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「ブリストル研究所」って何? 「ワクイミュージアム」で知られる通人・涌井清春氏が語る「水墨画の老人」の境地とは【special interview】

「ブリストル研究所」って何? 「ワクイミュージアム」で知られる通人・涌井清春氏が語る「水墨画の老人」の境地とは【special interview】

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 神村 聖(KAMIMURA Satoshi)/武田公実(TAKEDA Hiromi)

  • 東京都文京区弥生、東京メトロ根津駅からさほど遠くない場所にひっそりと開かれている「ブリストル研究所」
  • 故・川上 完さんの「ブリストル406」を預かったのを契機に、涌井氏はブリストルの探求をスタート
  • ブリストルの第1作である「400」を新たに英国から輸入した
  • ロールス・ロイスおよびベントレーの世界的ディーラー兼コレクターとして知られ、かつて「ワクイミュージアム」もオープンさせた涌井清春氏の新たなチャレンジ
  • 無塗装でアルミ地肌むき出しのブリストル401
  • 航空機メーカー出身ゆえの軽合金ボディの技術が窺われる
  • 「ブリストル・カーズ」は第二次世界大戦終結後の1945年に英国で誕生
  • ブリストル持ち前の航空機基準を融合することで得られた高度に緻密なつくりが特徴
  • イギリスおよび旧英連邦以外の国では車名さえあまり知られていないのが実情ながら、クラシックカーの世界では独自のポジションを築いている
  • 航空機メーカーとして「ブレニム」や「ボーファイター」など数々の名機を輩出してきた「ブリストル・エアプレーン・カンパニー」が前身
  • ブリストルに関するもので英語表記ではない文献は、知る限りでは皆無だった
  • 「本がないなら作ってしまおう」と、ブリストルに関する歴史書も自費出版している
  • 故・川上 完さんの「ブリストル406」を預かったのを契機に、涌井氏はブリストルの探求をスタート
  • 「極東で古いブリストルを見つめている人間がいる、という遠い灯台のような存在が、遅ればせながら今からでもあってもいいのではないか……? と考えるようになったのです」
  • 2024年4月12日~14日 に幕張メッセで開催のオートモビルカウンシル2024でのブリストル研究所ブース
  • ブリストル研究所内に展示される無塗装の「401」と、研究所代表である涌井清春氏

英国以外では知名度ほぼ皆無のクラシックカー

先ごろ千葉・幕張メッセで開催された「オートモビルカウンシル2024」において、やたらと個性の強いスタイリングの旧い英国製クーペを、しかもアルミ地肌むき出しで展示するという独特のブース展開でにわかに注目を浴びた「ブリストル研究所」。しかし、その実態をご存知の方は、まだまだ非常に少ないのが実情でしょう。そこで「主任研究員」として創立から参画している武田公実氏が、この知られざるクラシックカーとその小さな「ディーラー」について解説するとともに、研究所代表である涌井清春氏からも、あらためてお話を伺ってみました。

クラシックカーディーラーではなく、研究所とした理由とは?

日本で唯一、全世界でも数少ないブリストル製クラシックカーの専門ディーラーとして活動する「ブリストル研究所」は、もともとロールス・ロイスおよびベントレーの世界的ディーラー兼コレクターとして知られ、かつて埼玉県加須市に「ワクイミュージアム」もオープンさせた涌井清春氏が新たなチャレンジとして創業した、ちょっと変わったクラシックカーディーラーである。

いや……、「ディーラー」という呼び方は、ちょっとそぐわないかもしれない。まずは前提として、「ブリストル」というブランドは日本ではほとんど未知の存在であり、それは涌井氏や、20年以上にわたって同氏と行動をともにしてきた筆者とて大同小異である。

だから、顧客とともに「研究」しながら、ブリストルの創った素晴らしいクルマたちを日本の自動車通人たちに少しずつ知らしめていこうと目指す「研究所」と命名したのだ。

航空機メーカーを前身とする高級乗用車メーカー

ここで今いちど、ブリストルという自動車ブランドの概要について、少しご説明したい。

第二次世界大戦が終結した1945年。それまで航空機メーカーとして「ブレニム」や「ボーファイター」など数々の名機を輩出してきた「ブリストル・エアプレーン・カンパニー」の社主、ジョージ・スタンレー・ホワイト卿は、戦後の航空機生産縮小で余剰となってしまった優秀なスタッフたちに職務を用意するために、高級乗用車の生産に乗り出すことを決意。その本拠でもあるブリストル市近郊の田舎町フィルトンに、新たに「ブリストル・カーズ」社として分社を果たした。

創成期のブリストルは、当時最高の技術者のひとりであるフリッツ・フィードラー技師をドイツから英国に招聘し、技術部門の長に据えた。彼が戦前のBMWで育んだテクノロジーに、ブリストル持ち前の航空機基準を融合することで得られた高度に緻密なつくりに、英国製高級車の伝統を体現したインテリアを両立するなど、独特の魅力を湛えている。

その反面、土着性がきわめて高く、イギリスおよび旧英連邦以外の国では車名さえあまり知られていないのが実情ながら、それでも「コニサー(通人)」のためだけにクルマを創るという稀有な姿勢から、自動車メーカーとしては休眠状態にある現在でもなお、クラシックカーの世界では独自のポジションを築いているのだ。

故・川上 完さんのブリストル406が、すべてのはじまりだった

いっぽうの「ブリストル研究所」のはじまりは、ワクイミュージアム館長だった時代の涌井氏が、2014年に惜しまれつつ逝去した自動車評論家、故・川上 完さんのご遺族からの依頼により、彼が長年愛用してきた「ブリストル406」をお預かりしたことまで遡る。

当初はワクイミュージアムの販売部門「ワクイミュージアム・ヘリテージ」にて、ロールス・ロイス/ベントレーたちとともに並べて展示し、完さんの歴史を引き継いでくれる新たなオーナーを探すはずだった。ところが、涌井氏いわく「趣味のいい一流のスポーティなクルマ。走りっぷりとクオリティの高さでは、世界が名車と称える“ベントレー Rタイプ・コンチネンタル”にも匹敵する」というブリストル406にどんどん惹かれてしまい、いつしか自らのコレクションに加えつつ探求してゆくことを決意する。

そこで涌井氏は、かつてロールス・ロイス/ベントレーに出会ったころと同じように入手可能な限りの文献を集めつつ、まずは個人的な研究としてスタートした。そしてそれらの文献から、ブリストル創業当時の関係者の思いを知ったうえで、あらためて自身のものとなったブリストル406を観察してみると、本で読んだ作り手の哲学がクルマに見事なかたちで反映されているさまを確認。ブリストルの深遠な世界に、さらにのめり込むようになってゆく。

ロールス・ロイス/ベントレーのオーソリティがブリストルの研究に注力

くわえて、1980年代末に創業し、2008年には「ワクイミュージアム」も開設した一連の事業を某大企業グループに譲渡し、身軽な立場となったことから心機一転。新しいチャレンジとして、ついにブリストルに注力することにした。

そこで、元「完さん」の406に追加するかたちで、以前から日本国内にひっそり生息していたという「401」を入手したほか、それまで世界唯一のブリストル専門ディーラーだった英国「SLJハケット」社と代理店契約を締結。そのショップからもう1台の406と、これまで日本上陸を果たしたことのなかったV8モデル「410」、そしてブリストルの第1作である「400」を新たに英国から輸入し、顧客に販売することにした。

さらには、ブリストルに関するもので英語表記ではない文献は、われわれの知る限りでは皆無だったこと、ワクイミュージアム時代にも、ロールス・ロイスおよびベントレーの歴史書を上梓した経験もあることから、「本がないなら作ってしまおう」と、ブリストルに関する歴史書も自費出版することになった。

そして、その本の製作のために日本国内のブリストル車の生息状況を調べてみると、やはり国内にはわれわれが把握しているもの以外には、数台程度しか存在しないことが判明。素晴らしい資質を持ちながら、やはり日本ではあまり知られていないブリストルを、わずかばかりでもお伝えしてゆきたいという思いを新たにすることになったのである。

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