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大学への通学2時間でドラテク磨き!「若者のクルマ離れ」がウソのような「軽自動車レース」に青春を捧げた20代男子の英才教育とは

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TEXT: 佐藤 圭(SATO Kei)  PHOTO: 佐藤 圭(SATO Kei)

  • アルトと川越さん
  • 東北660選手権はクラスを問わず6点式を超えるロールケージが義務とされている。リアシートや不要な内装はすべて取り外して軽量化
  • アルトは純正タコメーターがないため定番のスズキ「ワゴンR」用を移植した。ダッシュボードにはコンディションを把握する3連メーターが並ぶ
  • シートベルトも3インチ幅で4点式以上がレギュレーションにより義務化。HPIの製品は脱着や長さの調節がスムーズにできると人気だ
  • エンジンはレギュレーションに沿ってノーマル。バッテリーやボンネットの軽量化など、手を入れるべきポイントはまだまだ残っている
  • エアクリーナーの交換はクラスを問わずに自由。多くのエントラントと同じく剥き出し型をチョイスし、パイプには遮熱テープを巻く
  • マフラーはちょっと音量が大きいと感じており、遠くないうちに交換する予定だ。またアーム類は腐食している部分があるので新品に
  • 冷却系のリフレッシュも今年のテーマに掲げている。エアコンの取り外しが認められていないので夏場のレースは水温が厳しいはずだ
  • スポーツランドSUGOでは必須といえるスピードリミッターカット。上位陣はバックストレートの最高速が150km/hを軽く超えてしまう
  • 足まわりはクルマを引き取ったときのセッティング。まずはクルマに慣れることを優先した結果で、今後セッティングを煮詰めていく予定
  • デビュー戦で熱ダレを体感したというブレーキ。とはいえ大容量キャリパーまでは必要なく、パッドの選択と乗り方で対応できる範囲
  • 同じ鈴木自工から参戦する先輩に譲ってもらったブリヂストン「ポテンザRE-71RS」。3クラス移行を考えるとセカンドラジアルに慣れることも必要か?
  • エアクリーナーやラジエターに冷えた外気が当たるよう、グリルの内側を粗いメッシュに交換している。HA23アルトでは定番の手法
  • リアには鈴木さんらが仙台ハイランドのKカー耐久に参加していたときのチーム「奥州子供改」ステッカー。いずれは往年のカラーリングを自分の愛車でも再現したいと考えている
  • 前日が人生初のサーキット走行とは思えないほど落ち着いて走れたデビュー戦。片道2時間の通学で身に付いた技術は確実に活かされている
  • いろいろな縁が重なって手に入れた愛車。今シーズンはビギナー限定で4回までエントリーできる5クラスで、レースに慣れつつウデを磨いていく

幼少期に見た軽自動車レースに心を奪われた

若者からベテランまで、多くのレーサーが参戦する軽自動車だけのレースが「東北660」シリーズです。今回は、レースデビューしたばかりの若者をご紹介。走る楽しさはもちろん、レースの厳しさなども経験し、成長が楽しみな選手のひとりです。大学時代に行っていたというドラテク向上のための練習方法とは?

軽自動車レースを熟知したプロショップからサポートを受ける

若者のクルマ離れなんて言葉が陳腐に感じるほど、学生や20代のエントラントが多い東北660選手権。2023年シーズンに行われた特別戦でデビューを果たし、2024年から本格的に参戦する川越嗣土選手もそのひとりだ。

両親を筆頭にクルマ好きの親族に囲まれて育った彼が、初めてサーキットに連れていってもらったのは3~4歳のころ。なかでも心を惹かれたのは仙台ハイランドのKカー耐久レースで、熱いバトルを繰り広げる軽自動車の姿が記憶に残っているという。

地元の高校を卒業した川越選手は宮城県の大学に進学。スポーツランドSUGOが近いこともあって東北660シリーズの存在を知り、自分も同じステージで戦いたい思いが募ってレースカーを探していたところ、憧れだったKカー耐久にも参加していたプロショップ「鈴木自工」と知り合う。

代表の鈴木 茂さんも東北660選手権で活躍していることもあり、どんどん軽自動車レースの面白さと奥深さに魅了されていく。そんな彼が手に入れたマシンはHA23型スズキ「アルト」で、かつて東北660選手権で使われていたレースカー。鈴木さんらのサポートを受けながらデビュー戦を2023年の特別戦に定め、レース前日の練習走行で初めてのサーキット走行を経験する。

結果は軽いコースアウトこそあったものの、2分6秒台と初走行ならば上出来なタイム。車載動画でライン取りやシフトチェンジのポイントを勉強し、実際に走っては自身のドライビングに合わせて修正を加えていく。

走行シーン

片道2時間の通学でドラテクを学ぶ

人生初のサーキットでありながら落ち着いて走行できたのは、幼少期から慣れ親しんでいる場所という理由だけではない。大学4年のとき実家へ戻った彼は片道2時間をかけて宮城県まで通学しており、その際に父から運転に関する何かしらの「テーマ」を与えられていた。ブレーキに負担をかけないことを意識する、毎日の所要時間をできる限り揃えるなど、まさに英才教育といっていい1年間だった。

あえてワインディングの多い一般道を使ったのも、運転の基礎を身体で覚えさせるためだったのだろう。クラッシュという洗礼も受けた翌日のレースは、途中でドライバー交代がある60分のセミ耐久。タイヤやブレーキの「タレ」を体感させるという周囲の親心で、予選を担当したのに加えて決勝も50分はひとりで走り抜いた。どんどんグリップが落ちて滑りやすくなるタイヤや、止まらなくなるブレーキを実感できたと川越は話す。

リザルトは完走したなかで最下位だったとはいえ、スタート前の緊張感やライバルたちとの駆け引き、タイヤやブレーキを持たせるマネージメントなど、レースの本番でしか得られない経験は多かったはず。本格的なデビューとなる今シーズンはタイムや順位はもちろん、愛車を自分の好みにセットアップしていくことも大きな目標だ。さらにボンネットやリアゲートの軽量化や、排気系のリメイクも視野に入れている。

そして目標は参加するクラスこそ違えど、鈴木さんの前でチェッカーを受けること。東北660選手権に踏み込むきっかけを作ってくれた、そしてサーキットの楽しさを教えてくれた憧れの人に、成長した自分の姿を見せる日はそう遠くない!

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  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 1974年生まれ。学生時代は自動車部でクルマ遊びにハマりすぎて留年し、卒業後はチューニング誌の編集部に潜り込む。2005年からフリーランスとなり原稿執筆と写真撮影を柱にしつつ、レース参戦の経験を活かしサーキットのイベント運営も手がける。ライフワークはアメリカの国立公園とルート66の旅、エアショー巡りで1年のうち1~2ヶ月は現地に滞在。国内では森の奥にタイニーハウスを建て、オフグリッドな暮らしを満喫している。
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