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なぜ地域金融機関が次々と電動3輪バイクを導入? ノーヘル・普通免許で運転可能な「スイング・スポーツ」の利点と採用理由を関係者に尋ねてきました

すでに「スイング・スポーツ」を営業車として活用している神奈川銀行・中原支店の飯田純一副支店長

営業まわりに最適な1台

排出ガスゼロ社会の実現を目指し、地域金融機関が電動3輪バイク「スイング・スポーツ」の採用を進めています。2024年6月に日本国内の金融営業車両としてこの「スイング・スポーツ」を初めて採用した神奈川銀行の中原支店に続き、今度は川崎信用金庫でも導入が決まり、その武蔵小杉支店でも納車待ちの状態となっています。

3輪にこだわり続ける日本エレクトライクが展開する1台

今回紹介する「スイング・スポーツ」は、フロント2輪、リア1輪の電動3輪バイクです。その名の通り、車体は大きく左右に倒すことで自然な旋回もできる乗り物で、その車両サイズは全長1811mm×全幅798mm×全高1183mm、車両重量は114kgとなります。リアに12インチのインホイールモーターを採用しており、ステップ下に搭載するリチウムイオンバッテリーは容量40Ahで最大航続距離は一般市街地で約70kmです。充電器を内蔵しており、バッテリーは空の状態から満充電まで家庭用AC100Vで約8時間となります。

車両区分はType-1が原付ミニカー(青色ナンバー)、Type2が側車付軽二輪に分類されます。シートベルトもドアも装備されてはいませんが、ヘルメット不要(着用推奨)で普通自動車免許で運転ができます。また、道路交通法上、普通車両と同じ通行帯と制限速度で走行が可能となり、2段階右折も不要。また、車検も車庫証明も不要で、税金については軽自動車税の扱いとなります。

走行モードは、ロー/ハイの2つの走行モード(最高速45km/h)に、ハンドル側にあるSボタンを押すと40秒間だけ時速55kmが出せるスーパーチャージャーモードもあり、さらに警告音も鳴るリバースモードもあります。

使用方法はキーを捻って走行モードに入れるだけ

使い方は非常に簡単。キーシリンダーにキーを差し込んでONまでひねれば、液晶パネルが表示され、右ハンドル側にあるセレクターで走行モード(R/L/H)を選び、フロントカウル内側にあるレバー(ジャイロをロックしているブレーキ)を解除して、スロットルを回せば発進が可能となります。

この「スイング・スポーツ」を取り扱うのは、日本エレクトライク社です。その社名は「ELECTRIC(電動)」と「TRIKE(3輪)」を掛け合わせた造語で、2輪車と4輪車の長所を併せ持つ電動3輪車の製品開発を行っています。この日本エレクトライク社は神奈川県川崎市に本社があり、その取引銀行への働きがけが実を結び、今回の導入に至りました。

日本エレクトライク社は、2015年6月8日に国土交通省より型式認定を受け、インドのBajaj Auto(バジャージ・オート)から3輪自動車の供給を受け、それをベースに電動車にコンバートした「エレクトライク」を販売している会社です。小口配送などに特化した「エレクトライク」ですが、その次に国内市場に投入したのが「スイング・スポーツ」で、2020年初めに販売を開始しました。

生産は中国ですが、中国メーカーのものをそのまま日本へ導入するのではなく、何度も仕様変更を重ねて製作されたものだということです。

地方銀行が導入する狙いとは?

早くから導入を検討していた川崎信用金庫武蔵小杉支店の鈴木章支店長は、今回の導入の経緯についてAMWに次のように語りました。

「われわれは地域金融機関として、地元の企業の本業の支援に力を入れています。(日本エレクトライクの)松波社長とは以前から取引がありまして、松波社長からスイング・スポーツのことを聞かせていただき、われわれとして何ができるかというところで、この導入を検討してみようというのがきっかけでした。金融機関の役目というのは以前なら資金面の支援というのが一般的でしたが、昨今はそうではなく、本業の支援というところにもより比重を置くようになっています。さらに、川崎市では脱炭素戦略『かわさきカーボンゼロチャレンジ2050』を進めており、我々も地域金融機関としてその趣旨に賛同し、さまざまな取組支援を信用金庫全体でやっているところです。そこで『ぜひ支援したい』と本部に上申しまして、少し時間がかかりましたが、今回無事に承認されました」

実際に試乗を重ね、検討を進めた同行の渉外担当である吉田啓太さんにもこれまでの経緯を説明してもらった。

「私が最初に乗ったのは、日本エレクトライクさんの敷地内でしたが、加速もいいし音もしないし、電動って今の時代に合っているなと最初に思いました。我々も外回りは原付バイクで回っていることもあって、松波社長から『お試しで実際に使ってみたら?』という申し出があり、しばらく貸していただきました。デザイン性と性能をしっかり兼ね備えたモデルであることはわかっていましたが、信用金庫業務の中での実用性という観点で、我々が使うにあたって気になった点などを挙げさせていただいたところ、すぐにそれらの点に対して改善をしてもらえました」

実際の使い勝手を聞いてみると……?

また、この川崎信用金庫よりも先にスイング・スポーツ導入を決め、すでに実際に営業車として使い始めている神奈川銀行・中原支店の飯田純一副支店長にも、実際の使い勝手などを教えてもらうことができました。

「地元企業の応援はもちろん、SDGsにも貢献している製品を導入したいと本部に申し出て、それが今回の導入につながりました。試乗をした段階で営業回りに最適だということはわかっていたので、実際に導入してからもほぼ感覚としては変わりませんね。充電は帰ってからコンセントを挿しておくだけですが、通常の営業回りでは2~3日に1回という頻度です。我々は軽自動車と原付スクーターを使用しているのですが、普通乗用車と同じ扱いなので、原付スクーターよりストレスなく移動ができ、出先での駐車スペースの問題もクリアできていますし、狭い道でもスムーズに走れるというのは本当にメリットになっています。また、バック走行もできて、警告音も鳴るので安全性も高いですよね。現時点ではうちの支店だけですが、今後各支店でも『いいね』と言ってもらえれば増やしていきたいとも思っています」

日本エレクトライクの松波 登代表は最後にこのように話してくれました。

「直接取引のある金融機関に使っていただけることはとてもありがたく思っています。こういったマイクロモビリティで環境負荷の低減ができるところはまだまだあると思います。これから地元の銀行だけでなく、もっとひろく活用していただければと思っています」

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