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映画『フェラーリ』の見どころを公式パンフレット解説者が語る!「エンツォ・フェラーリの人間的な部分にも触れた佳作です」

映画『フェラーリ』の見どころを公式パンフレット解説者が語る!「エンツォ・フェラーリの人間的な部分にも触れた佳作です」

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: (C)2023 MOTO PICTURES, LLC. STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

英雄たちの残像を銀幕で見る幸福

と、ここまでは映画『フェラーリ』に登場する往年のクルマたちについて語らせていただいたものの、じつは試写を観覧した筆者がAMWの読者諸兄にもっとも注目いただきたいと思ったのは、人気俳優たちが演ずる当時のレーサーたちの群像である。

前述したように、この映画でメガフォンを執ったマイケル・マン監督や制作陣は、ロケーションや大道具・小道具はもちろん、世界遺産にも匹敵するような往年のレースカーたちを本物も交えて「出演」させた。そのこだわりは、作品内に登場する当時のレーシングドライバーたちの再現度にも表れているかに感じられる。

自動車レースに造詣の深い方ならご存知のことかもしれないが、スターリング・モスやピエロ・タルッフィ、オリヴィエ・ジャンドビアンなどの例外を除けば、これらのシーンの数年後にはほぼ全員が事故で若い命を散らしてしまう。でも、その面影を感じさせるキャスト陣が、これまで古い写真でしか見たことのなかった英雄的ドライバーの生き生きと立ち回るさまを演じているのが、いとおしくさえ感じられるのだ。

劇中で彼らが見せる明るく楽しげな、そして刹那的な振る舞いは、テスト走行やレースでいつ死んでしまうか分からないからこそ、人生を必死で楽しもうとする気持ちの表れ。自動車レースが今よりもずっと危険なものだったこの時代は、第二次世界大戦の終結からまだ12年後のことだった。それだけに「死の闇」というものが、われわれ現代人が思うよりずっと身近にあったと思われるような死生観も、この作品では垣間見られる。

この物語の主役はエンツォ・フェラーリと、当代最高の名優のひとりであるペネロペ・クルスが熱演したエンツォの妻、ラウラであることは間違いのないところである。しかし、現在もなお伝説の英雄として語り草となっているレーシングドライバーたちもまた、この作品では重要なピースを担っている。自動車史上最高のブランドであるフェラーリの黎明期には、さまざまな栄光と悲劇が内包されていたことを雄弁に語る壮大なオペラのごときドラマを、ぜひとも銀幕でご覧いただきたいのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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