ポルシェから移籍してベントレーの新CEOに就任
2014年からポルシェのモータースポーツ部門の責任者、そして2019年からは「911」や「718」の製品ラインの責任者を担当していたDr.フランク=シュテフェン・ヴァリザー氏がベントレーに移籍し、2024年7月1日付けで会長兼CEOに就任すると発表され世間を驚かせています。いったいどのような人物なのでしょうか。
技術畑出身でポルシェを代表する人物
Dr.フランク=シュテフェン・ヴァリザー氏はアストンマーティンへ移籍したエイドリアン・ホールマーク氏の公認としてポルシェからベントレーに移籍し、2024年7月1日付けで会長兼CEOに就任することとなった。
シュトゥットガルト出身のヴァリザー氏は、1969年生まれの現在54歳で、燃焼エンジンと技術管理を専門とする機械工学を学んだ後、1995年にインターン、大学院生、博士候補生としてポルシェに入社した。2003年から2008年までモータースポーツ戦略担当ゼネラルマネージャーを務め、アメリカン・ル・マンシリーズにおけるポルシェ「RSスパイダー」のキャンペーンを成功に導いた立役者のひとりであり、2010年に未来志向のスーパースポーツカーである「918スパイダー」の開発を統括するプロジェクトリーダーに就任し、ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェで6分57秒という市販スポーツカーのラップレコードを持つ、ポルシェの画期的なスーパースポーツカーの開発と生産を担当することとなった。
2014年からはモータースポーツ部門の責任者として名を馳せ、2019年初頭には「911」と「718」の製品ラインの責任者を引き継ぐ。2022年からは、ポルシェの車両開発全般(車両アーキテクチャと特性)を担当する、いわばポルシェを代表する人物であった。
アウディAGの取締役会会長であり、フォルクスワーゲングループ内のアウディ、ランボルギーニ、ベントレー、ドゥカティで構成されるブランド・グループ・プログレッシブの責任者であるゲルノット・デルナーは、
「ベントレーがラグジュアリーセグメントをリードするプロバイダーとなるための道を歩んでいくうえで、Dr.フランク=シュテフェン・ヴァリザーの長年の経験とラグジュアリーセグメントに関する知識は非常に貴重なものとなるでしょう」
と語る。また、ヴァリザー氏も、
「私はこの仕事に大きな尊敬の念を持って臨んでおり、ここ数年素晴らしい業績を示しているクルーのチームの一員になることを楽しみにしています。自動車業界の継続的な変革は、ベントレーにとっても大きな課題となりますが、私はチームとともにこの課題に取り組むことを嬉しく思っています。私は、ベントレーが今後もラグジュアリーセグメントのスタンダードを築き続けることを確信しています」
とコメントしている。電動化に向かうベントレーではあるが、ヴァリザー氏によってどのように導かれてゆくのであろうか。
AMWノミカタ
Dr.フランク=シュテフェン・ヴァリザー氏のベントレーCEO就任に関する発表は、とりわけポルシェファンには大きな驚きとなっているようだ。ネットでのコメントなどを見ると、ポルシェを去るヴァリザー氏を惜しむ声が数多く見られる。逆に言えばそれほど優秀な人物をベントレーは迎え入れたことになる。
2030年の完全電動化にひた走るベントレーではあるが、BEVの開発が遅れているというニュースもある。技術畑を歩んできた彼の経験によって電動化を加速化することがまずは大きな仕事となるのだろう。しかし内燃エンジンを学び博士号を持つ彼の、エンジンに対する熱い想いは想像に難くない。そういった意味で現在のBEV一辺倒の風潮の中、最も冷静に将来の舵取りができる人物なのではないかと思う。