自動車博物館巡りは楽しい!
世界の自動車博物館を巡ることをライフワークとしている原田 了氏。今回は、初のスウェーデン国内の自動車博物館を取材することができました。どんなクルマと出会えたのかお伝えしていきます。
初めての北欧、スウェーデンに興味津々
もうすでに15年を超えた海外の自動車博物館探訪の旅ですが、かつてはレースの取材仲間から、同業者でもある娘に「お父さんはまた海外暴走旅?」と揶揄されていたことを逆手にとって、「父さん海外暴走旅」「父さん今年も暴走旅」「父さんまたまた暴走旅」などとネーミングした海外の自動車博物館探訪記を、幾つかの媒体に寄稿してきました。
しかし今では「父さん…」ではなく「じいじ…」と改名する必要もあり。また正直言って躰がきつくなってきたこともあり、そろそろ着陸も考える必要が出てきました。そこで自動車博物館における大国をひと回りすることにしました。
2022年に足を延ばしたのはイタリアやコロナの前に訪れていた北米東半分とイギリスで、2023年はフランスとドイツ。そして今年2024年は行きそびれていたヨーロッパ各地の自動車博物館を取材し、7月から8月にかけては北米の西半分を回って大団円を迎えることに。まずは、初めて訪れる北欧の国、ボルボとサーブ、そしてスカニアでお馴染みのスウェーデンからスタートです。
初日から行き先を勘違いするロングトリップに
当初の予定では鈴鹿のSUPER GT第3戦が終わった翌6月3日(月)の夕刻に羽田から出国し、フィンランド・ヘルシンキを経由してデンマーク・コペンハーゲンに到着。レンタカーをピックアップして博物館を巡りながら北上していくスケジュールを組んでいました。スケジュールを組み立てるときは、まずは位置関係。スタートとなる空港から近い順に回っていくのを基本にしていきます。
そしてグーグルマップで距離と時間を考えながら、じゃあ初日の泊まりはこの辺りにしようか、と旅行サイトでホテルを決めていきます。ただし旅先では予想外のハプニングも多々あるので、宿(の候補)を決めても予約はその日の午後。スケジュールの進捗具合によって移動の合間に決めることが多いです。スマホって本当に便利です。
そこでコペンハーゲンに着いた日の午後に「ニッセ・ニルソン自動車博物館」(Autoseum – Nisse Nilsson Collection)を取材し、その夜はハルムスタッドのホテルに宿泊。翌日はムータラ自動車博物館(Motala Motormuseum)を訪ねる予定でした。空港での入国に手間取ることもあるので、初日はゆったりとしたスケジュールにしておきます。実際、コペンハーゲンの空港からニッセ・ニルソン自動車博物館までは約120km。クルマで1時間半余り。飛行機の空港着が朝の8時半だから、12時までには博物館に到着するはずです。
サイトで調べたところ収蔵台数などから3時間もあればひと通りの撮影は終了するはずで、博物館から約220km、クルマで2時間半余りですから夕方6時にはホテルにチェックインできる予定です。翌日のムータラ自動車博物館も同様に余裕たっぷりだったので、新たにチェックした博物館も組み入れました。
ところが……。一番安いプジョー「108」クラスで予約していたのに、どこでどう間違ったのか、1クラス上のオペル「コルサ」が配車されていたのです。
じつは今回の旅のもうひとつのテーマがオペル&ボクスホールの研究でした。なのでコルサの配車は願ったり叶ったりで、ちなみに次にイギリスで借りたクルマもボクスホールのコルサで、もう自分的には最高でした。もちろん気分だけじゃなくてクルマもね。それで最高な気分で空港を後にして気が付いたのは、携帯電話のプリペイドSIMを買い忘れたこと。これが痛かった。
海外取材で必携となっているのがナビゲーション。今回もこれがあるから、高を括っていたのです。ところが、スケジュール表をプリントアウトしていなくて、最初に訪れる博物館と2日目の博物館を間違えて記憶していたからもう大変。初日、空港を出てからホテルに到着するまで約890km、2日目にホテルを出てからその夜ホテルに到着するまで約700km。初っ端から大変なロングドライブを楽しむことになりました。もちろん、訪ねた2つの博物館は見事なもので、ロングドライブの疲れを一気に吹っ飛ばしてくれました。
スカニアは予想外の休館!
現地3日目の6月6日(木)は「スカニア博物館」(Scania Museum)を手始めに3つの博物館を巡りました。ただし、最初に訪ねたスカニア博物館はこの日がスウェーデンの国民的休日にあたることから臨時休館。ゲート前のインターホンから流れてくる担当者は分かりやすくゆっくりと優しい口調で説明してくれましたが、それでも休日は休日、休館は休館で見学を諦めざるを得ませんでした。
次に訪れた「国立科学技術博物館」(Swedish National Museum of Science and Technology)は予想通り、というか心配していた通り、クルマ関連の展示は一切ありませんでした。これは事前に公式サイトで調べて心配になっていたから入場する前に係員に確認したところ、彼女も「そうなんです、クルマ関連の展示はありません」とのことで入場前に駐車場に引き返すことにしました。
その後訪れた「自動車と技術歴史博物館」(Bil-och Teknikhistoriska Samlingarna)は、名前通りクルマの技術史をフィーチャーした展示が多い技術博物館で、もちろんクルマも歴史的なモデルもありましたが、トランスミッションなどの技術展示も多く興味を惹かれました。ただし台数的には少し寂しく、先に訪れた2軒で落ち込んだモチベーションを引き戻すことはできませんでした。
サーブとボルボは好対照
その翌日にはスウェーデンを代表する2大自動車メーカー、ボルボとサーブがそれぞれ運営する「ワールド・オブ・ボルボ」(World of Volvo)と「サーブ自動車博物館」(Saab Car Museum)をハシゴしました。最初に訪れたのはサーブ自動車博物館でしたが、この日はちょうど博物館が主催する「Saab Car Museum Festival 2024 – サーブ9000生誕40周年記念」が開催され、各地からサーブのオーナーズクラブ会員やファンが集結。博物館のエリア全体で「青空博物館」が展開されていました。
博物館の館内は厳かな空気もあり、一歩館外に出れば新旧取り揃えられたさまざまなサーブ車と、家族連れやカップルなどサーブ好きの老若男女が和気あいあいとサーブ談議に花を咲かせ、取材しているのを一瞬でも忘れてしまいそうなくらい、楽しい雰囲気にあふれていました。
一方のワールド・オブ・ボルボですが、この4月にオープンしたばかりの施設で、桁違いの収容台数を誇る(であろう)パーキングビルの上にそびえ立つ円形の建物がその本体。ただし、新たなファン層を拡大する必要性は認めつつも、あまりにも迎合し過ぎてはいないか、との感も抱かせられました。ただしオープンからわずか2カ月の若々しい自動車博物館だけに、その評価にはもう少し時間が掛かるでしょう。
スウェーデン最終日となる6月8日(土)は個人博物館2軒をハシゴしました。「トベックス・キンナ自動車博物館」(Bilmuseum – Toveks Bil Kinna)と「自動車と航空博物館」(Svedino’s Automobile and Aviation Museum(Svedinos Bil- och Flygmuseum)です。
ともに個人博物館としてはよくこれだけの収蔵車両を集めたな、と感心するほどでしたが、台数の割にはスペースが限られているからか、詰め込み過ぎな感じで、またそれぞれの保存状態も少し酷くて(ひどいクルマも少なからず見受けられて)ちょっと残念な気がしましたし、ヨーロッパ自動車博物館探訪記 part.1 スウェーデン編のトリを飾るには少し役不足だったかな。でも、博物館巡りは楽しいです。次回はヨーロッパ自動車博物館探訪記 part.2 イギリス編をお送りします。