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1億円オーバーは当たり前!「911カレラRS 2.7」は役物ポルシェのはじまり…ナナサンカレラでも別格の存在でした

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2024 Courtesy of RM Sotheby's

比較的安価な「ツーリング」仕様でも、1億円オーバー!

2024年5月31日〜6月1日にRMサザビーズがカナダ・トロントで開催した「The Dare to Dream Collection」オークションに出品されたカレラRS 2.7は、新車時にはイタリアで販売され、現在と同じく「ライト・アイボリー」のボディに、ブラックのレザレット(ビニールレザー)インテリアという、繊細かつ魅力的なコンビネーションで仕上げられた。ただし、このモデルのアイコンでもあるボディ下部のグラフィック「Carrera」スクリプトは、後年になって追加されたものである。

その後はコネチカット州ウェストポート在住のある人物によって、1986年に米国に輸入されたという。現在でも保管されている書類のコピーによると、このときはテキサス州でいったん登録されたようだが、翌年にはカレラRSのエキスパートとして知られ、「ポルシェ・クラブ・オブ・アメリカ」の歴史家でもあるプレスコット・ケリーがこのRS 2.7を入手することになった。

ケリーの所有期間ののち、このカレラRSは何人かのコレクターを経て、2000年には著名なポルシェ愛好家であり、「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」にも頻繁に参加しているロジャー・ホフマンが入手したのだが、彼がこのクルマを手に入れる前のある時点で、フックス製アロイホイールは「ヴァイパー・グリーン」にペイントされ、ボディサイドにもそれに合わせたグラフィックが施されていたとのことである。

2年にわたるフルレストアでオリジナルの姿に

そこでホフマンは、このクルマをオリジナルの姿に戻すべく、2年間にわたる内外装およびメカニズムのレストアを委託し、その際に発行された多くの請求書と写真が車両に添付されたファイルに残されている。ホフマンはこのRS 2.7を何年か保有し、そののち良心的なエンスージアストに譲ることになる。

そして2014年2月に「The Dare to Dream Collection」に譲渡されたのち、このカレラRSは入念な整備を受け、最高のドライビングコンディションに仕立てられた。

現在では、新車として出荷された時と同じライト・アイボリーに、コードインサートをあしらったブラックレザレットの上に、当時モノのデッドストックを使用したブラックの「Carrera」グラフィックをあしらった、非常に美しいコンディションを保っている。

また、エアコンや電動サンルーフ、パワーウインドウ、LSD、スポーツシート、ヘッドレスト、ELRシートベルト、オートアンテナつきAM/FMラジオなど、ほぼすべてのメーカーオプションが装備された数少ない例のひとつ。ポルシェ本社公認の資料と膨大なヒストリーファイルに加え、ロール状のケースに巻かれた純正ツールキットも付属していた。

「美しくレストアされているとともに、素晴らしいメンテナンスが施され、911カレラRSとして後世に語り継がれるこのクルマは、真のポルシェファンやコレクターがこぞって買い求めるに違いない」。そんな謳い文句を添えて、RMサザビーズ北米本社は70万ドル(約1億970万円)~80万ドル(約1億2540万円)というエスティメート(推定落札価格)を設定した。

ところで、今回の「The Dare to Dream Collection」オークションは、すべて「Offered Without Reserve(最低落札価格なし)」形式で行われるというのが前提条件。したがってこのナナサンカレラRSも、たとえ入札が希望価格に到達しなくても落札されてしまう「リザーヴなし」で出品されることになった。

しかし、そんな「リザーヴなし」で起こりうるデメリットも、国際マーケットにおける超人気モデルであるポルシェ 911 カレラRS 2.7には無関係だったのだろう。

競売が終わってみると74万7500ドル、日本円に換算すると約1億1720万円という価格で落札されることになったのだ。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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