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超貴重なデ・トマソ「ヴァレルンガ」が約2880万円で落札…相場よりもかなり安かった理由はスーチャー付きの魔改造のせい!?

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Bonhams

スーパーチャージャーつきの魔改造ヴァレルンガ

このほど、ボナムズ「ONLINE」オークションに出品されたデ・トマソ ヴァレルンガは、近年にスペシャリストの手によって施されたレストアと「軽いカスタマイズ」の恩恵もあって、じつにユニークな1台とアピールされていた。

もともとはギア社が製造したわずか50台(ほかに「53台説」など諸説あり)のうちのひとつで、1967年5月27日にイタリア・ロンバルディア州ヴァレーゼに新車として納車されたものという。

ただ、1983年まで北イタリアとローマに生息していたことは分かっているものの、その後2003年6月に、スペインのデ・トマソ愛好家が入手するまでの足跡は不明のようだ。それでもこの個体はバルセロナに輸出されたのち、デ・トマソのスペシャリストの手によってレストアされるとともに、かつてデ・トマソ自身が提案したことから時代考証の面でも正しいと標榜される、一連のモディファイが加えられることになった。

まずグラスファイバー製ボディのフェンダーは、13インチのクロモドラ社製ワイドホイールを装着するためにわずかに拡幅され、フォーミュラ3マシンからコンバートされたフォードの4気筒ケントエンジンには、1基のウェーバー社製48口径のキャブレターを介して、なんとスーパーチャージャーが取りつけられている。

ただし、フォルクスワーゲンから流用した(ケースを共用した英ヒューランド社製に非ず)正しいデ・トマソのギアボックスは、そのまま残されているとのことである。

レストア&モディファイ後の走行距離は約4000キロ

しかし、レストアおよびモディファイの完成からの走行距離は、わずか約4000km。次のオーナーに、エキサイティングなドライビングの機会を提供するためのレストアだったかにさえ映る。加えて、今回の出品に際してはスペインの抹消登録書類が付属しているとのことであった。

この、デ・トマソ的にミステリアスなヴァレルンガに、ボナムズ社では25万ユーロ~35万ユーロという、かなり強気のエスティメート(推定落札価格)を設定した。さらに今回のオークションは、すべて「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」形式で行われるという前提条件にしたがって、この個体も「リザーヴなし」で出品されることになった。

この「リザーヴなし」という出品スタイルは、とくに対面型オークションでは確実に落札されることから会場の空気が盛り上がり、エスティメートを超える勢いでビッド(入札)が進むこともあるのがメリット。しかしそのいっぽうで、たとえ出品者の意にそぐわない安値であっても落札されてしまう落とし穴もある。

そして2024年6月18日14時14分(現地時間)に入札締め切りとなった競売では、会場での盛り上がりに期待できないオンライン型オークションのデメリットが発露してしまったようで、終わってみればエスティメート下限を大幅に下回る16万8560ユーロ、現在のレートで日本円に換算すれば約2880万円で落札されることになったのだ。

ヴァレルンガは生産台数が少ないながらも時おり国際マーケットに姿を見せるのだが、モータースポーツでの大戦果がないにもかかわらず、近年では30万ユーロ前後というかなりの高価格での取り引きが多いようだ。

そんな状況下にあって、今回の比較的安価なハンマープライスは、この個体に施された改造が、オリジナル主義の支配する現在のマーケットにとっては好ましいものではないと判断された結果とも思われる。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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