第5作目は苛酷な世界を生き延びるドラマ
『マッドマックス』といえば主役は無骨な元・警察官マックス。最新作では壮大な復讐劇を演じる主人公が刷新され、2024年5月31日(金)に全国公開される『マッドマックス:フュリオサ』で主役を張るのは女性キャラクター、フュリオサ。荒廃した苛酷で理不尽な世界で、生きるために未来だけを見続ける姿は、観る者の心を震わせること間違いありません。
第1作はマックスという名前の警察官の物語だった
記念すべきシリーズ第1作は1979年の公開。そもそも1作目の『マッドマックス』は、タイトル通り、マックスという名前の警察官の物語だった。暴走族の凶悪事件が頻発するオーストラリアを舞台に、妻子を奪われた警察官・マックスの復讐劇が展開するもの。
その後、2作目では世界大戦により荒廃した世界で、枯渇した石油を巡り元暴走族の凶悪集団と戦うという路線に。ちなみに本シリーズで世界的スターになった主演のメル・ギブソンは、3作目の『マッドマックス/サンダードーム』まで主演しているが、前作の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』からトム・ハーディにバトン・タッチされた。
『マッドマックス』の世界観が、現在まで続くフォーマットに置換されたのは、第2作目『マッドマックス2』から。その世界観が大ヒットマンガ『北斗の拳』に酷似していたことから、当時は「どちらが先か」と論議されたことも。じつは『マッドマックス2』の世界観に、ブルース・リーのような拳法の達人が登場するアイデアを思いついた、と後に作家が後述している(ちなみに『マッドマックス2』の日本公開は1981年12月26日、マンガ『北斗の拳』の連載開始日は少年ジャンプ1983年第41号から)。そこは明瞭にしておきたいところだ。
マッドマックスはあと1本ある!?
さて、前フリはここまでとして、最新作『マッドマックス:フュリオサ』について紹介しよう。前作『マッドマック 怒りのデスロード』の後、監督のジョージ・ミラーはこう明かしていた。
「マッドマックスの物語はまだ2つある。続編のタイトルは『マッドマックス ウェイストランド』だ」
それよりも先にもう1本のスピンオフ作品『マッドマックス:フュリオサ』が完成(つまりマッドマックスシリーズは全部で6作になる可能性がある、ということ)、公開となった。タイトルにあるように、今回の主役はフュリオサという女性。
2015年公開の前作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』との関連が描かれる、いわゆる「マッドマックス・サーガ」の女性主人公・フュリオサ(前作ではシャーリーズ・セロンが演じ、圧倒的な存在感を見せた)のエピソードだ。前作でマックスと共闘したフュリオサの過去に、果たして何があったのか?
少女の頃に、荒廃した世界の派閥のひとつ・ディメンタス一味に拉致され、母親を目の前で殺されたフュリオサ。必死に逃亡した先はもうひとつの派閥、イモータン・ジョーの砦。そこで生きる術を学びディメンタスへの復讐のために牙を研ぎ続ける日々を過ごす。
数年後、成長したフュリオサはディメンタス一味との抗争に赴き、再度捕縛されてしまう。だが誰もが諦めてしまうような絶望的状況に追い込まれても、フュリオサの心に燃える炎は消えることはなかった。
ド派手な改造車が多数登場
本作の舞台は荒廃し、物資も枯渇した世界なので、昨今の大作アクション映画のように大手自動車会社とタイアップして、最新車が登場するようなことはない。その代わりこれまでのシリーズ同様、ド派手な改造車が多数登場する。資料によると登場車両の数は145台。うち35台がクルマ、110台がオートバイとのことだ。
中でも目を引くのがフュリオサと行動を共にすることになる警護隊長・ジャックが運転する巨大物資運搬トラック。ベースがケンワース「900」シリーズのヘビーデューティトラックの改造車だ。一見してケンワースのあのトラック、という判別はつかないかもしれないが、そこは『マッドマックス』独特の世界観。
そもそもが新車などない世界なのだから、必然的に遺された車やバイクから使える部品を取り外し、使い回し、元のカタチが想像できない改造車を乗り回している。かつて昭和の時代には東南アジア方面に盗難車両を密輸するために、ナンバープレートや他の車の部品を組み合わせて(極端な例では2台を1台に切り合わせたものもあったとか)新たにクルマを作るという荒業が存在していた。
それを“ニコイチ車両”と呼んでいたが、『マッドマックス』の世界ではニコイチどころか、サンコイチ、ヨンコイチが当たり前。そのつなぎ合わされたド派手な車両群が荒廃した荒野を走り回るのだから、その世界観はさらに広がろうというものだ。
IMAXで大迫力のアクションを体感せよ!
今回、フュリオサを演じているのは2015年公開のホラー映画『ウィッチ』で注目を集めたアニャ・テイラー=ジョイ。彼女の魅力はその瞳の力強さ。マッドな世界で自身の信念=執念を揺るがせることなく戦い続ける女性の姿を見事に体言してくれる。前作でフュリオサを演じたシャーリーズ・セロンとはまた違った魅力(どこか野性的な)を明示する彼女の姿をぜひ劇場で確認してほしい。
今回、通常公開版のほかにIMAX版、4DX版、日本語吹き替え版が公開される。なかでも巨大スクリーンで最先端映像体験が出来るIMAX版をオススメしたい。目の前に圧倒的に広がる荒涼とした大地。そこを爆音で駆け抜ける改造車群、生身の肉体を駆使したアクション。
それら全てをまさに目の前で繰り広げられるかのように体感出来るIMAX映像は、まさに本作品のためにある、といってもいい。しかしながら劇場での鑑賞料金は通常料金よりもプラスされる。それを差し引いても、IMAXを体感すると通常劇場版に戻れなくなるくらいの感動がある。ぜひ劇場で『マッドマックス:フュリオサ』の世界観を体感していただきたい。