100年後にコンクール・デレガンスで飾られることを想定
100年後にコンクール・デレガンスでトゥールビヨンが飾られることを想定し、インテリアのデザイン哲学は時代を超越することに重点を置いた。そこで100年以上前の腕時計が現代のファッションやライフスタイルに溶け込んでいる時計の世界にインスパイアを受け、キャビン内ではアナログ体験が提供される。
その目玉は、先進的な電動式ディヘドラルドアと、インテリアではスイスの時計職人の専門知識を結集して設計・製作された600個以上の部品から構成されるメーターなどだ。このほかにもシートは可能な限り軽く、そして低くなるようにフロアに固定され、ペダルは電動で前後に調整でき、快適なドライビングポジションを確保する。オーディオシステムはドアパネルや車内全体にエキサイターを配置し、従来のオーディオよりも軽量で効率的なシステムを採用している。
同社のクリストフ・ピション会長は、このように語る。
「このような時代を超越したインテリアを作り上げるために、目を見張るようなアナログ的な技術革新が行われただけでなく、私たちは最高の素材を使用し、各部の完璧さにも重点を置きました。トゥールビヨンでは、クラフツマンシップを次のレベルに引き上げています。
エットーレ・ブガッティの作品を見れば、たとえ目に見えない部分であっても、すべての部品が芸術品であることは明らかです。細部に至るまで見事であり、ブガッティであることを認識させるとともに、パッケージングとエンジニアリングの傑作でもあるのです」
合計250台が製造され、価格は約6億5000万円から
同社のマテ・リマックCEOはこのようにコメントした。
「新しいV16エンジン電動アクスルを組み合わせ、スイスの時計職人の専門知識を結集して設計・製作されたメーターやクリスタルガラスのセンターコンソールを装備するのは、たしかにクレイジーです。しかし、それこそがエットーレならやったであろうことであり、ブガッティを比類なき、時代を超越した存在にしているのです。そのような野心がなければ、優れたハイパースポーツカーを作ることはできても、”Pour’éternité”(永遠のために)アイコンを作ることはできないでしょう」
トゥールビヨンは現在テスト段階に入り、2026年の納車に向けて、すでにプロトタイプが走行している。合計250台が製造され、価格は380万ユーロ、つまり約6億5000万円からとなる。手作業による組み立ては、W16エンジンを搭載したブガッティの最終モデル「ボライド」と「W16ミストラル」の生産終了後に、モルスハイムにあるブガッティ・アトリエで行われる。
AMWノミカタ
1800psのパワートレインを持つクルマ自体のパフォーマンスにも驚愕するが、さらに驚くのは100年先のコンクール・デレガンスに飾られる価値のあるクルマを作るために、デジタルの要素を極力排するという考え方だ。こんな考えをもつ自動車メーカーがほかにあるだろうか? ブガッティの人間からいえば、エットーレ・ブガッティの哲学を単に引き継いでいるという当たり前の所作なのかも知れないが、時代が進むにつれ、そのような創業者の哲学は少しずつ薄くなったり、都合よく別の解釈をされたりするものである。
今回のトゥールビヨンはエットーレ・ブガッティの「比較可能ならば、それはもはやブガッティではない」、「美しすぎるものはない」という考えを現代の最新で最高の技術により、純粋に突き詰め実現したモデルであると言えるであろう。ブガッティの競合はもはやない。これは現代に生きる人間のエットーレ・ブガッティに対する挑戦なのだろう。