当時のマシンに当時のドライバーが乗った!
そんなニュルブルクリンクが完成したのは1927年のこと。そして1977年に誕生50周年を迎えた。当時ドイツに在住していた私は、その50周年の記念イベントを取材した。さすがにドイツのメーカーは力が入り、特にメルセデスは当時のマシンに当時のドライバーを乗せて走らせた。もちろんクルマは博物館からわざわざ持ち出してきたのだ。メルセデスが全面バックアップしていたから、メルセデスの出る幕は多かった。
まずは新旧(当時)のメルセデスがサーキットをパレード。そして最大の見せ場は全世界から集まった「300SL」のパレードラップだった。コースを埋め尽くした300SLの数は少なく見積もっても50台以上。これほどまでの300SLを同時に見たのは後にも先にもこの時だけである。参集したドライバーはファン・マニュエル・ファンジォ、スターリング・モス、ハンス・ヘルマン、カール・クリンクなどなど。1950年代から1960年代にかけて大活躍したドライバーたちばかり。彼らが本気で走るのだから、面白くないはずはない。
クラッシュ多発!? 歴史的な名車も容赦なく全開走行!
パレードランの前後にはカテゴリー別のレースが展開されたのだが、たとえ博物館から来たクルマでも手抜きはなく、全開である。おかげでメルセデスの博物館からやって来た1台のF1マシンはスピンして後部を大破したし、木骨のモーガンはほぼスクラップになったものもあった。もちろんマシントラブルでピットインは枚挙に暇なしであった。こうした記念イベントでも、たとえクラシックカーでも全く手を抜かないのは流石。こちらはただただ唖然として見ているだけであった。
メルセデスの他に博物館からクルマを出してこのイベントに参加したのはアルファ ロメオとBMW。アルファは往年のグランプリマシンを持ち込み、BMWは1940年のミッレミリアに勝った「328」を持ち込んでいた。
あと3年でニュルブルクリンクは100周年を迎える。クルマは今も博物館で大切に保存されているから、整備をして持ち出せば快音を轟かせることは間違いない。しかし、もう当時のドライバーたちはほとんど鬼籍に入っているからマシンに乗ってサーキットを駆け回ることはできない。全く良い時代に良い光景を見られたものだと思う。