ドイツ在住者の目線でフランスのクルマ事情をリポート
ル・マン24時間レースを2024年も取材してきた池ノ内みどりさん。テストデーが終了すると、予選と決勝の前に一度休息日を挟みます。今回はこの休日を利用し、フランスの自動車事情を調査。パリとル・マンの違いなどを交えて紹介します。はたしてル・マンは走りやすい? それとも走りにくい?
当たり前だがフランス車の多さに驚き
長いル・マン24時間レースのレースウィークですが、公式テストがあった翌日から2日間は基本的に休息日です。チームクルーはもちろん、レースの安全を見守ってくれるオフィシャルもすでに相当お疲れの模様。私も久々に目覚ましをセットせずにたっぷり睡眠を取りました。
フランス自体はすごく大きな国で、交通事情は首都パリとル・マンのような地方都市では少し違うかとは思いますが、旅行者としてクルマで隣国ドイツからやって来た私の目線で、フランスの地方都市であるル・マンのクルマ事情をレポートしてみたいと思います。
ル・マンではホテルが少ないうえに、レースウィークは非常に値上がりしますので、私のような弱小フリーランスが泊まれる金額のカテゴリではありません。そもそも空き部屋さえもありませんので、民泊のお世話になっています。
お家の近辺は無料の駐車エリアがあり、空きスペースを探して毎日停めさせて頂いています。白線が引かれて区切ってありますので、いわゆるパリのように前後のクルマにバンパーを当てて縦列駐車したり、出る必要はありませんので私は嬉しいです。
当たり前ですが、フランスではやはりプジョーやルノー、シトロエンが圧倒的に多く、ちょっと新鮮ですね。少し意外だったのは、2023年よりもドイツ車を見かける割合が増えたように思います。フランスの方がドイツ車にどんな印象を持っているのか気になります。
ドイツにはドイツ・フォードがあるせいか、ドイツ独自のフォード車も多く走っているのですが、フランスではそれらはほとんど見かけません。また、韓国勢に押されて年々減っている日本車ですが、フランスでは韓国車よりも日本車の方が多く走っています。
カングーやベルランゴには実用性を求めて乗る人が大多数
日本ではとてもオシャレな方々に人気なルノー「カングー」やシトロエン「ベルランゴ」。この手のちょっとしたミニバンは、運転しやすいのでしょう。しかし、ドイツでは小さなお子さんがいる主婦層や、リタイア後のシニアが乗っているイメージです。
商業タイプはフランスもドイツもまさに同じで、職人が乗っているクルマ。なので、ヨーロッパ人にカングーやベルランゴは日本ではオシャレさんが乗るクルマというと、めちゃくちゃビックリされます。フランスのオシャレさんはどんなクルマに乗っているんでしょうね。そもそも個性や個人を尊重する国で、他人と同じクルマが欲しくなるのでしょうか? お国柄で愛車事情も違うのかもしれません。
フランス=オシャレな国のイメージなので、カラフルなクルマが多のかな? と想像していましたが、意外とクルマの色は地味で白・黒・グレー・シルバー・青が大半。ですが1年ぶりに来ると少しビビッドカラーが増えた感じがしました。
郊外の一軒家にお住まいの方なら大型のSUVなどを所有することも可能ですが、狭い道が多いうえ、狭い道路脇に縦列駐車をする必要があるのでコンパクトカーが多いのも納得できます。ところで、フランス人はオープンカーが嫌いなのでしょうか。ほとんど見かけないのはなぜでしょうか?
取材期間中、ル・マン市内近辺を毎日のように運転していたのですが、とくに困ったことはなく運転しやすいと感じています。パリのように外国ナンバーのクルマをなかなか入れてくれないということもありませんし。この24時間レースのレースウィークは、私のような外国人であふれかえるので、市民も気を遣ってくださっているのかもしれません。
フランスの住宅街にある50km/hゾーンには所々にオービスがありますが、そもそも道幅も狭くてレースウィークには混んでいることもあり、スピードを出す機会はまったくありません。ですので、運転に慣れている方なら、日本から初めて来ても安心してスムーズに走行することができるでしょう。もしル・マン24時間レースを現地で観戦する機会に恵まれたのなら、ぜひ自身で運転されてはいかがでしょうか。