クラシックカー界隈では有名なコレクター
クラシックカーイベントで、ダイハツ「ミゼット」の車内にびっしりと並べられたミニカーやグッズの数々を発見。この収集ぶりはただ者ではないと思い、オーナーである大橋良一さんに声をかけてみました。どんな「ミゼット」愛を聞かせてもらえるのかと楽しみにしていたら、なんとクラシックカー界隈では有名な、ダイハツ「コンパーノ べルリーナ」と「コンパーノ スパイダー」のコレクターでした。
仕事も趣味もダイハツひと筋
2023年11月19日に熊本県宇城市三角町で開催された「第8回オールドカーフェスティバルinみすみ2023」でダイハツ「ミゼット」を発見。使用感があり傷やサビなどはあるものの、大切に保管されているであろうことは容易に想像がついた。ところが、実際にお話しした大橋さんは予想を遥かに超えたレベルのダイハツマニアの方だったのだ。
「18歳から現在まで、ダイハツでサービスアドバイザーをしています。最初にコンソルテに乗って、シャレード ターボ(G11型)、コンパーノ ベルリーナ、そしてそのスパイダーと、とにかくダイハツ車ばかり乗ってきました」
そういって見せてくれたのは、10数年前に取材を受けたという某クラシックカー雑誌だった。そこに写るのはたくさんの「コンパーノ ベルリーナ」と「コンパーノ スパイダー」とともに、笑顔の大橋さんだった。当時の時点で所有台数は20台以上。現在は、部品取りも含めて30台以上を所有しているそうで、ご自身いわく「この2車種に関しては所有台数日本一のはず」というレベルのコレクターだったのだ。
大橋さんは、今までミゼットの所有歴はなかった。ダイハツの歴史を紐解くと、4輪事業に特化する前の過渡期を支えたのが1930年に登場した1号車「HA型」から始まる三輪自動車であり、1957年に登場したミゼットが大ヒットしたことで、その後のダイハツが進む道を作ったと言っても過言ではない重要車種。
そんなミゼットが、某雑誌の売買欄で部品取り車とともに合計3台まとめて出品されていたのを発見。しかも、たまたま同じ熊本県内からの出品だったことから、その車両を譲り受けることになったのだそうだ。
愛車の維持に必要なのは、専門職のノウハウと勘
実際に手に入れた3台の中で、登録用の書類が残っていたのがこの個体だった。しかしエンジンは焼き付いていたことから、他2台を部品取りとして活用し、いわゆるサンコイチ車両が完成。
「修理しながら、部品がない部分は他のクルマなどの部品で共用できないかを探したり、状況によっては自分で部品を作って対処しています。当時の部品ではなくても、現在手に入る物で代替できそうな部品があるのか? それとも無いのか? あるのならなんとでも修理できるし、無いのならばどうにかする。その部品の有無を自分で調べることもできるのが、メリットかもしれませんね」
そう笑う大橋さんが手直ししたのは、足まわりからエンジン、ポイントはフルトランジスタ化。プロペラシャフトも現在のユニバーサルジョイントタイプに変更。他に、ハンドルやヘッドライト、ゴム類など、走行に支障がある箇所などを重点的に、自ら部品の一部を製作したり、代替品を探すなどをして修理を敢行。
ただし、もともとは軽トラックのように荷物を積むためのクルマだからという理由で、外装修復には積極的に取り組まず、見た目よりも実際に走らせる方に修理や維持を捧げているのだ。
数々のグッズに関しても、ミゼットのおもちゃを1台ずつ集めてみたところ、結果的に膨大な数のコレクションに。コンパーノ ベルリーナとコンパーノ スパイダーに注いだのと同じ熱量の愛情を、ミゼットに対しても注いでいる大橋さんであった。