四半世紀もの間、たった1人のオーナーに愛されたM3だったが……
アイコニック・オークショネアーズ社は、2011年に「シルヴァーストーン・オークション」として創業。2023年8月に現在の屋号に改組して再スタートを図ったという、自動車オークションビジネス界では比較的新興勢力ともいうべきオークション会社である。
同社では、毎月末に期間限定のオンラインオークションを開催しており、2024年5月のオークションでは入札を23日にスタート。1週間後の30日の午後7時に締め切られた。
今回紹介するM3コンバーチブルも、このオンラインオークションに出品されたうちの1台。英国仕様の右ハンドル仕様で、創成期の「SMG」トランスミッションを備えている。
1999年3月2日に登録されたのち、ケント州ロイヤル・タンブリッジ・ウェルズの「BMW(現アーデンBMW)」社によってファーストオーナーに納車され、以来歴代の所有者はただひとり。つまり正真正銘のワンオーナー車であり、英国内における自動車の登録・所有証明書となる「V5C」でも「前保管者ゼロ」と記載されているという。
ボディカラーは、いかにも英国好みな渋い「ファーングリーン・メタリック」。「ライトグリーン」の本革レザーインテリアがマッチし、ソフトトップも内装と同系のライトグリーンで仕上げられている。
この特別なM3「エヴォ」コンバーチブルには、ハンドブックとスタンプが押されたサービスブック、そして初回サービスまでさかのぼるサービス作業の詳細を記した多数の請求書などを内蔵したディーラー・ブックパックが付属する。すべてのメンテナンス作業は、このクルマを購入した同じディーラーで行われ、サービス履歴はすべて残されている。
ただし、弱点と呼ばれたSMGギアボックスの交換が必要になったため、今から5年ほど前にドイツBMW本社から新品の交換品を調達し、アーデンBMWが換装作業を担当した。さらにそののち、現オーナーは新車同様に仕上げるためにボディペイントの修正作業を行い、同時にホイールの補修も行わせたという。
今回のオンライン入札に先立ち、オークショネアはオーナーと協議のうえで1万6000ポンド(邦貨換算約320万円)~2万ポンド(同約400万円)のエスティメート(推定落札価格)を設定した。
ところが実際のオンライン競売では、1週間の入札期間で希望した最低落札価格に届かなかったため、残念ながら「Not Sold(流札)」。現在でも同額のエスティメートを保持したうえで、継続販売とされているようだ。
もしもこの個体のトランスミッションが、トラブルメーカーとして知られるとともに、変速レスポンスの点でも購入者たちの不興を買ったSMGではなく、コンべンショナルな6速MTであったならば、もっと違った結果が出たのかもしれない。