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【実走1300キロ】マツダ「MX-30ロータリーEV」の実燃費を辛口モータージャーナリストが検証! 高速と街乗りで極端な差が…

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TEXT: 斎藤慎輔(SAITO Shinsuke)  PHOTO: 斎藤慎輔(SAITO Shinsuke)/MAZDA

街中走行がメインなら17.3km/Lと優秀な数字

ちなみに、山形での給油の際のバッテリー残量は50%をわずかに切る程度だったが、高速道路走行中もそのあたりを保ち続ける。エンジンは軽負荷では停止するが、感覚的には8割程度は作動している感じ。室内に届くエンジン音については、音量自体は抑えられているが、レシプロエンジンとは異なる、耳に届く独特の曇った音と、軽めだが音圧も感じさせることから、個人差はあるだろうが、快音とか心地よいとか評するには無理がある。

この山形への往復では、復路でも泊まった温泉宿で、普通充電により100%まで充電をした状態で出発したため、とくに一般道でのEV走行比率が必然的に高められていた。さらに、都内に戻ってからも一度、急速充電により満充電としたにもかかわらず、走行約830kmにおける平均燃費は、残念ながら13.8km/Lに留まった。

ちなみに、都内から箱根周辺などを約450km走行したもう1台は、街中走行が多く、かつその間に急速充電により2回満充電としたことで、メーター表示上で17.3km/Lの平均燃費を得ている。

これらをしてPHEVだからこそのメリットと捉えるのか、とくに80km/hを越えるような高負荷域でのエネルギー効率の悪さを疑問視するか、捉え方は分かれることになりそうだ。

明確なフロントヘビーゆえのメリットとデメリット

走りに関しては、駆動制御についてはEVにありがちな過剰感が抑えられ、大人しい印象をもたらすほどにスムーズであることは先にも述べた。このあたり、わざわざ駆動用モーターを自社開発するくらいのこだわりを持つだけのことはある。また、パドル操作によりアクセルオフ時の減速度だけではなく、加速性能の強弱も合わせて変えられるので、ドライバーの意思を車両の動きに反映させやすい。これにより、ドライビングのリズムも、よく設えられた走りの中に、ちょっとしたスポーティな感覚も得られるのが好ましく思えた。

もうひとつ、走りの特徴をもたらしている要因として、コンパクトなロータリーエンジンを搭載するといいながら、前後重量配分は明確なフロントヘビーという点も見逃せない。車両重量1780kgに対して前軸荷重1090kg、後軸荷重690kgと、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車としての比率でみれば、ディーゼルエンジン搭載車なみかそれ以上。

フロアセンターに駆動用バッテリーを搭載していて、トランスミッションも持たないのにこの数値なのだから、いかにパワーユニットが重いかが知れる。燃費とともにREをあえて採用したことの理由が問われる点だ。

ただし、雪道を走行した中では、FFとしては圧倒的にも感じさせるトラクション性能にフロントヘビーのメリットを感じさせる。登り勾配の、雪面の下がアイス状になっている状況など、FFではここからの発進は難しいかも、と思わせる中で、結構な空転を許容しながらも動き出して登っていける状況を何度か経験し、過剰に出力を絞り込まないトラクション制御の在り方とともに、「これはなかなかだ」と思わせてくれた。

低ミュー路ではアンダーステアが顔を出す

一方で、ハンドリングには明確な影響をもたらしている。ドライ路面であれば、普通にドライビングをしている限り、普通に曲がるように感じさせるが、雪道など低ミュー路になると、いかにも頭の重さを知らしめるアンダーステアが顔を出すようになる。

コーナーへの進入では、そもそも前輪の接地荷重が大きいことに加えて、モーターのトルクコントロールにより一瞬前荷重とさせるGベクタリングコントロールが有効に働くが、そこから先は、フロントヘビーによる慣性と、電動駆動車でよく経験する、コーナー出口に向けてのごく軽いアクセルオンでも、モーターのトルクが瞬時に高まる特性と相まって、ドライバーが想定していた以上のアンダーステアに転じたりする。正直、雪道のコーナーにおけるコントロール性は、感心するものではなかった。

これは、低ミュー路なので、低い速度域、低い横G領域でもわかりやすく生じたものだが、基本特性としてドライ路面でも同じということ。箱根でのワインディングでも、高い横G領域に持ち込むとアンダーステアが強いこと、ドライ路面ではそうした際の前輪への負荷が大きいこともよく知れた。

反面、車重が増したこともあり、乗り心地には落ち着きも得られているし、直進安定性も、ACC使用時のレーンキープアシストが車線間を右に左にふらふらとしたがる不出来を別とすれば悪くないなど、普段使いの領域では快適性を備えた走りを得られている。

日常の足のPHEVとして使うなら長所が上回る

では、このMX-30ロータリーEVというクルマをどう捉えるべきか。あくまでもPHEVとして、日常は大半をEVとして走らせることができる使用環境、移動距離であれば、REの燃費の悪さもそれほどデメリットにならないだろうし、そのうえで長距離移動の際の安心感も備えていることになる。また、急速充電を備えたことで、出先でもちょっとした合間に満充電まで可能なため、EVとして走らせることができる距離が稼げることも強みとなるだろう。

そうしたことを勘案した上でも、シリーズハイブリッド用に開発された8C型REの燃費性能は褒められるものではなく、そのうえ重量においても、また音の面でも苦労していることを知れば、目的と手段のプライオリティが逆転しているようにも思えてしまう。

ただ、いちクルマ好きの立場から、とさせてもらえるなら、現状のSKYACTIV-Xとも同様に、これはもうマツダのロマンとして見守っていきたいと思わせるところが、なんとも悩ましいところなのだ。

■MAZDA MX-30 Rotary-EV
マツダ MX-30 ロータリーEV

・車両価格(消費税込):423万5000円~
・全長:4395mm
・全幅:1795mm
・全高:1595mm
・ホイールベース:2655mm
・車両重量:1780kg
・エンジン形式:水冷1ローター(8C-PH型)
・排気量:830cc
・エンジン配置:フロント
・駆動方式:FF
・変速機:CVT
・エンジン最高出力:72ps/4500rpm
・エンジン最大トルク:112Nm/4500rpm
・モーター最高出力:170ps/9000rpm
・モーター最大トルク:260Nm/0-4481rpm
・公称燃費(WLTC):15.4km/L
・ラゲッジ容量:350L(BOSE付車は332L)
・燃料タンク容量:50L
・サスペンション:(前)マクファーソンストラット、(後)トーションビーム
・ブレーキ:(前)ベンチレーテッドディスク、(後)ディスク
・タイヤ:(前&後)215/55R18(ベースグレード)

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