また新たな問題が発生!?
名古屋の「チンクエチェント博物館」が所有するターコイズブルーのフィアット「500L」(1970年式)を、自動車ライターの嶋田智之氏が日々のアシとして長期レポートする「週刊チンクエチェント」。第37回は「機関は絶好調だし速いけど……」をお届けします。
再びスティルベーシックへ
まいど油っこい話で恐縮至極なのだけど、直面してる問題が油そのものだから、どうにも避けては通れない。エンジンルーム内を浮遊してバルクヘッドだとかフードの裏側だとかをしっとり黒くしめらせるエンジンオイル。それがいったいどこから噴出してるのかはわからないままだけど、どういう走らせ方をすればどんなふうに漂い出すのか、いろいろ試したおかげで何となくわかった……ような気になった。
2021年9月29日、神戸に向かう出発日。途中、スティルベーシックに寄らせてもらって、再びチェックをしてもらい、そこから神戸に住むおふくろ宅を目指すことにしていた。うちからスティルベーシックまで、およそ170km。そこから神戸のおふくろ宅まで、およそ390km。わかった気になったとおり、僕はそれまで以上にゴブジ号のオイル周りを気にしながら走ることを決意しつつ、朝6時、ちゃーんと早起きして走り出した。
なにせ僕はチンクエチェント博物館の深津館長が“見かけと違って神経質ですねぇ”と苦笑いするくらいの、自他ともに認めるヘタレ。普通のクルマなら2時間ちょい、チンクエチェントでも3時間くらいあればスティルベーシックに到着できるというのに、サービスエリアひとつおきにゴブジ号を停めてエンジンフードを開けることになるから、そこからさらに1時間を加算して出発することにしたわけだ。
目標、スティルベーシックの開店時間である10時、だ。平井社長と大介さんのふたりの平井さんだけで全国各地のお客さんのクルマを面倒みてるから、スティルベーシックは常に忙しい。なので、朝イチにゴブジ号を運んでいってひと晩預かってもらい、本来の予定の合間や通常業務の後にチェックと考えられる対策をしてもらう、ということになっていた。僕は代車をお借りして隣の愛知県内での用事をやっつけ、翌日の昼頃にスティルベーシックに戻る、という計画。前日、平井社長と電話で話したときに提案してくれたのだ。本当にありがたい。
東京から静岡までの道中は、実に快適だった。前にもお伝えしたとおり、あの大きな振動はもはや皆無。ゴブジ号は素晴らしく滑らかに走ってくれる。それなりの期間ブルブルワナワナ震える車体とつきあっていたので、その滑らかさが感動的なくらいに嬉しかった。チンクエチェントがシトロエンのように感じられる……というのはデコピン級の言いすぎだと思うが、クラシック・チンクエチェントって誰もが想像するよりコンフォートなのだな、とあらためて嬉しく思えたのは本当だ。スピードはフツーのクルマどころか昨今の軽自動車ほどもないし、速度が高くなればなるほどまっすぐ走りづらくもなるし、そもそもクルマが求めるような操作・操縦をしないと綺麗には動いてくれないという前提もあるのだけど、それでも静岡に辿り着いたときの疲れ具合は、以前とはまったく違っていた。というか、疲れた感覚はまったくなかった。あらためて、振動がないって凄い! と思った。……まぁ振動のないのがフツーなんだろうけど。