シンガー・オートモーティブが日本での本格展開スタート
カリフォルニアを拠点とし、ポルシェを専門に扱うレストアブランド「シンガー・ヴィークル・デザイン」をご存知でしょうか。「911」オーナーとのコラボレーションによるレストアで世界的に知られるブランドです。そんなシンガーが、あることがきっかけで「コーンズ・グループ」とパートナーシップを締結し、日本で本格展開されることになりました。
シンガーが再構築したポルシェ911
2024年5月21日、カリフォルニアを拠点とし、空冷ポルシェ「911」オーナーとのコラボレーションによるレストアで世界的に知られる「シンガー・ヴィークル・デザイン(Singer Vehicle Design/以下シンガー)」は、新たなるグローバル戦略の一環として、日本の顧客のレストア依頼をサポートするパートナーシップ契約を、高級輸入車正規販売店「コーンズ・グループ」と締結したと発表した。
また、東京都内のホテルで行われた発表会の会場で「ターボスタディ」および「DLSターボ」からなる2台の完成車両を展示し、日本国内におけるシンガーの事業計画を発表するイベントも大々的に開催された。この発表イベントに先立って、シンガー社から、1通のメールが全参加者に届けられた。それは、シンガーのスタンスを記したものだった。
「シンガーはカーメーカーではなく、空冷式ポルシェ911のオーナーのために個別のレストアサービスを提供しています。私たちがオーナーのためにレストアしたクルマを正しく表現すると、こうなります。
“シンガーが再構築したポルシェ911(Porsche 911 Reimagined by Singer)”。
当社が再構築をおこなったマシンは、決して“シンガー”や“シンガー911”、”シンガー・ポルシェ911”、“ポルシェ・シンガー911”などの表記、あるいはそれを示唆する表現を用いることはありません。それは新たに再構築された、素晴らしいポルシェ911に他ならないのです」
この信条はひとえに、ポルシェへの敬意とポルシェの商標権を尊重するため。そして、今回のプレゼンのために来日した創業者兼エグゼクティブチェアマンのロブ・ディキンソン氏、経営最高責任者(CEO)のマゼン・ファワズ氏の両名は、ともに壇上で911への熱い敬愛の想いを雄弁に語った。
ディキンソン氏は少年時代から911に憧れ、長じてミュージシャンとして成功したのちに、念願の911を手に入れる。そして理想とするポルシェを創ってみたいとの思いに駆られ、まずは自身の愛車に手を加えたことからシンガーの伝説ははじまった。
ナロー時代のスパルタンな雰囲気をセンス良く体現したレストア
その後、彼の改造したポルシェの魅力に目をとめた周囲の友人たちから、同種の911を作ってほしいという依頼が集まり、2009年にレストア会社として創業。「964」をベースに、ナロー時代のスパルタンな雰囲気をセンス良く体現したレストア「クラシックスタディ」は、「数台程度ならば……?」という当初の目論見から大きく躍進し、結局は約450台が完成した段階で、価値の低下を避けるために製作プログラムを終了することになった。
さらに2018年には、英国「ウィリアムズ・アドバンスト・エンジニアリング」とのコラボレーションにより、カーボンファイバー製ボディをはじめとする軽量構造と、完全新設計となる空水冷(空冷シリンダー/水冷ヘッド)24バルブのフラット6自然吸気エンジンなど、F1GPで培われたウィリアムズのテクノロジーを大胆に投入した「DLS(ダイナミック・ライトウェイト・スタディ)」も開発。こちらは最大でも76台に限定して「再構築」すると伝えられた。
現在では本拠であるアメリカ南カリフォルニアに約350名、オックスフォードシャーのウィリアムズとの合弁事業である英国ファクトリーにも約250名のスタッフを擁し、シンガー流「再構築」を行っているというのだ。