8年間のタイムラインが繊細なディテールによって施される
サイドミラーには、ブガッティとクルマを生み出したフランスの国旗が施される。グリルはアトランティックブルーで仕上げられ、特別なホースシューメッシュを装備する。このハイパーカーは最高の職人技によって、シロンの8年間のタイムラインが繊細なディテールによって施される。
シロンはブガッティの「フォーム・フォローズ・パフォーマンス(形態はパフォーマンスに従う)」のエトス(思想)を具現化し、これまで想像もできなかった基準を追求したモデルであった。シロン、シロンスポーツ、シロンピュアスポーツ、シロンスーパースポーツなど評論家に称賛されたファミリーラインアップに加えて、シロンスーパースポーツ300+やレ・レジェンド・デュ・シエルのような特別モデルでさえも、これまでの自動車の常識を塗り替えた。
AMWノミカタ
1999年のフランクフルトモーターショーで「シロン・コンセプト」として登場したクルマは2000年のパリサロンで「ヴェイロン16.4」として正式発表されたが、1001psのパワーに1250Nmのトルク、そして400km/hを上回るトップスピードは衝撃的で、「ブガッティは異次元のクルマ」という印象を人々に与えた。
そして、2016年に発表されたシロンは、いとも簡単にその馬力を1.5倍の1500psまで引き上げ、シロンスーパースポーツ300+のプロトタイプに至っては2019年に490.484km/hという世界最高速記録を樹立した。もはや異次元のクルマだけではなく異次元の乗り物になるレベルである。
このひとり勝ちのシロンの伝説が終焉を迎える。ブランドは新たな章として、
「比類なきパフォーマンス、卓越性に浸るラグジュアリーさ、そして最も優れた素材と最も素晴らしいノウハウを用いたテーラード・クラフトマンシップへの道」
と語るが、パワーを制し、パフォーマンスを制した王者が放つ余裕のコメントに聞こえる。次に目指すのは自動車における究極のビスポークラグジュアリーの世界なのだろう。オートクチュール文化に裏打ちされた究極の美をこれからも見せて欲しい。