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メルセデス・ベンツの「気配り設計」に感動! 世界一歴史のあるメーカーは、世界一ひとにやさしいクルマを作っていました

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TEXT: 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)  PHOTO: Mercedes-Benz Group AG/妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)/妻谷コレクション(TSUMATANI Collection)

コンビネーションスイッチ・レバー

以前より、メルセデス・ベンツの設計者たちはドライバーの努力だけでは防ぎ切れないミスをクルマ側の機能でフォローすることも、自動車エンジニアリングの重要な役割であると考えている。

ウインカー/ワイパー/パッシングライト/ウォッシャーの4機能を1本で集中して操作可能なメルセデス・ベンツ独自のコンビネーションスイッチ・レバーをあらためて思い直してみたい。

運転中頻繁に、あるいは急に必要とする操作はこの便利な1本のコンビネーションスイッチ・レバーで、その4つの機能を集中して果たす。しかもステアリングホイールの左内側の手元にあり、ワイパーと取り間違えて操作することもなく運転に集中できる。

メルセデス・ベンツはこの独自のコンビネーションスイッチ・レバーを1971年発売の「SLクラス」(R107)から採用している。以来50年間、すべてのメルセデス・ベンツ乗用車に継承され、あらゆる運転経験を持つドライバーに対しても平等で、しかも機能的な操作安全として認められている。ちなみに右内側にはオートマチックのダイレクトセレクトレバーを配置している。

ところで、停止中にハザードランプを点滅中、急に発進した際にウインカーレバーを操作するとどうなるか? 左側に停車中、周囲の人やクルマに注意を促すためにハザードスイッチをオン。問題は、その後停車中のクルマを再び走行車線に発進させたときである。

例えば、発進時にドライバーがウインカーレバーを操作して右側走行車線に出ようとしても、はたして右ウインカーが点滅するだろうか? 一般的なクルマではハザードランプをオフにしない限り、そのウインカー操作は無効となる。しかし、メルセデス・ベンツは右側ウインカーが点滅する(もちろん、直進走行後にハザードスイッチはオフにしなければならない)。

メルセデス・ベンツは1993年以後に発表された「Cクラスセダン」(W202)から、いかなる場合でも、あとから操作したウインカーが優先されるように設計している。これは発進の際の危険を少しでも減らすために、人間が操作する以前の重要なポイント、クルマサイドの機能で考え抜かれた安全設計方針である。

また、先述のウインカーレバーはISO(国際標準化機構)規格に基づいて左側へと統一されている。日本車では右側ウインカーレバー配置が当たり前となっているが、筆者は現役時代にメルセデス・ベンツを納車して、国産車を下取りして乗って帰る際、よくウインカーと間違えてワイパーを動かしたものだ。

これは、取るに足りない小さなミスであると思ってはいけないといえる。ウインカーを出すタイミングの一瞬の遅れが、市街地や高速道路では思わぬ大きな事故を誘発する原因にもなってしまうことがある。もちろん、海外向けに生産される日本車のウインカーレバーは左側にある。なぜ、日本国内向けの日本車だけウインカーレバーが右側にあるかというと、変更に伴う混乱を避けるという行政的判断からISO規格にこだわらず、右側にウインカーレバーを配置。今も世界に類のない特殊な仕様となっている。

電動スライディングルーフ

メルセデス・ベンツは機械を信頼しているが、逆に機械の弱点も知り尽くしているといえる。そのため、もしものことを考えてあらゆるところまで気配りをしている。

例えば、電動スライディングルーフが閉まらなくなった場合。筆者の経験では1982年モデルではトランクルーム内側面の専用駆動部にT字型レンチを差し込んで回すと閉めることができた(緊急手動式)。

少し以前のモデル(Sクラスでいえば2005年ごろまで)では車検証ケースを開けるとN形のクランクレンチが入っていた。このクランクレンチもスライディングルーフが閉まらなくなった場合の緊急手動用だった。ルームランプのカバーを取り外すと、内側に手動用の駆動部(六角形のボルト)があり、その駆動部にこのクランクレンチを差し込んで回すと閉めることが可能であった。

現在のモデルはこのレンチは付いていないが、レインクローズ機能や、バッテリー電圧が下がると自動的に閉まる(ただしモーター&リンク機構自体に故障があれば閉まらない)機能が備わっている。

スライディングルーフは、昔からドイツではカブリオレとともに大人気である。ドイツは北国なので冬の日照時間はとても短い。このため、たとえドライブ中であっても、少しでも太陽の光りを取り入れたいと常々考えている。なるほど、ドイツではスライディングルーフ付きのクルマが多いのにも納得できる。

最近のメルセデス・ベンツは、広大なガラスエリアを持つ電動パノラミックスライディングルーフ(UVカット&断熱強化ガラス)が主流で、ウインドウディフレクターも装備している。また内側の電動サンシェードを開ければガラスを通して太陽の光を優しくうまく室内に取り入れることが可能である。後端をチルトアップすれば換気も可能だ。しかも挟み込み防止機能が付いているので、うっかりミスもカバーしてくれて安全である。

いかにしたら常に太陽の光を優しくうまく取り入れるようにできるのか、そのメルセデス・ベンツの答えがこの電動パノラミックスライディングルーフといえる。

サンルーフ

最新のメルセデス・ベンツ流気配り設計システム

最新のメルセデス・ベンツ流気配り設計は、レーダーセンサーとステレオマルチパーパスカメラによるインテリジェントドライブシステムである。おもに下記の技術が搭載されている。

・アクティブブレーキアシスト(歩行者/飛び出し検知機能付)
・渋滞時緊急ブレーキ
・アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック(自動再発進機能付)
・アクティブステアリングアシスト
・アクティブレーンチェンジアシスト
・アクティブレーンキーピングアシスト
・アクティブブラインドスポットアシスト(降車時警告機能付)
・PRE-SAFE
・トラフィックサインアシスト
・アテンションアシスト
・LEDインテリジェントライトシステム
・パークトロニック駐車アシスト
・アクティブパーキングアシスト(縦列・並列駐車)
・スマートフォンによる無人駐車などの革新技術

一方、われわれドライバーが安全運転に徹しなければならないことは言うまでもない。注目すべき点は、トランク内に救急セット&荷物固定カバーが用意されている気配りである。

メルセデス・ベンツの設計者たちは、ドライバーの努力だけでは防ぎ切れないミスをクルマサイドの機能でフォローすることも、自動車エンジニアリングの重要な役割であると考えている。その最新のメルセデス・ベンツの気配り設計は、高度な知能を備えたレーダーセンサー&ステレオマルチパーパスカメラによるインテリジェントドライブシステムで、安全性と快適性を高次元で融合させているのだ。

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  • 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)
  • 妻谷裕二(TSUMATANI Hiroji)
  • 1949年生まれで幼少の頃から車に興味を持ち、40年間に亘りヤナセで販売促進・営業管理・教育訓練に従事。特にメルセデス・ベンツ輸入販売促進企画やセールスの経験を生かし、メーカーに基づいた日本版のカタログや販売教育資料等を制作。またメルセデス・ベンツの安全性を解説する独自の講演会も実施。趣味はクラシックカー、プラモデル、ドイツ語翻訳。現在は大阪日独協会会員。
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