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EV小型トラック用タイヤにスポーツカー向け以上のこだわりが…エコ性能が高まれば、送料だって安くなる!?【Key’s note】

アスクルのEVトラック

ラクスルが導入したEVトラック

新車だけではなくカスタムも! さまざまな展示が楽しめたジャパントラックショー

レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之氏が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「EVトラックの普及とタイヤ」についてです。2024年5月9日〜11日、パシフィコ横浜にてジャパントラックショー2024が開催されました。多岐にわたる展示内容で見応えがあったと木下さん。そのなかで、今後われわれの生活にも大きく影響するであろう、配送トラック向けの気になるアイテムを見つけました。木下さんが感心した「EVトラック向けタイヤ」の秘密に迫ります。

EVトラック向けなのにまるでスポーツタイヤのよう!

ジャパントラックショーはなかなか興味深いイベントでしたね。トラックショーと名乗るくらいですから働くクルマが主役なのですが、一般的なビジネスショーとはやや異なり、デコトラ用のカスタムパーツが展示されているなど趣味性も含まれています。トラック用洗車機メーカーによる実機の展示もあります。輸送関係で仕事をしていない門外漢でもワクワクできるイベントでした。

そんな華やかなイベントですが、もちろん正統派ブランドの出展にも目が吸い寄せられました。トラックタイヤでは一大ブランドを誇っているトーヨータイヤが展示していた「ナノエナジーM151EV」はなんと、左右非対称のトレッドパターンが斬新でしたね。まるで、スポーティタイヤのプロクセスTR1や、コンマ一秒を削るためのプロクセスR888Rのようです。

ただ、スポーツタイヤが左右非対称なのは、ハードなコーナリング中に荷重が加わるアウト側の接地面積を稼ぐためです。ハードな走行を前提にデザインされているのです。ですが、「ナノエナジーM151EV」はトラック用のタイヤです。ハードな走行をするわけではありません。それなのに左右非対称。そこに興味がそそられたのです。

「ナノエナジーM151EV」の副題は「小型EVトラック専用リブ」です。それからも想像できるように、今後増殖が期待されるEVトラックに適した性能を盛り込んでいるのです。

EVトラックは決して軽くはないバッテリーを搭載しています。その上に荷物を満載するのですから、耐荷重性能を高める必要があります。スロットルレスポンスも鋭いでしょうから(設定次第ですが……)、頼もしいトラクション性能も求められます。その辺りを強化しているのでしょう。

エコ性能が高まれば消費者の負担も減る!?

さらには、環境性能も見逃せません。EVの課題のひとつである航続可能距離を伸ばすには、転がり抵抗が無視できません。新開発の「ナノエナジーM151EV」は従来品よりも転がり抵抗を抑えているそうです。

基本的にこのタイヤは「リブタイヤ」に属します。リブタイヤとは、周方向の横溝を減らし、縦溝を主体にデザインしたタイヤのことです。コーナリングよりも直進することが多いトラックには相応しいデザインなのですね。縦溝によって排水性を確保します。

「ナノエナジーM151EV」はさらに接地面アウト側の横溝を減らすことで剛性を高め、耐摩耗性を向上させています。移動距離が多いトラックにとっては耐摩耗性も無視できない要件です。それをアウト側のゴムデザインで確保。それでいて、接地面イン側にはわずかに横溝を掘っています。これによりEV特有の急激なパワーに備えてトラクションを確保しているのです。

接地面センター付近のデザインにより、空荷時の接地面積をも確保しているそうです。そうです。トラックはフル積載時と空荷時で、タイヤにかかる荷重が極端に変化します。われわれが日頃ドライブしているクルマでは、せいぜいが乗員の数や燃料の量(EVには無関係ですが……)程度の影響ですから大幅な変化はありませんが、トラック用となると荷重の激烈な変化に対応しなければならないのですね。

ちなみに、磨耗ライフは従来品と比較して21%も向上しているそうです。トラックはランニングコストにも敏感です。燃料費はもちろんのこと、タイヤの消耗も無視できません。そのコストが輸送会社の業績に直結するばかりか、それが輸送費の高騰になり、われわれが支払う送料に転化されることもあります。

「ナノエナジーM151EVを履いたトラックで運んでくれ」

われわれが宅配便を頼むときにそんなリクエストすることはできません。

「ナノエナジーM151EVだから送料を安くしますよ」

ともなりませんね。ですが、少しでも環境に貢献できることは嬉しいことです。初めてトラックショーに足を運びましたが、参考になることばかりでした。

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