フルモディファイの130フェアレディZ
日本の旧車を代表する人気車種である日産「フェアレディZ」。そのスポーティなルックスと旧車ならではの自由に手を入れることができるシンプルなレイアウトは、これまでも多くのチューニングフリークを魅了し、絶大な人気を誇ってきました。現在、52歳の上久保茂紀さんは、そんなフェアレディZとともに30年もの間、さまざまな思い出を作り楽しんできました。そして、その楽しみは現在進行形で続き、新たな進化へと形を変え、自らの理想を求め、チューニングに励んでいます。
ひと目惚れしてフェアレディZひと筋を貫く
先代モデルよりもひと回り大きくなり、空力が向上したボディにラグジュアリーな装備を満載して登場した日産130型「フェアレディZ」。生粋のスポーツカーではあるが、そのスタイリングは先代S30型フェアレディZよりも美しく、ロングノーズ・ショートデッキスタイルのフォルムは、より強調され、まさに淑女(フェアレディ)の名にふさわしいモデルである。また一方でハイウェイクルーザー的な雰囲気も併せ持っていたのも魅力だった。
上久保さんが、この130フェアレディZを購入した頃は、ちょうど各自動車メーカーから日産R32「スカイラインGT-R」、トヨタ「スープラ」、ホンダ「NSX」といった280馬力軍団が登場し、チューニング業界が黄金期を迎えようとしていた頃だった。そんな時代にクルマ遊びを覚え、続々と新型スポーツカーが発売される中で、それらにまったく興味を持たず、自らの愛車にするならL型フェアレディZと決めていた。その理由は、以前に住んでいた場所に関係している。
上久保さんは、改造車好きで、当時流行っていたストリートゼロヨン会場に毎週末ギャラリーとして見に行った。愛知に住んでいた頃は鍋田に、大阪に引っ越してからは臨海にちょくちょく遊びに行った。そこで目撃したのがL型エンジン搭載のフルチューンZで、その速さにひと目惚れ。けたたましい音と凄まじいタイヤスモークを上げてバーンアウトをかまし、圧倒的な速さで駆け抜けるL型フルチューンZの姿に完全に魅了されてしまった。
そこからは、フェアレディZを愛車として買いたいという気持ちが強くなる一方だったと話す上久保さん。だが、タイミング悪く、その頃、ちょうど『湾岸ミッドナイト』の映画が公開され、悪魔のZが話題になる。その影響もあってか、それまでわりと安かったS30フェアレディZが高嶺の花となってしまったという。
そこで、大人気モデルになり中古車相場が上がったS30フェアレディZのことをきっぱり諦め、130フェアレディZへと目を向け購入を決意。それこそが現在の愛車ということだった。
タービン交換のフルチューン仕様
上久保さんの愛車は1982年式のHS130フェアレディZだ。エンジンはL28改3.0LというL型エンジン定番の仕様で乗っていたそうだ。もちろん、そのままでも良かったが、ちょうどエンジンオーバーホールのタイミングで、トラブルが少なく、メンテナンスもラクでパワーを稼ぎ出しやすい仕様としてRB25DETTの搭載を決意。タービン交換のフルチューン仕様に改造して楽しんでいた。
このエンジン換装に伴って、他にもグレードアップチューンをすべく、トランスミッションはZ33用6速を移植し、デフは機械式R200に交換、そして、サスペンションはフロントがS13シルビア用で、リアはR32 GT-R用をメンバーごと移植してマルチリンク化するというとんでもない流用チューンを施していた。また、プレーキもパワーアップに伴って強化し、フロントはポルシェ6ポットブレンボキャリパーに、リアはR35 GT-Rブレンボキャリパーを組み合わせてセット。ローター径も大幅拡大の355mmローターをセットしている。
また、今から3年ほど前になるが、搭載したRB25DETTエンジンもだいぶヘタッてきたことから、より排気量アップを狙って輸出用シングルカムのエンジンRB30DEの腰下にRB26DETTヘッドを組み合わせRB30DETT化エンジンを搭載。最大排気量のRBユニットにシングルターボGT2835Rタービンをセットして、さらなるパワーアップも達成し、ゆとりの走りを満喫できるように仕上げてある。
Zらしさを残しながらもスーパーマシンとしての存在感を発揮する仕様
中身もかなりイジってあるこの130フェアレディZは、見ての通り外観もスペシャルな作り込み。そのエクステリアは、自分が考えるスポーツカーの理想像を求め、知り合いのFRP職人にお願いしてワンオフボディを製作。その内容はアイデア満載で、フロントは昔懐かしのエバ製130フェアレディ用GノーズキットをベースにサイドダクトをLFA風にアレンジし、ウインカーにはRX-8後期用を流用しセット。また、そのままではシンプルすぎる見た目も、あえてプレスラインを強調するデザインを採用し、そのラインはサイドからリアへと繋げ、片側10cmオーバーのブリスターフェンダーをより強調するデザインとしているのもポイントだ。
上久保さんは世代的にもオーバーフェンダーよりもブリスターフェンダーに憧れを抱く時代を楽しんだクルマ好き。愛車である130フェアレディZの造形作りには特にこだわって、前後のダクトも含めてZらしさを残しながらもスーパーマシンとしての存在感を発揮する仕様にしている。
特にこだわりのブリスターフェンダーに関しては、リアから見た時の存在感が凄まじく、どっしりと構えたフォルムが何よりも特別仕様であることを主張。それに輪をかけ、アンダー部にセットしたディフューザーの視覚的な効果も効いている。
また、内装もオールレッド仕上げの凝った作りに注目。メーターはすべてDefi製に交換し、センターコンソールも製作し、オーディオだけでなく、セッティング時に必要なパワーFCのコマンダーをスマートにセットできるようにしている。
スポーツカーとして上久保さんの考える理想の130フェアレディZの追求は、これで終わったわけではない。じつはまだまだたくさんやりたいことがあって、この先のことも考えている。現在52歳、上久保さんは、きっとこのまま還暦を迎えても、この愛車に乗り続け、カスタムを楽しみ、いろいろなアイデアを出してクルマいじりを楽しむ人生を歩むのだろうと、話しながら強く感じたのだった。
>>>2023年にAMWで紹介されたクルマを一冊にまとめた「AMW car life snap 2023-2024」はこちら