テストデーで待望のレースマシンが走行開始
伝統のル・マン24時間レースを毎年取材している池ノ内みどりさん。テストデーではどのような取材が行われるのか、その模様をリポートします。逃げ場のない公道の走行は危険と隣り合わせですが、それは取材する側も同じです……。池ノ内さんを襲った悲劇とは?
赤旗中断時の手順などレース運営の確認作業も行われる
ル・マン24時間耐久レースの決勝本番に向けて開催された、事前の走行テスト。テストと言ってもいわゆる練習走行ですが、朝からサーキットへ向かう道路は大渋滞でちょっと焦りました。
朝方は少しひんやりしていたものの、好天で夏のようなル・マンはすぐに汗ダクになってしまいますが、梅雨の日本の湿度を思えば、湿度の低いフランスは随分と過ごしやすい気候だと思います。
ハイパーカークラスの初年度から参戦するTOYOTA GAZOO Racingに加え、2023年からはポルシェ、フェラーリ、キャデラック、プジョーが加わり、一気に華やかになったハイパーカークラス。2024年はさらにアルピーヌ、BMW、ランボルギーニ、イソッタ、フラスキーニが加わり、かつてのグループC時代を思い出すトップクラスの賑わいです。そりゃファンのみなさんもテスト走行のスタートが待ちきれませんよね。
私たちメディアで働く者でさえ、毎年訪れるこのル・マンは特別です。ル・マンのみならず、ニュルブルクリンクとスパのヨーロッパ3大24時間レースは、ヨーロッパの自動車文化やその発展に大きく貢献し続けているだけではなく、レースを通して自動車の楽しみを伝承してくれている大切なイベント。ファンのみなさんと同様に、私もこのヨーロッパ3大レースへ毎年取材に行くのをとても楽しみしています。
さて、テストセッションの最中には、各チームが予定しているテストプログラムをこなすだけではなく、レース全体としてレッドフラッグになった際やセーフティカー導入になった際の練習も行われます。今年はGT3マシンが新規に導入されましたが、LMP2やハイパーカーとの速度差も大きいため、レース本番にはさまざまなアクシデントが起きる可能性があります。そのため、より安全にレースができるよう、これらの練習は非常に重要なポイントです。
セッションの合間にファンエリアを覗いてみたら一部オープンしていました。ル・マン限定商品を手に入れたい私はキョロキョロ。BMWのショップではそれらしきモノはなかったのが残念でした。ポルシェ、アルピーヌ、ランボルギーニあたりに何かステキな商品がないか期待したのでした。
取材するメディアチームも注意しないと……
午前中のセッションは徒歩圏で行ける場所で撮影し、午後からはメディアシャトルに乗って、有名なテルトルルージュへ。めちゃくちゃ恥ずかしいのですが、フランス語の発音ができず、シャトルを手配してくださる方に、どこへ行きたいの? と聞かれ、テルトルルージュと何度言ってもなかなか通じず、お互い大爆笑!「ルージュ」の部分でご判断頂けたようです。
ル・マン24時間レースで使用されるコースの一部は、普段は一般道でもあります。私ももちろん利用していますが、やはりそんな公道をレーシングカーが走行するというのは不思議な気分になります。ここをフルスロットルで走るの? なんて思って。
レースが終了した翌日の月曜日はコースの公道部分を自走してからドイツへ帰るのですが、ニュルやスパとはまた違ったチャレンジングなコースであることをいつも実感し、ドライバーにはあらためて感心してしまいます。公道ですからエスケープゾーンなんてものはありませんしね。
テルトルルージュの次にはインディアナポリスへ。ここは事故が起きやすい場所で、私がそこに滞在していた1時間半ほどの間にハイパーカーとLMP2のそれぞれ1台がブレーキングのタイミングがほんの少し遅れてタイヤバリアに正面から突っ込んでいきました。
事故はレーシングカーのみではありません。コースサイドで写真を撮っていた時に、後ずさると……右足が水溜りにドボン! 意外と深くてバランスを壊してカメラを持ったまま転倒。お尻近くまで右半身だけびちょぬれと腐ったお水でヌルヌル、悪臭……。脚が痛いなあと思って見てみたら、15cmほどはある大きな青あざになっていました。