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26年間シングルオーナーだったフェラーリ「288GTO」が約6億2700万円で落札! 最低落札なしでもスペチアーレは高値安定でした

388万2500ドル(邦貨換算約6億2700万円)で落札されたフェラーリ「288GTO」(C)Courtesy of RM Sotheby's

収集家の愛したフェラーリGTO

新旧の自動車/オートバイにくわえて、オートモビリア(自動車趣味グッズ)に時計、そしてナイキのスニーカーに至るまで、あらゆるジャンルのモノを収集してきたコレクターの愛蔵アイテムが、RMサザビーズ北米本社とのコラボにより、カナダ・トロントにてオークションにかけられることになりました。そのタイトルは、コレクション名をそのまま掲げた「The Dare to Dream Collection」。約300点にも及んだ出品アイテムのなかから、今回は1985年式のフェラーリ「288GTO」を紹介します。

フェラーリの本分を体現した、レースカー仕立ての復活版GTOとは?

1984年に登場したフェラーリ「288GTO」は、その時代のマラネッロを象徴する歴史的遺産。そして当時はポルシェ「959」やランボルギーニ「カウンタック」とともに、世界中のティーンエイジャーたちの憧れの的となっていた。

1982年から施行された「FIAグループB」規約に従ってレースに参戦するため、フェラーリは往年の「250GTO」の1980年代版ともいうべき「GTO」を開発し、同シリーズのホモロゲーションモデルとして200台の生産台数を達成する必要があった。ところが、その完成を待たずしてグループBによるFIAのレース計画は空中分解。せっかく開発されたホモロゲーションカーには、参戦する公式シリーズがないという状況に追い込まれる。

それでも、フェラーリ史上最強のスーパーカーを体験してみたいというニーズがあったことは明らか。当初は単に「GTO」と呼ばれた288GTOはグリッドに並ばないまでも、フェラーリのファンたちを歓喜させるに相応しいスーパーカーとなった。

エンジンはランチア「LC2」用に開発されたV8を搭載

外観はベースとなった「308GTB」よりも格段にアグレッシブで、ボディワークの大部分はコンポジットとケブラーで形成。ドアやデッキリッドは軽量アルミ製で、その堂々としたフォルムは驚異的なパフォーマンスを予感させるものだった。

もともとはグループCカーのランチア「LC2」用に開発された2855ccのV型8気筒4OHC・32バルブエンジンは、2基のIHI社製ターボチャージャーとともに400psを発生。最高速度は305km/hと謳われ、発表当時は史上最速ロードカーとして称賛を受けた。

この恐るべき高性能に加えて、GTOのインテリアには現代的な装備が数多く採用されていた。ケブラー樹脂製フレームのバケットシートは革張りで、エアコンやパワーウインドウ、AM/FMラジオつきカセットステレオなどもオプションで選択できたが、それ以外にドライバーの集中力を削ぐようなものはなかった。

288GTOの生産台数は272台(ほかに255台説など諸説あり)に留められたが、結果としてハイレベルなコレクターズアイテムとしての希少性が保証され、その後「F40」、「F50」、「エンツォ・フェラーリ」、「ラ・フェラーリ」へと受け継がれ、フェラーリの現代の伝統である限定ハイパーカーの始祖として認識されるようになった。

フェラーリ ディーノ156F1とともに1961年のF1世界王者となった伝説のレーシングドライバー、フィル・ヒルも新型GTOに感銘を受けたことについて、1984年8月号の米『Road & Track』誌で明かしている。

「GTOのパワーと卓越したコントロール性は、私がこれまで経験したどのマシンと比べても同等かそれ以上。路面でのグリップは驚異的で、スピードが上がるにつれて明らかに向上する。フェラーリがF1で力強く戦っているのを見るのは嬉しいが、彼らが真の競争力を持つグラントゥリズモカーを再び手に入れたことを嬉しく思う。そもそもフェラーリGTOという名前には、そういう意味があるのだから……」

著名プロゴルファーのコレクションに収まっていた時期も

このほどRMサザビーズ「The Dare to Dream Collection」オークションに出品されたフェラーリ288 GTOは、かつて大物セレブリティが所有していたヒストリーにくわえて、イタリアのスペシャリストによる2019年のレストアの成果によって、マラネッロの1980年代半ばのフラッグシップスーパーカーでもとくに望ましい1台となった。

フェラーリS.p.A.発行のオリジナル保証書や新車時の販売明細書、サービス記録簿にくわえて、フェラーリの世界的権威マルセル・マッシーニ氏によるヒストリーレポート、あるいは「フェラーリ・クラシケ」のレッドブックを含む膨大な資料ファイルによると、シャシーナンバー「52465」は1984年10月に製造が開始され、翌年1月に完成したとのことである。

このモデルにおける唯一の選択肢だった「ロッソ・コルサ(レーシングレッド)」のボディに、ブラックの英コノリー社製「ヴォーモル・レザー」インテリアが組み合わされたほか、メーカーオプションだったエアコンとパワーウインドウも装備されていた。

フェラーリの正規ディーラー「パゾリーニ・アウトモービリ」社に引き渡されたシャーシナンバー52465は、イタリアでもっとも有名な金融業界の重役のひとりだったエミリオ・“チコ”・ニュッティに新車として登録・納車された。

この時GTOは、現代版「ミッレ・ミリア」のスポンサーを長年務めたことでも知られる彼の会社「Fin-Ecoリーシング」名義で購入されたが、ニュッティ氏による2013年の署名入りの声明は、最初の納車時から彼がこの車両の唯一のオーナーであったことを証明。つまり、26年間にわたってシングルオーナー車だったことを示している。

2006年10月、ニュッティ氏は「フェラーリ・クラシケ」の認証を申請し、シャシーおよびエンジン/ギアボックスのナンバーが一致していることを証明する「レッドブック」と認証書が発行された。

オークションはリザーヴなしで出品

しかし2012年11月にこのGTOは売りに出され、イギリス国内のディーラーを介して同国のプロゴルファー、イアン・ポールターに転売されることになる。

2004年の「ライダーカップ」にヨーロッパ連合チームの一員として出場し、優勝に貢献したことで知られているポールター氏は、同時に熱心なフェラーリ・エンスージアストでもあった。北米フロリダ州オーランドを拠点とする彼のコレクションにくわわった288GTOは、「275GTB/4」から「ラ・フェラーリ」まで、跳ね馬のフラッグシップモデルを集めた愛車たちとともに楽しまれていたようだ。

そして現在の所有者である「The Dare to Dream Collection」は2015年にこの288GTOを入手。その後は、イタリア・エミリア・ロマーニャ州レッジョ・エミリアにあるフェラーリのスペシャリスト「アウトフィッチーナ・カルロ・ボニーニ」社に委託され、2019年には徹底的なメカニカルパートの修復が施されたほか、その前後にも入念な整備が施されてきたという。

ところで、2024年5月31日〜6月1日に開催された今回の「The Dare to Dream Collection」オークションはすべて「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」形式で行われるというのが前提条件。したがって、この288GTOにも375万ドル(約6億470万円)~400万ドル(6億4500万円)というエスティメート(推定落札価格)が設定され、「リザーヴなし」で出品されることになった。

この「リザーヴなし」という出品スタイルは、特に対面型オークションでは確実に落札されることから会場の空気が盛り上がり、エスティメートを超える勢いでビッド(入札)が進むこともあるのがメリット。だがそのいっぽうで、たとえ出品者の意にそぐわない安値であっても落札されてしまうリスクもある。

とはいえ、そこは超人気車のフェラーリ288GTOである。当日の競売では順調にビッド(入札)が伸び、終わってみれば388万2500ドル、日本円に換算すると約6億2700万円という驚きの価格で競売人のハンマーが鳴らされることになったのだ。

ちなみに、同じくRMサザビーズ北米本社が昨2023年3月に開催した「AMELIA ISLAND」オークションでは、かなり近い条件の288GTOが396万5000ドルで落札されていることから、現在の国際マーケットにおけるこのモデルの相場は、このあたりで落ち着いているということなのであろう。

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