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プロ鑑定人の目も誤魔化せる!? ステッチ入り本革仕様かと思ったらプラスチックでした。森六グループの最新加飾技術に注目です

ダッシュ表面は、叩けばすべてハードプラスチックの感触で、ステッチも疑似になっている

高級品と判別は難しいほどのクオリティ

2024年5月22日〜24日にパシフィコ横浜で「人とくるまのテクノロジー展2024 YOKOHAMA」が開催され、国内外自動車メーカーやサプライヤー、開発支援ツールなどのメーカー、自動車関連スタートアップ企業など90社(1378小間)が出展しました。そんな中から、目利きのベテラン自動車評論家の中村孝仁さんが注目したブースとは?

高級そうなダッシュボードに仕上がっているが実は……

徳島県で藍染め技術を生業として始めて以来360年の歴史を持つ森六グループ。今回は、とてもユニークな室内の加飾技術に注目してみた。例えば自動車のダッシュボード。高級車なら触り心地の良い本革だったりあるいはそれに準ずる素材を用い、糸で縫い合わせるステッチを入れることで高級感を演出している。もちろん素材にこだわったり、感触にこだわったりすれば当然コストがかかる。それは残念ながらその昔大衆車と呼ばれたような低価格のクルマでは望めないものであった。

しかしながら、少なくとも見た目だけにこだわるのなら、美しいいかにもステッチを施したシボのあるダッシュのように仕上げることが可能なのである。それを成し遂げたのが森六の樹脂状疑似ステッチ加飾である。写真を見ていただくと分かるとおり、シボの付いた美しいダッシュに赤の縫い目が入った高級そうなダッシュボードに仕上がっているが、表面を叩けばすべてハードプラスチックの感触で、ステッチも疑似のもの。

少なくとも見た目ではまさしく糸で縫っているような仕上がり具合で高級品と判別は難しい。ステッチに至っては触ってみても気付かない人がいるくらい巧妙に仕上げられている。

使われている技術はいわゆる熱転写技術なのだそうで、表皮上にエンボス加工を施し、着色同時加飾という技術を用いているのだそうである。こうしたダッシュボードに囲まれればちょっとした高級車に乗っている感覚を演出できる。

もう1つの技術は、こうしたダッシュボードの素材を従来頼っていた樹脂に代えて、持続可能な素材にかなり置き換えていることである。使用している材料は卵の殻、ココナッツの皮、貝殻、サトウキビといったものである。今回の展示ではサトウキビ、ヤシ殻、それに卵の殻を配合した樹脂が用意されていた。もちろんすべてを石油由来と置き換えることは現段階ではできないのかもしれないが、こうした素材を配合することで、石油由来の原料の削減につながっているのである。

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