国主導でバッテリーサプライヤーを英国に誘致する必要性
そして、ライターズ氏は、歴史的に技術革新で業界をリードしてきたのは高級車と高性能車市場だったと言う。
「マクラーレンP1を見てほしい。電動化が主流になるずっと前に、高性能ハイブリッド技術の能力を証明した技術的先駆者だ。純粋なEVのスーパーカーをマクラーレンが開発することで、今日のスーパーカーのパフォーマンスとドライバー・エンゲージメントに匹敵する、いや、凌駕することができる」
ライターズ氏は、適切なバッテリーサプライヤーを英国に誘致することは、パフォーマンスカー業界以外にも長期的な利益をもたらすだろうと言う。
「将来的には、最先端の高エネルギー密度セルに特化した英国のサプライチェーンが繁栄することで、スーパーカーの生産だけでなく、垂直離陸機やドローンなど、他の高度な製造ニーズもサポートできるだろう」
AMWノミカタ
今回、マクラーレン・オートモーティブのマイケル・ライターズCEOは英国内に電気自動車に関する国内のサプライチェーンを国主導で整備する必要性を語っている。2023年に英国政府は「英国のバッテリー戦略」を発表している。その中で、英国は、世界トップクラスの研究基盤を持ち、産業用電池に関する研究の質で英国は世界第3位にランクされていることや、電池産業が成功すれば2040年までにバッテリーセルの製造で6.5万人、サプライチェーンで3.5万人の合計10万人の雇用を生むと試算されていること、英国の電気自動車(EV)用バッテリー産業の企業価値は欧州で第2位であることが誇らしげに書かれている。
そして英国ではすでにタタ・グループが国内に40億ポンドでギガファクトリーを建設し、日産とAESCが新たに投資してバッテリーと電気自動車の製造ハブを設立したことなどもレポートされている。しかしライターズCEOのポイントはそこではないだろう。他国の企業の投資や通常の自動車用バッテリーの製造ではなく、英国のハイパフォーマンスブランドが求める超高性能バッテリーを自国の産業として創出することで、英国の高級自動車産業全体の価値を上げたいという考えなのではないだろうか。
また一方でこれこそが、どの自動車グループに属していないマクラーレンの生き残りに必要な条件なのかも知れない。