宴の翌日は一転して本気モード全開に
ヨーロッパ3大耐久レースのひとつであるスパ24時間レース。ドイツ在住でモータースポーツを中心に取材する池ノ内みどりさんも、2024年のスパ24時間レースの魅力を伝えるべく取材しました。多くのファンで盛り上がったパレードの翌日は、決勝前のテストなどをこなす過密スケジュール。1日取材していると、苦労することもあるそう。運動不足解消になりそうな、スパ・フランコルシャンサーキットでの大変なポイントとは?
テストデーは走行スケジュールが過密で撮影に専念
2024年、スパへ来るのは春に開催されたWEC(世界耐久選手権)に続き2度目です。毎年春や夏に来ることが多いのですが、私がここを訪れたいのは、10月下旬です。
というのも、スパのサーキットでクラッシュポイントとして有名な第1コーナー「ラソース」の裏手にある駐車場には栗の木が多く植樹されており、小粒ながら秋にはたっぷりの栗が収穫できるのです。一度だけその時期に取材で訪れた際、誰も見向きもしない落ちている栗をたくさん持ち帰りました。
拾っている際には、こんモノの食べるの? 的な好奇な視線を感じましたがそれにも屈することなく。もちろん、ドイツの自宅に戻ってから、日本人の友人らにもおすそ分けをして、私は栗きんとんや栗ぜんざい、栗入りあんまんなどを手作りして全部ひとりで平らげました。もしスパが日本のサーキットなら「ラソース栗まんじゅう」「ラソース栗きんとん」「ファーストコーナー栗おこしでクラッシュ!」なんてネーミングのモノを販売しそうですよね。スパでも商魂たくましく、いろんなお土産品を作ってほしいです。
さて、スパ24時間レースの楽しかったパレードの翌日は、深夜まで続く走行セッションの多さで多忙の日です。昨日までの楽しい前夜祭の雰囲気はすっかり消えて緊張感が漂っていますが、私はチーム関係者がテキパキと働く姿を見るのが好きです。とはいえ、この日はどのチームも走行してミーティングをして、の繰り返しなのでインタビューなどの囲み取材はなく、コースサイドやイベントコーナーへ写真を撮りに行きます。
パドック内はアップダウンが激しくて移動が大変
このスパ・フランコルシャンサーキットが他のサーキットと違うところは、コースサイドだけではなくパドック内もかなりのアップダウンがあること。カメラやお水を持って、パドック内をウロウロするだけでもかなり足腰にきます。スパ24時間レースは参戦台数が多いため、エンデュランスピット(旧ピット)も使用することもあり、パドック内だけでも何回も登山をする感覚に……。スパへ来ると日頃の運動不足を悔やみます。
メディアセンターがあるのは1階(日本の2階にあたります)、旧ピットはメディアセンターから地下2階までエレベーターで降り、さらに徒歩で下がります。下がったら次はまた上がらなければならないのが酷! エレベーターは1基だけあるのですが、屋上階にあるレストランの物資輸送、車椅子やベビーカーの方の移動、そしてもちろん大勢のファンの方もご利用になりますから、時間に追われるほとんどのメディア関係者は階段を利用します。こんなに1日中歩き回るのに、まったく痩せないのはナゼでしょう?
今回、メディアセンターでは普段の明るい蛍光灯は使用されず、24時間レース用に初めてムーディな照明が設置されてちょっとオシャレ風に。机の上には各自の名前のステッカーが貼られているのですが、ありがたいことに毎日どなたかが私の席にお菓子を置いておいてくださるのです。
ベルギーといえばワッフル! 焼きたてはもちろんのこと、スーパーで売っているモノもこれまたおいしいのです。誰が私の席に置いてくれたのかが分かった場合は、私もお礼を持って行きますので、サーキットへ向かう前に立ち寄るスーパーマーケットにて配る用のお菓子も購入しています。個人主義のヨーロッパではあまりお土産やお菓子を配る習慣がないので、スパでの毎日のお菓子の交換で日本を思い出しました。
スパ24時間レースはヨーロッパ3大24時間レースの一番最後に開催されるのですが、メディア関係者のおそらく半分近くは24時間レースの行脚を一緒にしているので、会う顔ぶれはいつも同じとあり、お互いにお疲れさま! 的に自然とお菓子交換会になり、なかなか楽しかったですね。