メルセデス・ベンツの伝統と最先端技術を注ぎ込み開発された
W123の開発に際しては、最大限の安全性、優れた快適性、メンテナンスの容易さを求めた仕様書が1968年にメルセデス・ベンツの設計エンジニアに提出されていた。ボディはメルセデス・ベンツ独自の安全理論に基づいて設計され、前後衝撃吸収式構造で客室は頑丈なセーフティセル構造である。
当時のダイムラー・ベンツ社得意のコンピュータ設計システム「ESEM」により、とくに客室の剛性が高く設計された。この設計システムにより各ルーフピラーの特殊な組み合わせ方や傾斜角度を算出。デザインされたコンセプトカーは角張ったライン、巨大なリアルーフオーバーハング、急傾斜のリアウインドウ、ボディまわりのラバーパネルといった未来的なビジョンも含まれており、1973年までにW123のクラシカルでエレガントなラインがほぼ確定された。
そして、衝突テスト(オフセットテスト含む)、スラロームテスト、90度バンク高速走行テスト、悪路区間テスト、貯水池テストなど、各モデルのテストを実施して開発された。後続の1977年3月に発表されたクーペは車高を40mm低く、ホイールベースを850mm短くし、スポーティかつエレガントであることをアピールし人気を得た。
とくにこの2ドアクーペはBピラーがない代わりにAピラーとCピラー、ルーフを強化している。また1977年9月に発表したステーションワゴンは、自動ハイドロリックニューマチックレベルコントロールを標準装備し、ビジネスシーンはもちろん、ファミリーライフスタイルとレジャーカーとしての基準を設定した。ドイツ語で「T-Modell」と呼ばれ、Tは、Touring(ツーリング)、Transport(トランスポート)を意味し汎用性の高い車両の役割を強調している。なお、自社のブレーメン工場で生産された。また、このワゴンはサービス店用車として各地の出張サービスでも活躍した。
ラゲッジスペースは通常のポジションで523L、後部座席を折り畳むと879Lであった。折り畳み式後部座席の3分の2は分割タイプなので長尺物の積載が可能。また最後部フロアに格納式の2人掛けのシートが設置され、後ろ向きに座ることができ計7人乗りにもなるのが特徴である。リアウインドウワイパー&ウォッシャーは標準装備となり、リアの視界も充分確保している。ルーフレールが標準装備されラゲッジラック、ラゲッジコンテナー、スキーボックスを取り付け可能だった。
そして、1980年にはドイツで初めてとなるディーゼルエンジンとターボチャージャーを搭載した「300TD」ターボディーゼルが発売に。北米と日本への輸出用のターボディーゼルエンジンはセダンにも採用された。1981年4月、アメリカの自動車雑誌『ロード&トラック』は、このステーションワゴンについて「メルセデス300TDターボディーゼルは間違いなく、今日のアメリカで販売されている最高のステーションワゴンであり、間違いなく最も高級である」と書いた。
整備性で特筆すべきは、ボンネットが最大90度まで開くことができ、エンジンの整備性を高めたことでエンジン脱着時の時間も大幅に短縮することが可能に。オイルチェンジもオイル・ディップスティック・チューブの形状を変更したことで、上からオイルを抜き取れるようになったのだ。
生産台数はなんと約270万台!
W123シリーズの総生産台数は1975年から1986年にかけて約270万台(269万6914台)である。その内訳はセダンが最多の237万5440台、ステーションワゴンが19万9517台、クーペが9万9884台、リムジンが1万3700台、特別架装車が8373台。このうち約108万台がドイツ国外に輸出されている。