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25年前、850万円だったのがいやま1億円オーバー! フェラーリ「250GTO」の進化版ビッザリーニ「5300GTストラーダ」とは

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2024 Courtesy of RM Sotheby's

フェラーリ250GTOから出発したビッザリーニ

このほど、RMサザビーズ社の「MONACO 2024」オークションに出品されたビッザリーニ5300GTストラーダは、シャシーナンバー0264。ビッザリーニが完成させた86台のアロイボディ車のうちの1台で、1967年9月にアメリカ合衆国内に、新車でデリバリーされたと目されている。

「イゾ-ビッザリーニ・オーナーズクラブ」および「ビッザリーニ・レジストリー」によって管理・編集されている情報によると、シャシーナンバー0264は1990年までアメリカに保管され、その後にイギリスに輸入。この段階で、記録に残る最初のレストアが行われた。その後は1998年から2007年までの間、イギリスとヨーロッパ大陸のオーナーを渡り歩いたのち、2008年に著名なイタリア人コレクターのもとに落ち着いた。

そして直近の前オーナーのもとで、2015年9月にビッザリーニの専門書も上梓しているイギリスの専門家、ジャック・クーブス・デ・ハートッグ氏によって車両検分されたのち、2016年11月に今回のオークション出品者である現オーナーに譲渡されたが、その時点ではまだ以前のレストアの痕跡が残されていたという。

シャシーナンバー0264はその後、2017年8月にスイスのローザンヌにある「レベリオン・モーターズ(Rebellion Motors)」社に委託され、数年にわたる徹底的なレストア作業が開始された。

まずは、シャシーのプラットフォームが年数なりに古くなっている状態であることが判明したため、レベリオン・モーターズは同じくローザンヌの「カロッセリー・チャレンジ(Carrosserie Challenge)」社の協力のもと、みごとに修理。必要な箇所には再加工を施し、新しいボディパネルとシャシー補強材を溶接した。

添付されるドキュメントファイルに含まれている請求の大要には、完成したすべての作業が詳細に記載されており、それらを合計するとフルレストアに投入された費用は24万6000スイスフラン(現在の為替レートでは約4200万円)以上に相当したという。

フロントフェンダーにはクロームメッキ仕上げした3列のエアベントが設けられるとともに、パワーウインドウやタルボ型ミラー、クローム仕上げのボラーニ社製17インチ径ワイヤホイールなどの豪華装備もオリジナルとして完備している。

レストア完了ののち、ほとんど使用されることのなかったシャシーナンバー0264は、随所に美しく正しいディテールを残している。さらに、完全オリジナルスペックのシボレーV8・5.3Lエンジンが2基付属しており、そのうちの1基はスイス東部ザンクト・マルグレーテンの「オールドタイマーセンター・オストシュヴァイツ(Oldtimer Center Ostschweiz)」社によって、一部をリビルトされたとのことである。

新車当時、約1万500USドルという価格で販売された5300GTストラーダのパフォーマンスは、競合するほかのイタリアンGTの追随を許さなかった。そして現在、最も権威のあるコンクールやクラシック・レース・イベントでも十分に見栄えのするこのクルマは、あらゆる点で類まれなグラン・ツーリスモである。

「フェラーリ250GTOの父」と呼ばれるジョット・ビッザリーニが語ったとされる言葉は、この類まれなスーパースポーツをもっとも端的に示していると言えるだろう。「私はGTOのアイデアから出発し、それを改良することから取りかかった」

予想落札価格に一歩届かず

ビッザリーニ5300GTストラーダは、わずか86台しか作られていない希少車。その事実とスーパーカーとしての圧倒的な魅力を鑑みてだろうか、RMサザビーズ欧州本社は75万ユーロ~85万ユーロというエスティメート(推定落札価格)を設定した。

ところが実際の競売では、エスティメート下限に一歩届かない73万6250ユーロ、約1億2500万円という落札価格で、競売人のハンマーが鳴らされることになった。

それでも、今を去ること四半世紀前に購読していた日本の某自動車専門誌の広告にて、たしか信越地方のさるイタリアンクラシックカー専門店が、ビッザリーニ5300GTストラーダに「850万円」という正札を付けながらも、長らく売りあぐねているさまを注視していた筆者とすれば、現在のマーケット評価にはなかなか感慨深いものがあるのだ。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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