カウンタックをイメージさせるデザインが採用
実際にドイツのインゴルシュタットにある、アウディ・スタイリング・センターで、のちに「ムルシエラゴ」と命名されるL147をスタイリングしたのは、ルーク・ドンカーヴォルケ。フロントマスクの造形は、ドンカーヴォルケ自身、ステルス戦闘機からイメージを得たと語っているし、また通常時にはカーボン製のパネルで覆われるエンジンルームは、冷却の必要が生じた場合にはVACSと呼ばれる可変エアフロー冷却システムをオープンさせる仕組みを採り入れるなど、こちらは先進性と同時にあの「カウンタック」をイメージさせるデザインが採用されている。
リアウイングも速度によってその角度が変化する可変式。Cd値はその角度によって0.33~0.36まで変化した。そして2001年9月に開催されたフランクフルトショーにおいて、L147は正式にムルシエラゴとして世界初公開の瞬間を迎えることになるのである。
搭載されたV型12気筒エンジンは、6192cc仕様のDOHC 48バルブ。ディアブロの最終型と比較すると約200ccの排気量拡大を実現した、オールアルミニウム・ブロックのエンジンである。潤滑方式をドライサンプ化したことでエンジンの搭載位置をディアブロ比で50mm低下したほか、可変ジオメトリーインテークシステムを採用するなど、実用域での扱いやすさと高速域でのパワーフィールをより魅力的にすることにも成功した。ちなみに最高出力/最大トルクは、580ps/650Nm。トランスミッションはついに6速化され、駆動方式はセンターデフにビスカスカップリングを使用した4WDのみとなる。
ここで紹介するムルシエラゴは、RMサザビーズのモナコ・オークションに出品された2002年式のモデル。2002年モデルは442台のみが生産されており、アランチオ・アトラスと呼ばれるオレンジ色のボディカラーは、ムルシエラゴのコマーシャルカラーのひとつでもあった。
現在までの走行距離はわずかに2万5278km。ファーストオーナーは、ドイツのシュトゥットガルトに在住する人物で、2002年6月17日にこのモデルの納車を受け、2005年までそれを所有。その後はチェコのプラハやオーストリアのウィーンへと渡り、2024年に再びドイツの地へと戻ってきた履歴が確認されている。もちろんその間の整備やメンテナンスはきちんと行われている。
RMサザビーズは、このムルシエラゴに32万~37万ユーロのエスティメート(推定落札価格)を掲げオークションに臨んだが、落札価格は32万5625ユーロ(邦貨換算約5360万円)という数字で落ち着いた。はたしてムルシエラゴの価値は、これからどう変化していくのだろうか。ランボルギーニのファンとしては見逃せないところだ。