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タクシー専用モデル日産「クルー」はどうしてドリフトユーザーに注目されたのか? 客が乗降しやすく快適に過ごせるための工夫とは

日産クルー:タクシー仕様

ドリフトユーザーからも注目を集める時期があった

タクシー専用モデルとして日産「ローレル」(C32)と「ブルーバード」(910型)の後継として1993年にデビューした日産「クルー」。タクシーとしての利便性を高めるために、左リアドアの開口寸法と最大開き角度を拡大しているのがポイントです。のちの1994年には、自家用向けグレードの「クルー サルーン」も登場しました。

よりタクシー用途に特化したモデルだった

現在では街中で見かけるタクシーもトヨタ「ジャパンタクシー」に代表されるトールタイプやミニバンタイプが増えてきているが、ひと昔前までタクシーと言ったら有無を言わさずセダンタイプのボディであることが当たり前だった。そのため、各メーカーもセダンにタクシー用途で使われることを前提としたグレードを用意することが当然だったのだが、日産が1993年7月に発表した「クルー」は、まさにタクシーとして使われることを主目的として生まれたモデルだったのである。

タクシー用途を主とした専用車は1989年にマツダがリリースした「カスタムキャブ」が存在しており、古くは1955年にトヨタがリリースした「トヨペット マスター」なども存在しているが、日産クルーはよりタクシー用途に特化したモデルとなっていた。

その特徴は当時のセダンとしては異例なほど高められた全高や、四隅のガラスをできるだけ立てて配置することで、小型タクシー枠内にボディサイズを収めながらも、ワイドかつロングな室内空間を実現したスタイルが挙げられる。さらに基本的に顧客が乗降する左後部のドアを前後方向に50mm拡大した大型ドアとするなど、見た目よりも使い勝手を優先した合理的なスタイルとなっていたのである。

そんなクルーだけに当初は2LのLPG仕様と2.8Lのディーゼル仕様のみのラインアップとなっていたのだが、1994年1月には一般ユーザー向けに「クルー サルーン」シリーズを追加する。こちらは5ナンバーサイズであまり華美でない、質実剛健な正統派セダンを求める年輩ユーザーをターゲットとしたもので、新たに2Lの直列6気筒ガソリンエンジンであるRB20E型エンジンを搭載していた。

そしてこのクルー サルーンのクラシカルなキャビンのスタイルに目を付けたミツオカが、1996年2月に「ガリュー」をリリース(1999年末にY34ベースのガリューIIが登場したのちは、ガリューIとして併売)。こちらは1960年代ごろのイギリス車をモチーフとしたエクステリアに変更されていた。

自家用車向けのクルー サルーンは2002年夏ごろで姿を消しているが、ビジネスカーとしてのクルーは2009年夏ごろまで生産が続けられ、タクシーや教習車、パトカーといった用途に幅広く使われ続けていた。

このように、もともとは真面目なビジネスセダンとして誕生したクルーであったが、2000年代初頭にはすでに希少となった5ナンバーサイズで、FRレイアウトを持ち純正で5速MTのラインアップを持つモデルとして、ドリフトユーザーからも注目を集める時期があった。

とくにサルーンのガソリンモデルはRB20型エンジンを搭載していたため、上位エンジンであるRB25系やスカイラインGT-Rに搭載されていたRB26DETTを換装するチューニングなども存在していたが、近年ではベース車自体が希少となってきたこともあってか、そういったチューニング車両を見かける機会は激減している。

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