ぶりにブリストルは歴史あるサーキットへと飛び出しました。4番手に入ると、ダッシュボードの小さなスイッチでオーバードライブをフリックで切り替えることができます。ペースが上がるにつれてステアリングは軽くなりますが、精度は保たれます。ミリメートル単位でラインをトレースし、そのラインを忠実に保持します。全体的なフィーリングをいえば、安定感とバランスの取れたマシン。オリジナルに忠実なので、当時のドライバーがほぼ同じ感覚を味わっていることは容易に想像できます。オーナー、そして生まれ変わった450ル・マンを見るすべての人にとって、その並外れたフォルムはブリストルの偉業の重要な部分です。想像力に富んだエンジニアが、空気力学がまだ黎明期にあった時代に生み出すことができたものといえるでしょう」

いっぽうボナムズ社は、このオークションの公式ウェブカタログにて、以下のような宣伝文を添えている。

「私たちは、1950年代初頭における驚くほどに未来的なデザインを、マニア心をそそるかたちで再現した製品を提供します。このレクリエーション車が、今はもう存在しないオリジナルに敬意を表しつつ、今いちどサーキットのグリッドを飾るのは素晴らしいことでしょう。多額の費用を投入して製作されたこのモデルは、間違いなく本物の450LMクーペに限りなく近いもの。ブリストルの重要な愛好家のコレクションから提供されるこのクルマは、真のコニサー(通人)のためのクルマです」

そんな一文とともに14万ポンド〜24万ポンドという、製作費用をはるかに下回るエスティメート(推定落札価格)を設定。ほかのオークションではあまり見られない想定価格レンジの広さは、たとえエキスパートのオークショニアであっても市場での評価が読めなかったことの表れとも思われる。

そして、2024年4月14日に行われた競売では17万2500英ポンド、日本円に換算すると約3350万円までビッド(入札)が進んだところで、落札となった。

このハンマープライスは、ジャガー「C/Dタイプ」やアストンマーティン「DB4GT」の「レクリエーション」たちが、当たり前のように2〜3億円、あるいはそれ以上の価格で取り引きされていることを思えば、かなり安価という見方もできる。

まして、オリジナルの450エアロダインがすでに失われていることを思えば、もはやバーゲンプライスにさえ感じてしまうのは、きっと筆者がブリストルというブランドのファンだからなのだろう。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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