著名プロゴルファーのコレクションに収まっていた時期も
このほどRMサザビーズ「The Dare to Dream Collection」オークションに出品されたフェラーリ288 GTOは、かつて大物セレブリティが所有していたヒストリーにくわえて、イタリアのスペシャリストによる2019年のレストアの成果によって、マラネッロの1980年代半ばのフラッグシップスーパーカーでもとくに望ましい1台となった。
フェラーリS.p.A.発行のオリジナル保証書や新車時の販売明細書、サービス記録簿にくわえて、フェラーリの世界的権威マルセル・マッシーニ氏によるヒストリーレポート、あるいは「フェラーリ・クラシケ」のレッドブックを含む膨大な資料ファイルによると、シャシーナンバー「52465」は1984年10月に製造が開始され、翌年1月に完成したとのことである。
このモデルにおける唯一の選択肢だった「ロッソ・コルサ(レーシングレッド)」のボディに、ブラックの英コノリー社製「ヴォーモル・レザー」インテリアが組み合わされたほか、メーカーオプションだったエアコンとパワーウインドウも装備されていた。
フェラーリの正規ディーラー「パゾリーニ・アウトモービリ」社に引き渡されたシャーシナンバー52465は、イタリアでもっとも有名な金融業界の重役のひとりだったエミリオ・“チコ”・ニュッティに新車として登録・納車された。
この時GTOは、現代版「ミッレ・ミリア」のスポンサーを長年務めたことでも知られる彼の会社「Fin-Ecoリーシング」名義で購入されたが、ニュッティ氏による2013年の署名入りの声明は、最初の納車時から彼がこの車両の唯一のオーナーであったことを証明。つまり、26年間にわたってシングルオーナー車だったことを示している。
2006年10月、ニュッティ氏は「フェラーリ・クラシケ」の認証を申請し、シャシーおよびエンジン/ギアボックスのナンバーが一致していることを証明する「レッドブック」と認証書が発行された。
オークションはリザーヴなしで出品
しかし2012年11月にこのGTOは売りに出され、イギリス国内のディーラーを介して同国のプロゴルファー、イアン・ポールターに転売されることになる。
2004年の「ライダーカップ」にヨーロッパ連合チームの一員として出場し、優勝に貢献したことで知られているポールター氏は、同時に熱心なフェラーリ・エンスージアストでもあった。北米フロリダ州オーランドを拠点とする彼のコレクションにくわわった288GTOは、「275GTB/4」から「ラ・フェラーリ」まで、跳ね馬のフラッグシップモデルを集めた愛車たちとともに楽しまれていたようだ。
そして現在の所有者である「The Dare to Dream Collection」は2015年にこの288GTOを入手。その後は、イタリア・エミリア・ロマーニャ州レッジョ・エミリアにあるフェラーリのスペシャリスト「アウトフィッチーナ・カルロ・ボニーニ」社に委託され、2019年には徹底的なメカニカルパートの修復が施されたほか、その前後にも入念な整備が施されてきたという。
ところで、2024年5月31日〜6月1日に開催された今回の「The Dare to Dream Collection」オークションはすべて「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」形式で行われるというのが前提条件。したがって、この288GTOにも375万ドル(約6億470万円)~400万ドル(6億4500万円)というエスティメート(推定落札価格)が設定され、「リザーヴなし」で出品されることになった。
この「リザーヴなし」という出品スタイルは、特に対面型オークションでは確実に落札されることから会場の空気が盛り上がり、エスティメートを超える勢いでビッド(入札)が進むこともあるのがメリット。だがそのいっぽうで、たとえ出品者の意にそぐわない安値であっても落札されてしまうリスクもある。
とはいえ、そこは超人気車のフェラーリ288GTOである。当日の競売では順調にビッド(入札)が伸び、終わってみれば388万2500ドル、日本円に換算すると約6億2700万円という驚きの価格で競売人のハンマーが鳴らされることになったのだ。
ちなみに、同じくRMサザビーズ北米本社が昨2023年3月に開催した「AMELIA ISLAND」オークションでは、かなり近い条件の288GTOが396万5000ドルで落札されていることから、現在の国際マーケットにおけるこのモデルの相場は、このあたりで落ち着いているということなのであろう。