世界に1台しか存在しないアルヴィスを注文できる
どう見ても半世紀前のクラシックカー、あるいは戦前のクルマでありながら、レプリカではないメーカー純正の「新車」として製造・販売されているのが、「コンティニュエーション(継続生産)」というスタイルです。イギリスの老舗高級車メーカー「アルヴィス」は1967年に一度はクルマの生産を中止しながらも、半世紀後の2017年からコンティニュエーション・シリーズの販売を開始しました。その中身とはどんなものなのでしょうか。
そもそもアルヴィスとは?
イギリスの老舗高級自動車メーカーである「アルヴィス」(日本総代理店:明治産業)が、2024年4月12日~14日の「オートモビルカウンシル2024」で3つのモデルを披露していた。「3L コンティニュエーションモデル グラバー スーパー クーペ」、「3L コンティニュエーションモデル グラバー スーパー カブリオレ」、「4.3L コンティニュエーションモデル ヴァンデン プラ ツアラー」という顔ぶれで、中でもグラバー スーパー カブリオレは日本初公開ということで、数多くの来場者がそのディテールに注目していた。
アルヴィスとは、T.G.ジョンがイギリスのコヴェントリーで1920年に創業した自動車会社で、コーチワークはクロス・エリス社が提供していた。1925年に世界初の前輪駆動車を設計・開発し、レースにも参戦。1933年には世界初となるシンクロメッシュ、イギリス初の独立懸架式フロントサスペンション車を設計・開発。1952年にアレック・イシゴニス(のちにクラシック・ミニを開発)が入社し、V型8気筒/3500ccエンジンの設計に従事した。
イギリスでも屈指の老舗にして名門のメーカーだったが、1967年に自動車生産の打ち切りを発表。47年間で約2万2000台を生産した歴史に一旦幕を閉じたが、1968年に自動車生産/開発部門が約5万点に及ぶ設計図、技術関連データ、顧客情報とともにケニルワースに移転。既存のアルヴィス車向けの修理や部品の生産は継続された。
やがて時は流れて、2010年に自動車生産の再開を決定し、アルヴィス 4.3Lエンジンの再開発をスタート。2017年に新たにコンティニュエーション・シリーズの販売開始を発表した。
コンティニュエーション・シリーズとは 、オリジナルの設計図やアルヴィス車のオーナーが所有する実車の3Dスキャンによるデジタルデータに基づき、当時と同じ方法で再生産した公道走行可能モデルのことで、レプリカとは異なる点がポイントだ。
クルマの世界におけるレプリカとは、オリジナルの製造権を取得した者が造った、オリジナルに忠実な複製だが、アルヴィスには過去に製造されたモデルから自社内で引き継いだエンジンやシャシー番号が与えられている。
オートモビルカウンシル2024の会場で展示された3台のコンティニュエーション・シリーズは、いずれもイギリス車の伝統を継承しつつ、現在の交通環境を考慮し、気楽に走れる楽しいクルマになっている。