ベントレーを日本に広めて60年
コーンズ・モータースのベントレービジネス開始60周年を記念した18台の限定モデルの実車が芝ショールームに到着したと聞き、さっそく見に伺ってきました。今回展示されていたのは「コンチネンタルGT」と「GTC」。ベントレー105年の歴史の最後を飾る内燃エンジンモデルです。このV8モデルの魅力についてコーンズ・モータース、マーケティングマネージャー土田裕之氏に話を伺ってきました。
純ICE最後のベントレーを記念して
今回、コーンズ・モータースは1964年から開始されたベントレービジネスの60周年の記念と、ガソリンエンジン生産終了への惜別の思いを込めて18台の特別限定モデル「CORNES 60th Edition」を発表した。
18台の内訳はコンチネンタルGTで10台、コンチネンタルGTCが4台、フライングスパーで4台の合計18台となるが、どれも快適性とウェルビーイングを重視した人気の「アズール」デリバティブがベースとなる。
限定車の主な特徴は、モノトーンのボディカラー+ブラックラインスペシフィケーションの精悍なエクステリアに鮮やかなアクセントカラーを組み合わせたことにある。
コーンズ・モータース、マーケティングマネージャー土田裕之氏に聞くと、この組み合わせはベントレーのビスポーク部門であるマリナーと綿密に打合せを行い、コーンズのアイデアを具現化したものだという。他国の限定車の例なども参考にデザインされた今回のモデルは、黒のボディーキットにイエローやオレンジやブルーのアクセントカラーが入るが、どの組み合わせを見ても素直にカッコいいと思える。さすがに顧客の好みを知り尽くしているベントレー東京の成せる業である。
今回、この限定車の企画の一番の目的はベントレーのガソリンエンジンの集大成となるV8エンジンの良さを改めて知ってほしいとのことだ。
土田氏は、2003年にW12気筒のエンジンを搭載したコンチネンタルGTが発表されたときから、大排気量、ターボエンジンにもかかわらず、そのピックアップの良さ、エンジンの回転落ちの速さに驚かされたという。V8はさらに鋭くアクセルを踏めば怒涛の加速を生み出すスポーツカーだが、普通に走る際にはそんな姿は微塵も見せないジェントルな走りを提供する二面性がこのエンジンの最大の魅力だという。
また、次期コンチネンタルGTがV8+電気モーターのPHEVモデルになることにも触れ、ベントレーの提供する「最後の傑作エンジン」をカスタマーに楽しんでもらうことが願いだと語る。
あえて物理スイッチを残すベントレーの見識
今回の特別限定モデル「CORNES 60th Edition」は快適性とウェルビーイングを重視したアズールのデリバティブとSデリバティブのスポーティなイメージ、さらに思いも寄らない鮮やかな差し色を組み合わせた限定車らしい魅力的なモデルである。
さらに、昨今大きなモニターですべてをコントロールするようなモデルが増えているが、ベントレーは伝統的な物理スイッチを残しており、一巡してその手触りや肌触りの良さを再認識する「デジタルデトックス」的な動きも顧客の中に出てきているという。
土田マネージャーはベントレーにもBEVの時代が確実に来るということを前提に、BEVモデルが来る前に新規の顧客にベントレーの歴史を重ねてきたエンジンの良さや、伝統的なインテリア、そしてベントレーはどのようなブランドであるかをこのモデルでぜひ知ってほしいと語る。流行り廃りではなく良いものを求めている顧客には、この集大成というべき成熟したエンジンとインテリアを擁する「CORNES 60th Edition」はオススメなのではないだろうか。
AMWノミカタ
取材の帰りの芝公園のカーコーティングショップの店先でピカピカに磨かれた2世代目のコンチネンタルGTを見た。このクルマが発表されたのは2010年になるが、時代遅れ感は皆無でいまだに輝きを放つモデルだった。ベントレーはよく「時代を超越した美しさ」という表現をするが、今回の「CORNES 60th Edition」で販売される「GT/GTC」、「フライングスパー」も今後永くその気品と力強さと美しさを放ち続けるモデルなのだろうと感じた。
また、先日、ちょうど100年前に製造された3LモデルやW.O.ベントレーが最後に手がけた8Lモデルに触れる機会があった。印象的だったのはエンジンの放つ力強いサウンドとスポーツカー然とした佇まいだった。BEVの時代になるとおそらくこんな身体の奥で感じる感覚は味わえなくなるのかもしれない。
V8エンジンを搭載した「CORNES 60th Edition」はベントレーのエンジン車の最後を飾るにふさわしい伝統を継承し、人の感性を刺激するエモーショナルなモデルである。BEVベントレーが登場する前に味わってみてはいかがだろうか。