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すべての自動車の始祖が1000万円ちょっとは安すぎない? ベントレーが手掛けるベンツ「パテント モトールヴァーゲン」は公認の完全復刻版でした

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2024 Courtesy of RM Sotheby's

イギリスでつくられたレプリカは、ダイムラー・ベンツも認める完全復刻版

カール・ベンツによるオリジナルの「パテント モトールヴァーゲン」は失われて久しいとされているものの、現在においてもさまざまな場所でこの元祖ガソリン自動車を体感する機会があるのは、イギリスの「ジョン・ベントレー・エンジニアリング(John Bentley Engineering)」社が新たに復刻した、みごとなレプリカ車のおかげである。

1986年以来、ダイムラー・ベンツ本社から資料提供などの支援を受けながら開発され、同年から1997年にかけて数回にわたって製作されたレクリエーション的レプリカは、ダイムラー・ベンツ社自身も最初期に作られた車両のうちの1台を譲り受けたという。

そして2000年ごろには「メルセデス・ベンツ クラシック」が約100台のパテント モトールヴァーゲンを発注したことによって、ジョン・ベントレーの考証能力と技術、そして職人技のクオリティが全世界で証明されることになった。

このほど2024年5月31日〜6月1日に開催されたRMサザビーズ「The Dare to Dream Collection」オークションに出品されたのも、ジョン・ベントレー製のレプリカ車の1台。2016年にイギリスの販売ディーラーから同コレクションのために入手したもので、現在も入手したままの状態とのことである。

現在でも緩やかに走らせることも可能で、その際にはエンスー仲間や見物人たちに披露するには魅力的な「マシン」となるばかりでなく、メルセデス・ベンツのコレクションや重要な「ヴェテラン」時代のモーターカーの集まりでも素晴らしい存在感を示すのは間違いない。自動車といえば、すべてがこのマシンとそのデザインに帰結するのだ。

最低落札価格なしでどこまで値が付く?

ところで、今回の「The Dare to Dream Collection」オークションはすべて「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」形式で行われるというのが前提条件。したがって、このパテント・モトールヴァーゲン・レプリカにも7万5000ドル~10万ドルというエスティメート(推定落札価格)が設定され、「リザーヴなし」で出品されることになった。

この「リザーヴなし」という出品スタイルは、特に対面型オークションでは確実に落札されることから会場の空気が盛り上がり、エスティメートを超える勢いでビッド(入札)が進むこともあるのがメリット。だがそのいっぽうで、たとえ出品者の意にそぐわない安値であっても落札されてしまうリスクもある。

そしてトロント市内で行われた競売では、後者の不安が的中。思いのほかビッドが伸びず、終わってみれば6万7200ドル、日本円に換算すると約1080万円という価格で落札されることになった。

エスティメートの下限をかなり下回ってしまったことから、出品サイドにとっては不本意な結果だったかもしれない。でも、同じRMサザビーズの欧州本社が昨年開催した「LONDON」オークションでは3万2200ポンド、同じく2023年8月の「アイコニック・オークショネア」でも3万6000ポンドで落札された実例を思えば、今回のハンマープライスも決して悪くなかったようにも感じられるのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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