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「ツーリズムとよた」の『WRC三河湖SS満喫日帰りツアー』に参加! たった6500円の参加費で大満足の豪華バスツアーの中身とは?

サービスパークを案内する勝田範彦選手。気さくな人柄から会場でも大人気。ファンからもあのモリゾウさんからも「ノリさん」の愛称で親しまれている

ツーリズムとよたが「WRC三河湖SS満喫日帰りツアー」を開催

2024年5月18日(土)に愛知県豊田市で、一般社団法人「ツーリズムとよた」主催による、「ラリードライバー勝田範彦選手と巡る“WRC三河湖SS満喫日帰りツアー”」が開催されました。今回、取材予定はなく、クルマと旅を愛する筆者が一般で応募し参加したところ、このツアーがあまりにも楽しく、その素晴らしさに感動したため、AMWにてお伝えします!

発表その日に完売御礼! ラリーファンでなくても楽しめる、驚きの豪華バスツアー

参加するまでラリーのSS(スペシャルステージ)をバスで巡るって果たして楽しいのか? それもおひとり様で楽しめるのか? と思ってましたが、その充実した内容に大満足! 勝田範彦選手や地元の方々のホスピタリティの高さにも大感動! バス旅番組じゃないけれど、バスツアーがこんなにもおもしろく楽しいものになるとは思いもよりませんでした。

今回参加したツアーはその名も、「ラリードライバー勝田範彦選手と巡る“WRC三河湖SS満喫日帰りツアー”」。ノリさんことラリー・レーシングドライバーである勝田範彦選手が半日以上同行し、2023 WRC FIA世界ラリー選手権「ラリージャパン」の「三河湖SS(スペシャルステージ)」をミニバスで巡り、夕食を一緒にとって抽せん会まで実施、しかも参加費は6500円! という、太っ腹な企画です。

タイトルからして勝田選手ファンやラリーファンなら迷わず参加したくなるツアーであることは間違いありませんが、当の筆者といえば、ノリさんの名やスバル時代の活躍は知るもののラリー競技の世界はなんとなく知る程度で、熱狂的なラリーファンではありません。

応募したのは、そんな輩が参加したら楽しめるのかな? ということのほかに、そもそも興味が湧いたのは、これがクルマ関連業界の主催ではなく、愛知県豊田市の公式観光サイトなど運営する同市の関連団体である一般社団法人「ツーリズムとよた」が主催していたこと。一般的に自治体の観光協会などはクルマのイベントには消極的なイメージもありますし、「モータースポーツ(あるいはクルマ)×地域活性」ってうまく地域を訴求したり、ファンや関係人口を増やしたりすることにつながるのか? と思っていた次第。もっとも豊田市は世界のトヨタの本拠地であり、いまや日本のラリーの中心地。期待も大いにありました。

さてツアーの定員は40名。開催側としても果たして集まるのか恐らく不安はあったのでしょう。最少催行人数は10名と応募内容には記載されていました。ところが聞けば発表したその日に完売御礼という状況だったそう。参加者は、中部エリアのノリさんファンやラリーファンが圧倒的に多かったものの、ファミリーや女性同士からシニアの方まで、じつに多彩な顔触れとなっていました。それにしてもあっという間に完売とは! やはりノリさんとWRCの人気は圧倒的だなと感じましたね。

どこか懐かしい自然豊かな里山が魅力。ツーリングもキャンプにもグッドな豊田市しもやま

ツアーの開催場所は2023年開催のWRCラリージャパンのコースとなった「三河湖SS」を擁する豊田市下山(しもやま)地区。中山間部に位置し、低山が連なる合間にはアユやアマゴが棲む清流が流れ、美しい棚田や集落が点在しています。豊田市や岡崎市の中心部からクルマで40分ほどの距離だというのに、その風景はこれぞ懐かしい日本の里山! といった感たっぷりで、とても風光明媚なところです。

ちなみに愛知県というとさほど米どころのイメージはありませんが、なんとこの界隈で収穫される「ミネアサヒ」は日本穀物検定協会の食味ランキングで最高位の「特A」を獲得した逸品。少し小粒ながらほどよい粘りとうま味を両立したここだけの味わいを持つお米だそう。地区にはそのミネアサヒを使った名物の五平餅店をはじめ、こだわりのそば店やうなぎ店などグルメスポットも数多くあるうえに、驚くほど整備されたワインディングロードがあちこちに広がっていてツーリングに最適な環境が整っていることにも驚きました。

三河湖もよくあるダム湖だよなー、程度の知識でしたが、リアス海岸のように複雑な湖岸を持ち、その形から別名ドラゴンレイクとも呼ばれている地元の人気のスポット。険しい山間のダム湖と違って親しみやすい水辺があり、美しい景観が広がっています。道中では天然記念物のニホンカモシカもよくみかけるそう。そんな自然豊かな湖を囲む道はまさにくねくねと曲がる林道。路面のほとんどがターマック(舗装路)ですが、SSに相応しい緊張感ある道が続いていて、バイク乗りにもおすすめしたいコースです。

しかも三河湖のほとりには、WRCや地元のラリー選手権を応援してきた飲食店や素敵なキャンプ場などもあって、自然の豊かさと人の営みが織りなす心地よさが感じられました。幾度も愛知県内や豊田市にも足を運んでいますが、まさか山のほうにこんなにも素敵な世界があるとは……。そういえばレクサスカンパニー、GRカンパニーの事業・開発拠点でもあるトヨタの最新テストコース「トヨタテクニカルセンター」もここ下山地区に完成したばかり。ラリーも含めクルマ文化の発信地として今後の発展が楽しみな場所でした。

「ここだけの話」に大盛り上がり! 地元の方々のホスピタイティにも超感動

さて、ツアーは大きく分けて3つのコンテンツが用意されていました。「ラリー講座とサービスパーク解説」、「WRC三河湖SS名所めぐり」そして「勝田選手との夕食会とお楽しみ抽選会」です。豊田市下山支所で受付後、一行は翌日開催される「2024豊田しもやまラリー」のサービスパークとなっている「まどいの丘」へ移動。ここで「ラリー講座とサービスパーク解説」がスタートしました。

元レースクイーンで豊田市しもやま観光協会のPR大使を務める矢上彩乃さんによる元気いっぱいの司会進行でスタート。そこに「貴元じゃないですよ」と、現在TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(以下TGR-WRT)に所属しWRCラリー1で活躍する息子さんの勝田貴元選手を引き合いに出しながら和やかな雰囲気でノリさんが登場。

ノリさんこと勝田範彦選手といえば、1995~2020年までスバルに所属し、「ターマックキング」とも呼ばれたスバル遣い。2007年から2017年までの11年間に全日本ラリー選手権で8度もチャンピオンに輝いたトップドライバーです。2021年からはモリゾウことトヨタの豊田章夫会長と知己を得て、TGRに移籍。全日本ラリー選手権のトップクラスであるJN1クラス年間優勝を獲得、通算9回目のドライバーズ・チャンピオンに輝いています。2024年からはLUCK with ROOKIE RACINGに移り、全日本ラリー選手権に参戦。先ごろ3月に行われた第1戦「RALLY 三河湾 2024」で総合優勝を獲得するなど現役バリバリの選手です。

講座ではWRCや全日本ラリー、そして愛知の地方選手権などについての話に始まり、グラベル、ターマック、レッキなどラリーの基礎知識や今回のバスツアーでも盛り上げる元となった「ペースノート」の作り方など、ラリーの醍醐味や楽しみ方を解説。「トヨタイムス」で公開され世間をざわつかせた(?)モリゾウの大転倒事件を筆頭に、ノリさんご自身が「コースから落ちた、転倒した」数々の話や、「車両テストで雪の壁にぶつけながら曲がっていたら、社員のテストドライバーはそんなことはもってのほからしく、あとで社内では始末書騒ぎになったらしい。私は書いてないけど(笑)」といった話など、「ここだけの話」を交えながら会場を盛り上げていました。

また、質疑応答では「雨中よりも降り始め、じつは雨上がりのほうが滑りやすい」「お子さんがラリーをはじめるなら、カートがいい。クルマの挙動がわかるから。ラリーではクルマをいじれることも大切なため、セッティングの面白さを知るラジコン遊びもじつはいい」といった有用な話も披露。楽しくも奥深いラリーの世界を参加者は楽しんでいました。

じつはこの日は、JAF中部・近畿ラリー選手権 兼JMRC中部ラリーチャンピオンシリーズ等の第1戦で地域ラリー選手権のひとつ「2024豊田しもやまラリー」の開催前日。レッキ(コース試走/下見)や車検の実施日で、モンテカルロ仕様に仕立てた「ミニクーパー」からラリー仕様のトヨタ「86」、「ヤリス」まで、地元や近隣県のエントラントが多数終結していました。会場にはその主催者であり、ノリさんの父親である初代全日本ラリーチャンピオンにして元WRCドライバーでもあった勝田輝夫さんも同席されていて、ラリーを知る参加者は大喜び。なんとサービスパークでは輝夫御大自らにラリー車両や車検について解説していただきました。

それにしても感心したのは、「しもやまラリー実行委員会」の地元ボランティアの方々の支援やホスピタリティ。エントラントやゲストに声をかけ、一所懸命動き回っておられました。すっかりラリー競技にも慣れているようで、ラリーで地域を盛り上げる! という意気込みがすごく感じられましたね。エントラントたちはそれぞれペースノートの確認やセッティングに勤しみながらも、ボランティアの方々と触れ合い、和気あいあいと楽しんでいる雰囲気が感じられ、ラリーっていいなぁと思える瞬間でした。

どうなの? と思っていたバスツアーはメチャためになって、面白い!

さて、サービスパークでラリーの基礎知識を学んだところで、いよいよメインイベント「WRC三河湖SS名所めぐり」バスツアーです。その名の通り2023年開催のWRCジャパンで使われたコースを部分的にですが、2023WRCに参戦したノリさんの解説でその道を巡るという、なかなかの貴重な体験。集落の農道や林道など細い道を通るため2台のミニバスに分乗しての出発です。

コースはWRCのスタ―ト地点から始まり、ソーセージやハムづくり体験や手作りジェラートで有名な「手作り工房 山遊里(やまゆり)」で休憩を取り、そこからは徒歩で名所(迷所?)ポイントを巡り、ゴール地点、そして最後に夕食会場の「三河路」へと走る、約2.5時間の行程です。

参加者はイヤホンを装着し、いざスペシャルステージへ。ノリさんが、実際にWRCに参戦した時のペースノートに沿って解説をしていきます。ラリーファンには説明不要ですが、「ペースノート」とは、レッキ(下見)をしてコースの起伏や直線、コーナーのキツさや長さ、路面状況、距離や目印などを自分たちで記し作る、いわばコース分析データ集。コースが固定されているサーキットトラックとは違って、コース形状や路面状況を簡単には把握できないのがラリー。そのためにコ・ドライバーが乗り込みペースノートをもとに、ドライバーにすぐ先の状況を伝え、最速で走れるようナビゲートしているのです。ちなみにRは右、Lは左、続く番号はコーナーのキツさを表す、といった具合。

コーナーや路面状況のことから地域の魅力まで、おもしろくてタメになるバスツアー

この日はノリさんもバスに同乗し、ドライバーではなくコ・ドライバー役として(笑)、WRCのSSをナビゲート。「R7ベリーロング、L4クイック、アンドR5タイトゥン……オッ、オレ意外とあってますよね! あ、ロストしちゃった(笑)」などと、コースの形状をペースノートの記載と合わせるように解説。合間に「アンド」は直線10~20mくらいの意味、「タイトゥン」はコーナー出口がきついこと、といった用語の解説や、ロストしても人によっては目印や距離を書き込んでいてリカバリーできたりする、といった話を披露。また、コ・ドライバーの抑揚によって危なさの印象が変わることもあるようで、そのモノマネを交えるなど、右へ左へと揺さぶられながらも楽しくも学びの多い時間が過ぎて行きました。

ちなみにペースノートの元になるコースメモを取るレッキ(下見)の日は、普段の公道を走るわけで、当然ながら法定速度は遵守。競技によって異なるもののSSコースであってもだいたい時速は40km/h以下だそう。なので、速度低めのバスツアーであってもリアルにコースの形状とその表現がわかり、かなり勉強になりました(笑)。加えてMCを務めた矢上彩乃さんもさすが地元のPR大使、ラリーをよくご存じでノリさんとの掛け合いも絶妙。そのトークの面白さに参加者は幾度も笑いがこぼれていました。

徒歩でのコース巡りは、思いのほか格別なものとなりました。まさに里山の景色を楽しみながらの散策タイムで、参加者ものどかな風景に見とれていたのが印象に残ります。もちろん、ノリさんが土手に乗り上げた残念な名所(笑)にはじまり、縁についた傷やタイヤ痕などWRCの痕跡がところどころに残されていて、激しい走りがひしひしと伝わってくる場面に遭遇。この狭い道を場所によっては180km/h近いスピードでかっ飛ばすことを想像すると恐ろしくなる一方、ラリードライバーってほんとうにスゴイと思わずにはいられませんでした。散策ではWRC開催時の象徴的なコーナーとなり世界的に発信された地元の熊野神社へも参拝。ラリーのことだけでなく、田畑や集落に伝わる慣習や歴史などについて地元ボランティアの方からお話も聞けて、心豊かになるひと時でした。

大満足だけどこの料金で大丈夫? と心配になるほど豪勢な夕食と抽せん会

夕食会の会場は三河湖を望む「三河路」さん。どでかいイノシシの「ためよし」君が出迎えてくれました。あたりはすでに美しい夕暮れ時に。「ツーリズムとよた」のスタッフやボランティアの方々による八丁味噌を使った五平餅など地元名産の紹介を受けながら、さっそく夕食会のスタート。驚いたのは、そのメニューの豪華さ。自慢の手作りこんにゃくや伽羅蕗などたくさんの食材を使った豪華な前菜に始まり、お造りに丸ごと食べておいしい新鮮なアユの塩焼き、ウナギの茶わん蒸し、さらにはみかわ牛のサーロインステーキ、名産の「ミネアサヒ」のご飯に赤だしのお食事、そしてデザートまでのフルコース。地域の食材と手作りの味覚いっぱいの食事は、お世辞抜きに美味しく、この参加費で大丈夫なのか?と思うほど(たぶんなにかしらの助成金はでていると思うものの、かなり豪華)。

途中、ノリさんが「五平餅を名物として説明しておきながら、出さないのはちょっとどうなの(笑)」と、自腹を切ってご飯として提供予定だった「ミネアサヒ」を全員分五平餅に仕立て直すという、うれしいハプニングも。それはそれはおいしくいただけました。

抽せん会では、地元の「五平餅のほせ」(ほせとは五平餅のくしのこと)というユニークな焼菓子やトートバックやティディベアなどのWRC公式グッズ、さらにノリさんのサイン入りキャップにお米の「ミネアサヒ」などが用意され、全員ハズレなしという、こちらも楽しくも豪華な会となりました。気が付けばあたりは真っ暗に。解散は夜の8時と、お昼の集合から約8時間も経過。でもあっという間に感じられましたね。筆者もそうですが帰り際まで参加者のみなさんもまだまだ楽しみたかった様子が伝わってきました。それだけ充実したプログラムでした。なによりノリさんをはじめ、矢上さん、そしてツーリズムとよたのスタッフ、ボランティアの方々の人柄、そのホスピタリティの高さが魅力的だったのが大きいと感じました。「ラリーは人や地域に支えられている。地域の協力と理解があってこそ」とノリさんは言っておられましたが、それをまさに実感。

遠方からは大阪、関東勢はおそらく筆者ひとりだったようですが、また、自分のクルマでこの地をドライブして巡りたい、そう思わせる内容と清らかな自然あふれる素敵な場所でした。

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