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どうしてシトロエン「2CV」が2400万円も…!? エンジンを前後に2基搭載した「サハラ」は695台しか生産されなかった超レアモデルでした

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2024 Courtesy of RM Sotheby's

2400万円超えの落札価格は、希少性と象徴性の表れ?

先ごろRMサザビーズ「MONACO 2024」オークションに出品されたシトロエン2CV 4×4サハラは、なかなか魅力的なヒストリーを辿ってきた個体と言えよう。

まずは1965年11月にファクトリーで完成したのち、同月には初代オーナーの名義で登録されたことが、今回のオークション出品にあたって添付されたファイルでも閲覧可能な当時の資料によって証明されている。

くだんのファーストオーナーは、マルセイユから南仏アヴェロン県の田舎町ヴィルフランシュ・ド・パナへ移り住んだ医師、ピエール・レイナル。彼は、素朴な田園地帯の患者を訪問するために、サハラのオフロードにおける多用途性を必要としていたと考えられており、実際レイナル医師は、サハラから「レンジローバー」に乗り換える1980年代まで、あらゆる天候でこのサハラを愛用し続けたという。

そののち、2020年2月にオークション出品者でもある現オーナーが手に入れるまで、この2CVサハラは2010年に一度だけ所有者が代替わりしているものの、その間にはほとんど使用されることはなかったようだ。

こうして現オーナーの所有となった2CVサハラは、一見したところの見栄えは悪くなかったそうだが、やはり細部を観察すればくたびれた状態であったため、抜本的なレストアに着手されることになった。

ボディはいったんシャシーパンだけの状態まで分解され、鈑金修理と再塗装が施されたほか、エンジンとギアボックスは取り外してオーバーホール。また、クラッチとブレーキは新品に換装し、サスペンションとランニングギアも正しい部品に交換された。くわえて簡素な内装はすべてはぎ取って張替え、ハンモック式のシートも一新された。

これらの作業については、外観とメカニズムの両面で入念なオーバーホールを受けたことが、豊富な請求書とレストア時の写真によって証明されている。

ところが、このレストアが完了したあとにもあまり走行してなかったようで、RMサザビーズ社の公式カタログが作成された際、2CVのオドメーターは「4万492km」を指していたが、これは正しい数値であると推測されているようだ。

この2CV 4×4サハラは、当時の初年度登録証と保険証のコピー、この個体がマッチングナンバーのボディ/シャシー、フロント/リアの両方のエンジンを保持していることを確認するシトロエン本社発行のファクトリーデータ、入念なレストアを証明する多くの請求書とレストア写真とともに、魅力的なフランスの歴史を物語る、希少かつ実用性の高いクラシックカー。そんなキャッチコピーとともに、RMサザビーズ欧州本社と現オーナーは、10万~12万ユーロのエスティメート(推定落札価格)を設定した。

そして迎えた競売では14万3750ユーロ、現在の為替レートで日本円に換算すると、約2440万円という驚くべき落札価格で、競売人のハンマーが高らかに鳴らされることになったのだ。

現在の国際クラシックカーマーケットにおいては、同時代のシトロエン2CV「AZ」が、高いものでも2万ユーロ前後で取り引きされているのと比べると、やはり「サハラ」は特別と認めざるを得ないだろう。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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