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【実走1300キロ】マツダ「MX-30ロータリーEV」の実燃費を辛口モータージャーナリストが検証! 高速と街乗りで極端な差が…

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TEXT: 斎藤慎輔(SAITO Shinsuke)  PHOTO: 斎藤慎輔(SAITO Shinsuke)/MAZDA

  • マツダ MX-30ロータリーEVは、ロータリーエンジンで発電するシリーズハイブリッドのPHEVとなる
  • マツダ MX-30ロータリーEV:WLTCモード燃費の公表値は15.4km/L
  • マツダ MX-30ロータリーEV:新開発の8C型と名付けられた830ccのシングルローターエンジンを搭載
  • マツダ MX-30ロータリーEV:雪の残る山形県の山間部で低ミュー路の走りも試した
  • マツダ MX-30ロータリーEV:普通充電に加えて急速充電機能までを備えたPHEVであることが特徴
  • マツダ MX-30ロータリーEV:外部からの電力供給で走行前に満充電にしておき、EVモードのみで走らせれば、名目上は走行107kmまで燃費無限大ということになる
  • マツダ MX-30ロータリーEV:実際にはSOC(バッテリー残量)100%で、EV走行可能距離55kmと表示された(もちろん状況による)
  • マツダ MX-30ロータリーEV:2012年6月にRX-8の生産を終えて以来の、ロータリーエンジンの復活
  • マツダ MX-30ロータリーEV:新開発の8C型と名付けられた830ccのシングルローターエンジン
  • マツダ MX-30ロータリーEV:新開発の8C型と名付けられた830ccのシングルローターエンジン
  • マツダ MX-30ロータリーEV:モダンで落ち着いた佇まいのインテリア
  • マツダ MX-30ロータリーEV:車両重量1780kgに対して前軸荷重1090kg、後軸荷重690kgと、前後重量配分は明確なフロントヘビー
  • マツダ MX-30ロータリーEV:新開発の8C型と名付けられた830ccのシングルローターエンジンを搭載
  • マツダ MX-30ロータリーEV:雪の残る山形県の山間部で低ミュー路の走りも試した
  • マツダ MX-30ロータリーEVは、ロータリーエンジンで発電するシリーズハイブリッドのPHEVとなる

マツダのロマンであるロータリーエンジンが「復活」

シリーズハイブリッドの発電専用としてロータリーエンジンを復活させた、マツダのPHEV「MX-30ロータリーEV」。激辛モータージャーナリストの斎藤慎輔氏が延べ10日間・1300kmにわたってさまざまなシーンで試乗し、その性能や実燃費をテストしました。その結果、高速道路のロングドライブではみるみる燃費が悪化し、街乗りメインではなかなか優秀という、このクルマの極端なキャラクターが明らかに。どんな使い方のユーザーにマッチするのでしょうか。

シリーズハイブリッドの発電用に復活したロータリーエンジン

マツダはパワートレインに関して、なにかと話題を提供してきたものだが、今度は2012年6月に「RX-8」の生産を終えて以来の、RE(ロータリーエンジン)の復活である。

REの強みとしては、出力比でみてコンパクトということがあり、それがFR(フロントエンジン・リアドライブ)でのフロントミッドシップレイアウトを可能にし、RX-7やRX-8など操縦性に優れたスポーツモデルを生んできた。

一方で燃費性能、排気ガス性能において不利という面から、マツダも一度は継続を諦めることになったのだが、今度は、従来のスポーツモデル用のエンジンから一転して、シリーズハイブリッド用のエンジン、つまり発電機として使おうというのだ。復活は歓迎したいところだが、それが発電機としてとなれば、以前のREフィールをよく知る筆者のような年代の者にとっては、正直、ただ素直に喜べるわけでもない。

「MX-30ロータリーEV」と、車名からしてRE搭載車であることを強調しているが、シリーズハイブリッド用エンジンに求められるのは、効率の高さは当然として、それがよっぽどに心地良い音色であったりしない限りは、むしろ存在感をどれだけ薄められるかが勝負どころのひとつにもなってくるからだ。

そもそも高回転を得意としてきたREにとって、このMX-30ロータリーEVに搭載される新開発の8C型と名付けられた830ccのシングルローターエンジンは、最高回転でも4500rpmあたり、常用域は2000~2500rpmといったところらしく、何より充電+電力負荷に応じて回転を制御しているものだから、ドライバーが回転をコントロールできる余地はない。ならばこそエンジンが始動した際、できるだけ振動や音を発せず、伝えず、電動駆動車らしくスムーズに走れるかどうかが重要になってくる。

ということで、試乗会における短時間走行ではなく、本当の姿、実力を知るべく、1台は都内近郊および箱根周辺を主体に、もう1台はスタッドレスタイヤ装着車で、雪の残る山形県の山間部まで出かけ、2台で延べ10日間以上、走行距離計1300km弱を乗って、官能性から積雪地など滑りやすい路面における駆動性能、制御、ハンドリング、そして実燃費までをしっかりと確認させてもらった。

WLTCモード燃費では15.4km/L

MX30ロータリーEVはロータリーエンジンを発電機としたシリーズハイブリッドであるが、普通充電に加えて急速充電機能までを備えたPHEVであることが特徴だ。その駆動用リチウムイオンバッテリー容量は17.8kWhで、EVとしての航続距離は107kmと発表されている。そのうえで燃料タンク容量は50Lを確保していることから、航続距離も長いとなるわけだが、しっかり走って真の実力を確認させてもらうのが筆者のスタンスでもある。

ちなみにWLTCモード、つまりこれはハイブリッドモードでの燃費と捉えるべきものだが、公表値は15.4km/Lとなっている。この時点で、このボディサイズ、エンジン(発電機)の出力などからして、ハイブリッドとして秀でた数値ではないことは知れるが、はたしてロータリーは燃費が悪いという過去の事実は、払拭できることになるのだろうか。

この際の燃費に対する考え方は、いくつかある。PHEVであるので、外部からの電力供給で走行前に満充電にしておき、EVモードのみで走らすということになれば燃料の使用はゼロだから、名目上は走行107kmまで燃費無限大ということになるわけだ。

もっとも、1台目をマツダから借り出した際、走りだす前にモニター上で確認された数値を記せば、SOC(State Of Charge=バッテリー残量)98%でEV走行可能距離は75kmと表示されたが、2台で計1300km弱を走行した中では、通常の走行環境での電費からして、このあたりが現実的なところだと知れた。

高速道路340キロ走行での実燃費は9.4km/Lと残念な数値

純粋にEVとしての走行においても出力特性は穏やかで、大半のBEVやPHEVがモーター駆動する際の、アクセルの踏み込みで一瞬で大トルクを発生させて、いかにも電動駆動車らしい、瞬時に頭を後方にのけぞらせるような強烈な加速をもたらすようなことはない。

これには、EVなのに鋭い加速が得られないと思う人と、速さはないが心地よく上質な加速感と捉える人とに二分しそうだが、ここはマツダの考え方がよく現れているところでもあり、個人的には、車両のキャラクターとも合って好ましい特性だと思えた。

そして純EVに対してのPHEVの強みは、長距離を走行する場合でも、外部からの駆動用バッテリーへの充電の必要なく走り続けられることで、WLTCモード燃費から計算すると、これが770kmとなっているわけだ。

けれども、実走行において、とくに高速道路を主体に長く移動するようなことになれば、これには大きく届かないことを知ることになった。懸念が現実になったという感じでもあったので、先にこの点から述べてしまうが、なによりも高速巡航における燃費が、WLTCにおける高速道路モードの数値(16.4km/L)とは乖離しているのだった。

今回は、シリーズハイブリッドが苦手とされる高速走行域での燃費性能を知りたかったこともあり、山形県で高速道路のインターに入る直前に満タン給油し、そして都内で首都高速を降りて数kmのガソリンスタンドで再度満タンにするまでの約340kmの間をすべてノーマルモード(ハイブリッド)で走行してみたのだが、その際の実燃費は、9.4km/Lしか走っていなかったのだ。

同じような環境、速度での走行ならば、いまどき600ps級のスポーツカーでも得られてしまう燃費で、さすがに落胆した。

走り方に疑問を抱く方もおられると思うので、条件を記しておくが、スタッドレスタイヤ装着(タイヤメーカーによれば、スタッドレスタイヤはゴムの特性から転がり抵抗は小さく、スタンダードクラスのエコタイヤ相当だという)で、高速道路(東北中央自動車道→東北自動車道→首都高速道路)では、基本的に走行レーンで流れに準じ、追い越しは最小限に留め、最高速度120km/h区間においては、ACCを110km/hにセットして走らせた。

乗員は3名だったので、1人乗車に対しては重量のハンディを考慮しておく必要はあるが、加減速を頻繁に伴わない巡航での影響度は、上り勾配が続くような場合を除けばそれほど大きくはない。むしろ一般道での影響の方が大きかったのかもしれず、一般道の割合が多かった往路では、道の駅で急速充電により一度満充電にしたにもかかわらず、目的地到着時にメーターが示した平均燃費は13.3km/Lと芳しいものではなかった。

それにしても、わずか72psのREによる発電機が、連続高速巡航など負荷の大きな際の燃費は想像を超えて悪く、燃料計の針が目に見えて落ちていくことに驚かされたのだった。

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